2021/06/30B.HOPE ACTION#034

「『福島を引っ張っていく存在に』震災を契機に生まれたクラブの挑戦」福島ファイヤーボンズ

2011年3月11日14時46分に発生した、「東日本大震災」
三陸沖を震源とする日本における観測史上最大であるマグニチュード9.0の巨大地震が発生し、東北地方を中心に未曾有の被害に見舞われました。

B.LEAGUE Hope(以下、B.HOPE)は震災から10年が経過した2020-21シーズン、改めて「東日本大震災を絶対に忘れない、忘れてはいけない」という想いと、震災の教訓を、どのように活かして未来に繋げていくのかを考え、日本郵便株式会社様のご支援のもと、「B.Hope HANDS UP! PROJECT supported by 日本郵便」を立ち上げ、クラブとともに様々なアクションに取り組みました。

「ここから、未来へ」クラブが開催した、震災・復興の歩みを繋ぐビッグイベント

ある社会課題を解決したいという強い想いによって、東日本大震災後に誕生したクラブがあります。それが福島ファイヤーボンズです。 震災後に発生した原発事故が原因で、子どもたちは外で遊ぶことが制限されました。「子どもたちが体を動かし、運動不足を解消し、笑顔を取り戻して心身ともに健やかに成長してほしい。室内であれば、安心して体を動かすことができるだろう」という目的でバスケットボールスクールが立ち上がりました。スクールを運営していく中で必要性を感じた、福島が元気になるようなシンボルとしてプロスポーツクラブの存在、そして地元の子どもたちに夢や希望を与えることができる存在、この2つを作るという目的から、2013年にクラブが誕生しています。 福島ファイヤーボンズは震災から10年という節目のタイミングで「福島を、そして日本を元気にする」というテーマの元で「ReBONDS 10 action」というプロジェクトを発足させました。その10のアクションの1つとして2021年2月27日(土)・28日(日)の両日、あづま総合体育館(福島市)にて開催されたのが、「FIRE UP! FUKUSHIMA 東日本大震災復興10年イベント」です。
イベントの2週間前には福島県沖を震源としたマグニチュード7.3の地震が東北地方を中心に襲い、イベントの開催も一時は危ぶまれました。「あまり報道されていませんが、スーパーが1週間閉店するなど、余震で相当被害を受けたところもありました。自分自身の家もぐちゃぐちゃで、その光景を見て唖然となって…20分から30分近く、何もできなかったんです」と2016-17シーズンからチームを率いる森山知広ヘッドコーチは、余震が発生した当時のことを率直に話します。その状況下でもフロントスタッフは奔走し、会場の安全性確認なども行なった上でイベント開催が可能となり、当日を迎えることとなりました。
この2日間の対戦相手は山形ワイヴァンズ。B2東地区のライバル同士の一戦ということもあり、多くのファンやブースターがアリーナに詰め掛けました。試合会場では地元グルメの販売やライブなど様々なイベントが開催され、まさしくスポーツエンターテイメントの空間が広がりました。

地域アクション(福島)
地域アクション(福島)

28日に行われたゲームのハーフタイムには人気ロックバンドのサンボマスターさんが登場し、スペシャルライブが開催されました。彼らは東日本大震災以降、「福島を想い、そして福島のために」という気持ちを持って音楽活動を続けています。今シーズンは福島ファイヤーボンズのサポートソングとして2012年に発表された楽曲「ロックンロール イズ ノットデッド」を提供、その楽曲をバックに公式クラブPVが作成されています。当日はサポートソングも含めて2曲を披露し、アリーナは熱狂の渦に包まれました。
また両日ともに様々なゲストが登場してアリーナを彩った他、大人気漫画「クローズ」の作者である髙橋ヒロシ氏とチームがコラボをして特別に書き下ろしたオリジナルイラスト・メッセージのフォトパネルが展示されるなど多くのコンテンツが展開されました。
合わせてBリーグの選手やコーチはもちろん、スポーツ界の垣根を越えて福島にゆかりのある選手やコーチなどからのメッセージが詰まったスペシャルムービーを上映。さらに、被災地復興や新型コロナウイルス感染症対策の前線に立っている医療従事者の方に対する募金活動やチケット収入の一部寄付も実施しました。

地域アクション(福島)
地域アクション(福島)

地元、福島県出身で今季、3シーズンぶりにチームに戻ってきた菅野翔太選手はこの2日間について「B1と同じ空気感でプレーさせてもらいました」と言葉を残しつつ、感謝の気持ちを口にしました。「この節目の10年という年に地元に戻って、福島の皆さんの前でプレーできることに感謝しています。このイベントやゲームはたくさんのスポンサーさんやクラブ関係者、そして様々な人のお陰で素晴らしい環境の中で2日間プレーさせてもらいました」

地域アクション(福島)

震災ワークショップとアレンジを加えた形でのディフェンス・アクションを実施

このイベントの両日、午前中には福島出身の元日本代表選手である渡邉拓馬氏と栗原貴宏氏、そして森山ヘッドコーチがインストラクターとなったバスケットボールクリニックが開催され、その中でディフェンス・アクションも実施されました。

ディフェンス・アクションの詳細はこちら
ディフェンス・アクション実施前には震災復興ワークショップを開催し、震災の恐ろしさや災害に対して「備える」ことの重要性、これから未来を担う子どもたちが率先して防災などに対して動いていくことが大事という内容がインストラクターから伝えられました。その後、実施されたディフェンス・アクションは、10人程度で円を作り、片手ではドリブルを突いて、もう片方の手でパスを回すというテクニックや基本的な動作が必要な中で、パスが回ってきたら必要な備蓄品を言っていくという、クラブによってアレンジされた内容で実施されました。インストラクターの3人も、実際に円の中に入って、子どもたちと一緒になって、ディフェンス・アクションに参加していました。笑顔の中にも真剣さも垣間見え、非常に有意義な時間になりました。

地域アクション(福島)

参加した子どもたちからは「必要な備蓄品の多さを初めて知って、驚きました。自分自身もしっかり備えていきたいです」とか「普段はあまり防災に関して考えたことが無かったので、今回のクリニックに参加して考える良いきっかけになりました」というコメントや、「ディフェンス・アクションを通じて、災害が起きたら即座の状況判断が必要だということ。そして考えるべきことや行動などが学べて良かったです」という言葉もありました。

地域アクション(福島)

クラブの存続危機を乗り越えて、これからは地域に寄り添って福島を牽引していきたい

「僕は昨年の今頃は、クラブが無くなるかもしれないと思っていたので…」と28日の試合後、森山ヘッドコーチが言葉にしました。クラブは財政難から迎えたクラブライセンス剥奪の危機を乗り越え、東日本大震災から10年目という節目の年に2日間のビッグイベント開催まで辿り着くことができています。

地元出身でチームの将来を背負う存在として期待されている若手の山内翼選手は2日間を終えて、10年前の記憶も含めて率直な心境を口にしました。「まずは昨シーズンから考えると、こういう大掛かりなイベントは想像できなかったです。たくさんの方々のお陰で今回復興イベントが開催できて、改めて感謝の気持ちを忘れずに、福島県のプロクラブとして自覚と責任を持って今後もプレーしていきたいです。震災当時は中学1年生で、本当に考えられないくらい恐ろしい地震でしたし、親戚とかも被災して非常に複雑な思いがありました。自分はプロ選手として、福島の皆さんに笑顔や希望を届けられるように今後も活躍していきたいです」

地域アクション(福島)

また森山ヘッドコーチは、これからの未来を含めてクラブが進むべき道についてもコメントを寄せてくれています。「このクラブは地域にどれだけ寄り添えるか、そしてこれからの10年、福島を引っ張っていく存在にならないといけないと感じています。自分たちがトップランナーとして、どれだけ福島という地域に価値を提供できるかが大事だと思っています。そのための1年目ということで、存続の危機から1年経たずして、これだけの希望のイベントや興行ができるクラブになったんだと感慨深いです」

地域アクション(福島)

「ここから、未来へ」
福島ファイヤーボンズが経営危機を乗り越え、東日本大震災から10年目という節目の年に実現させた、クラブの命運をかけたビッグイベント。参加した地元の人たちを笑顔にし、改めてスポーツの力を感じさせてくれました。新たな未来の10年に向けた第一歩となったこのイベント、クラブ創設のきっかけと同じように、これからも地域に寄り添ってクラブは活動を進めていきます。