「バスケ」×「インフラ」の力で未来の価値を創造する――B.LEAGUE U18選手が挑む「探究学習プログラム」
2050年、スポーツを通じた地方創生や社会課題の解決により、日本社会全体をワクワクさせる国にする――それこそ「感動立国」というキーワードを掲げるB.LEAGUEが目指す未来の姿である。そして、B.LEAGUE イノベーションパートナー であるインフロニア・ホールディングス株式会社(以下、「インフロニア」)は、「スポーツ界に先駆けとなる、バスケットボールとインフラを起点とした地方創生」を掲げ、B.LEAGUE、クラブと共にインフラを通じて日本を元気にすることを目指している。「バスケインフラリーグ(通称BIリーグ)」(B.LEAGUEとインフロニアが共同で開催する、ファン・クラブが一体となって地域を支え、盛り上げる参加型ゲーム)などを実施してきたが、6月「B.LEAGUE 探究学習プログラム」という新たな試みが行われた。
コート外に目を向け、地域イノベーターを目指す
B.LEAGUEでは、U15/U18の選手育成にあたっての理念、求める人物像がある。そのキーワードとなるのが「BREAK THE BORDER(常識や限界を超える)」である。そして実現にあたって土台と考えるのが、「Athlete mind(トップアスリートに求められる力)」「Global mind(グローバルに生きる力)」「Business mind(社会で戦い抜く力)」という3つの力の醸成だ。選手としてトップアスリートに求められる力を向上させることは当然であり、海外選手との交流などでグローバルマインドを磨く場もB.LEAGUEは既に設けている。今回の「探究学習プログラム」は、社会で戦い抜く力であるビジネスマインドを育む場となった。
今回プログラムの対象となったのは、U18 川崎ブレイブサンダースの選手たち。目的は、選手の主体性や課題発見力、そして既知から未知を生み出す思考力を醸成し、社会で活躍できる人材へと育成することにある。冒頭には、B.LEAGUEの島田慎二コミッショナーから「コート内だけでなく社会に目を向け、地域課題を解決しようとする、人としても成長した選手になってほしい」というビデオメッセージが流れ、全3日間にわたる研修がスタート。選手たちは6つのグループに分かれて、グループメンバー共通の強みを表現したチーム名を決定。「B.LEAGUEとインフロニアの共同事業担当者」となり、「バスケ」×「インフラ」の力で地域を元気にするアイデアづくりに挑んだ。
DAY1の研修では、まず「インフラ」の定義【人々の気持ちや期待(=キモチ)を原点とした生活を支えるさまざまな基盤】と、B.LEAGUEやクラブが地域社会に果たす役割についてのインプットが行われた。再生可能エネルギー発電所、道路、空港、そしてアリーナなど、インフロニアが手掛ける事業は多岐にわたるが、それらはいずれも人々の生活を根底から支える存在だ。ワークショップでは、「川崎ブレイブサンダースがこの地にあることで、地域や人々にどんな影響があるか」というテーマでディスカッションが行われ、選手たちは「街がにぎやかになる」「子どもに夢を与える」「試合の日に電車が混んで交通機関が活性化する」といった多様な意見を付箋に書き出す。そしてアリーナが試合会場としてだけでなく、災害時には1万人の帰宅困難者を3日間受け入れる水や食料を備蓄を行っているアリーナもあるなど防災施設としての顔を持つことも学んだ。
初めて「インフラ」という概念に触れた選手たちにとって、この日の研修は新鮮だったようだ。栗山泰青(たいせい)は「インフラという言葉の意味や、B.LEAGUEとそのパートナーであるインフロニアの関係性を学べたので、とてもいい時間になりました。登下校や練習に行く時など、身近なインフラに細かく目を向けていきたいと思います」と感想を語る。
また飯嶋紫悠(しゅう)は「普段、何気なくバスケをやっている中で、自分たちのチームが地域の人々とどのように関わっているかを初めて考えました」と率直な思いを明かし、「川崎ブレイブサンダースという認知度の高い名前を背負っていることを自覚し、私生活を含めて日々責任を持った行動をしていくことが重要だと改めて思いました」と意識を新たにした。
地域課題の抽出と「バスケ×インフラ」による掛け算のアイデア
DAY2では、まずDAY1最後に課された「地域の課題を見つけてくる」という宿題を共有する時間が設けられた。
「一人暮らしの高齢者にとって、買い物やゴミ出しは不便さがある」「孤独死という地域課題もある」「夜間の道路の暗さと防犯問題」「バスケができる公園が不足していると思う」など、高校生ならではの視点でリアルな地域社会の悩みが浮き彫りになった。
この日の研修の鍵は、「掛け算」の思考だ。
自分たちが発見した「地域課題」に対し、アリーナや道路といった「インフラの機能」と、「バスケの持つ力」を掛け合わせて解決策を練り上げていく。ファシリテーターからは「別の人のアイデアに乗っかり膨らませてみる」というルールも加えられ、1人の意見がチーム全員の議論を経て、より強固なアイデアへと展開していった。
戸川颯琉(そうる)は、自身が見つけた「夜間に幼い子どもが歩くのが危ない」という課題に対し、「道路や公園のインフラを使って解決策を考えたい」と構想。「チームメイトと一緒に意見を出し合って、相手に伝わりやすいユニークな発表を作っていきます」と、次回のプレゼンに向けた意気込みを語った。
一方、亀川龍之介の着眼点も興味深い。以前の所属クラブで地域住民との交流経験があり、バスケと地域社会のつながりに元々イメージを持っていたという彼は、屋外コート設置に伴う「騒音問題」と「資源問題」を課題として挙げ、「変に大人びた答えをするより、自分たちみたいな若い世代の『子どもらしさ』がある意見をまとめていきたいと思います」と笑顔を見せた。
成果発表会――柔軟な発想がぶつかり合うプレゼンテーション
最終日となるDAY3は、インフロニアの広報部ブランド戦略室長である井上千鶴氏と、
B.LEAGUE常務理事の増田匡彦氏を特別審査員に迎え、成果発表会が開催された。6つのチームがそれぞれ最大3分の持ち時間で、熟考を重ねたプレゼンテーションを展開した。
トップバッターとなったのはチーム「KWTO」。彼らは子どもの遊び場不足を解決するため、体育館を半分に仕切って、バスケのお化け屋敷やシュート対決などのアミューズメント空間にするバスケットランドを提案。続くチーム「気合」のアイデアは規格外だった。地元の住みやすさを向上させるため、メインロード沿いでサラダチキンを無料配布し、プロテインが出る蛇口を設置するというものだ。街の人々が肉体改造をして体が大きくなれば、相対的に道が狭くなるため、結果として道を広くしようと皆が動き出し、また、お互いに道を譲り合う優しい街になるという、ユーモアに溢れたアイデアを披露した。
チーム「イケメンズ」は、不登校などの理由で学校に行きづらい子どもたちに向け、地元のクラブの選手が継続的に学校でイベントを行い、SNSで発信することで学校に行くきっかけづくりを提供するという、スポーツクラブの影響力を生かしたアプローチを見せた。そしてチーム「コロッケ」は、高齢者の孤立問題に切り込む。若い層が集まるアリーナのなかに高齢者が気軽に集まれるサロンのような居場所を作り、世代を超えた交流を生み出すという温かいアイデアを提示。大トリとなったチーム「顔面偏差値」は、高架下に防音コートを作り、そこでプレイする運動エネルギーを地下の機械で発電に回し、生み出された電力を夜間照明などに還元するという、環境問題とインフラを直結させた持続可能性に特化したプランを発表した。
栄えあるグランプリに輝いたのはチーム「フィジカル」だ。彼らが目を向けたのは、高架下のデッドスペースである。そこにバスケットコートを設置することで、日陰による熱中症対策や雨風の回避を実現しつつ、子どもたちの遊び場を確保。さらにそこをハブとして若い世代と高齢者が自然に交流できる環境を作り、多世代間の偏見や差別を解消するという、課題解決の具体性と波及効果の高さが審査員から高い評価を受けた。
なお、選手間投票による「共感賞」も「フィジカル」が獲得し、二冠を達成。
また、持続可能な技術的視点が評価された「顔面偏差値」にはエンジニア賞が授与され、型破りなアプローチを見せた「気合」に原点回帰賞、「KWTO」にエンタメ賞、「イケメンズ」にともだち思い賞、「コロッケ」に未来のB.LEAGUE賞がそれぞれ贈呈された。

無限大の可能性と今後の期待
3日間にわたるプログラムを終え、全チームの発表を見守ったインフロニアの井上氏は、「1週間しっかりと街を観察して考えてきたことが伝わる深い思考の落とし込みや、言語化して形にする粘り強さがありました。普段のバスケから持っているものが活かされたのだと思います」と彼らの姿勢を高く評価。高架下のデッドスペースの活用や道路の穴の指摘など、高校生ならではの柔軟な発想に驚かされたと語った。
「外に目を向ける力と、既成概念にとらわれずに多角的に考える力。その組み合わせが新しい発展や解決を生むのだと期待しています。自分と仲間の可能性は無限大です。他のことにも関心を持ってみると、きっと世界が広がります」。そう言葉に力を込めた井上氏は、新しい視点を持つことが、バスケットボールにおける彼ら自身の可能性を広げることにも繋がると示唆し、トップ選手を目指す彼らに対し、「将来的に社会を引っ張っていく立場なのだという自覚を持ってほしい」とエールを送った。
今回U18 川崎ブレイブサンダースで実施された探究学習プログラムは、今後全国のB.LEAGUE U18チームで実施される予定となっている。
コートの中で培ってきた集中力やチームワークは、社会という広いコートに出ても十分に通用する。今回のプログラムで得た「課題を発見し、他者と協働して解決策を導き出す」という思考プロセスは、今後の競技人生においても財産となるはずだ。

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