2021/06/28B.HOPE ACTION#033

「東日本大震災復興とともに10年歩んできたクラブ、もっと地元に愛されるようになりたい」岩手ビッグブルズ

2011年3月11日14時46分に発生した、「東日本大震災」
三陸沖を震源とする日本における観測史上最大であるマグニチュード9.0の巨大地震が発生し、東北地方を中心に未曾有の被害に見舞われました。

B.LEAGUE Hope(以下、B.HOPE)は震災から10年が経過した2020-21シーズン、改めて「東日本大震災を絶対に忘れない、忘れてはいけない」という想いと、震災の教訓を、どのように活かして未来に繋げていくのかを考え、日本郵便株式会社様のご支援のもと、「B.Hope HANDS UP! PROJECT supported by 日本郵便」を立ち上げ、クラブとともに様々なアクションに取り組みました。

昨年新築された釜石のアリーナで2日間にわたる復興祈念イベントを開催

岩手ビッグブルズは震災発生後に誕生し沿岸地域を中心に震災被害が非常に大きかった岩手県の希望の星となり、様々な活動を行っています。
現在はB3リーグに所属する岩手ビッグブルズは、徐々に地元のバックアップを受けて、専用練習場ができ、戦力も強化されるなど力を付けてきています。彼らがクラブ創設から行っているのが沿岸地域での復興支援活動です。震災から10年が経った2021年はクラブとしても創立10年目の節目ということもあり、例年行なっている活動に加えて、様々なプロジェクトを実施しました。

3月13日(土)と14日(日)の2日間、岩手県釜石市鵜住居町にある釜石市民体育館でクラブは「東日本大震災復興祈念イベント IWATE BIGBULLS DREAM 2DAYS」と題したイベントが開催されました。
鵜住居は、2019年ラグビーワールドカップの会場となった釜石鵜住居復興スタジアムもある地区です。震災当時、街全体が大きな被害に見舞われ、現在でも堤防工事がされるなどいまだに復興道半ばの状況です。

地域アクション(岩手)

クラブは沿岸地域での復興活動を継続的に行ってきました。地元出身の千葉慎也選手は「昨年、このアリーナの柿落としゲームを実施させていただきましたが、僕自身にとっても非常に感慨深いものがありました。こういう風に沿岸の地でゲームをするのは、僕たちがこの10年間活動してきた意義であると思うので、すごく大切にしています」とコメントしています。

その沿岸の地で2日間行われたイベント。初日の13日(土)は「DREAM MATCH」と題して、2021年1月に開催された岩手県新人戦で優勝を果たした盛岡市立高等学校と、2020年12月に行われたウインターカップでチャンピオンに輝いた仙台大学附属明成高等学校の対戦が実現。そして2日目の14日(日)は岩手ビッグブルズの紅白戦が実施されました。新型コロナウイルス感染症対策からイベントの定員はアリーナの収容人数の半分以下に抑えて開催され、特に初日は釜石市民を含めた350名の募集定員がすぐに満員となり、多くの方が現地での観戦を断念する形となりました。アリーナに来られなかった人たちのために、クラブでは実況と選手による解説付きという形でゲームをYouTube配信しました。

地域アクション(岩手)
地域アクション(岩手)

盛岡市立高校は全員が岩手県出身、明成高校にも岩手県出身者がおり、加えて両チームには岩手ビッグブルズU15出身者もいることから、アリーナに詰め掛けた観客は、選手たちのプレーを興奮した様子で見守っていました。選手たちもコロナ禍の中でなかなか対外試合ができない状況であり、明成高校は新チームになってから初の対外試合だったこともあって、両チームの選手たちからは今回の試合が開催されたことへの感謝の言葉が発せられていました。高校生プレイヤーだけでなく、試合後に観客のみなさんが笑顔でアリーナを後にする様子からも、クラブが今回のイベントで目指していた「“震災復興”として我々に何ができるか、地元の皆様に笑顔になっていただくためにどんなことができるのか」という想いは伝わったようです。

地域アクション(岩手)

クラブの代表である水野哲志氏は「リーグ戦がちょうど1週あいたこともあり、こういう3.11に近いタイミングで被災地にてイベントが開催できたのは、すごくいいタイミングだったと感じています」とコメントしています。

地元企業とタッグを組んで誕生した復興祈念ユニフォーム

クラブは毎年3月に沿岸地域で復興祈念試合を開催していましたが、震災から10年を迎えて、例年以上に岩手の皆様に元気と勇気を届けたいという想いがありました。その中でキャプテンの伊藤良太選手から東日本大震災復興祈念試合特別ユニフォームの作成の提案があり、実現した施策です。
ユニフォームは、クラブが復興祈念ユニフォームのベースカラーとしている紺色が基調。ビリー・ジョエルが1978年に発表した名曲「マイ・ライフ」をイメージして岩手県釜石市出身のアーティスト小林覚氏が描いたアートを、ユニフォームデザインに組み込んでいます。復興10年にあたり「心の豊かさを求めつつ、本当の意味での復興を目指す」ということをイメージしてデザインされました。

地域アクション(岩手)

このユニフォームはで「東日本大震災復興祈念試合」として開催された2021年2月13日(土)と14日(日)の岐阜スゥープス戦(釜石市民体育館)、2021年2月27日(土)と28日(日)の東京エクセレンス戦(盛岡タカヤアリーナ)、2021年4月3日(土)と4日(日)のベルテックス静岡戦(宮古市民総合体育館:シーアリーナ)、2021年3月6日(土)7日(日)のAWAY金沢武士団戦、2021年3月20日(土)21日(日)のAWAYベルテックス静岡戦、2021年3月27日(土)28日(日)のAWAY東京八王子ビートレインズ戦、2021年のB3リーグの公式戦4試合で着用されました。2月14日(日)の試合では同じデザインのTシャツを先着約100名様にプレゼントしています。
加えて、着用したユニフォームはチャリティーオークションにかけられ、落札金額の一部は被災地に寄付されました。

地域アクション(仙台)
地域アクション(仙台)

2月28日(日)の試合前には「カネマンPresents 東日本大震災復興祈念エキシビジョンマッチ」として、宮城県で活動しているSESSIONSと地元のクラブチームである盛岡クラブとのエキシビションゲームも開催されました。

より地元に愛されるチームを目指して、「復興」を企業理念に邁進していく

地元出身の千葉選手は震災の10年を振り返り、地元への想いを語ってくれました。「取材などの機会にいつも感じるのは、あっという間だったという印象です。ただ僕がやってきたことは1年目から変わっておらず、生まれ育った故郷に何ができるかということです。そういう想いもあって、地元に戻ってきました。その想いは10年前も今も全く変わりません」
続けて、「このクラブは東日本大震災の年に誕生して、自分たちがどういう風に行動しないといけないかを常に意識してきました。人それぞれありますが、この震災を風化させないために当時起こったことや防災意識を未来の子どもたちに伝えていく。その架け橋を僕たちがなれればいいなと感じています」と未来に向けての言葉も口にしました。

また水野社長は10年前、地元新聞社の記者としてクラブを取材していました。そこからクラブに転身して現在は逆に取材される立場になっています。
「10年前、岩手日報時代に被災地をよく取材していました。その現場の光景は今でも覚えています。それから時が経ってこのクラブに加わり、3年前の社長就任時に敢えて企業理念に”復興”という言葉を入れました。少しずつチームも地域に愛されてきていると思いますし、これからもこういう活動を継続していきたいです。バスケットボールは勝負事ではありますが、それ以上に我々が復興の一助になれればいいと思っています。これからは、より愛されるチームになりたいと常々感じていて、誰が見ても岩手ビッグブルズは良いチームやクラブだねと言われるくらいになりたいです」と過去を振り返りつつ、これからのクラブの未来像を語ってくれました。

東日本大震災の年に誕生した岩手ビッグブルズ。震災とともに10年間歩んできた歴史、そして毎年実施している沿岸地域を中心とした復興活動は、岩手にとって一つの大きな希望の光となっているように思います。企業理念としている「復興」の二文字は、震災から10年が経過し、まだまだ道半ばです。これからも地元とともに復興に向けて岩手ビッグブルズは前進していきます。