2023/12/28B.HOPE STORY#029

B.Hopeが思い描く未来
「すべての方々と共に」

「Social Innovationの実現」を目指し、ステークホルダーと共に様々な社会的責任活動に取り組む「B.LEAGUE Hope(以下B.Hope)」は立ち上げから約7年が経過。一時はコロナ禍で直接触れ合うことに制限がかかるなどの状況があったものの、クラブ、選手、地域、パートナー企業、日本バスケットボール選手会等の方々と共に活動を実施してきました。そこで今回はB.Hope設立に携わった佐野正昭さん(B.LEAGUE専務理事)、櫻井うららさん(B.LEAGUE執行役員)へ立ち上げから現在に至るまで、そして今後の展望についてインタビューをしました。

【インタビュー対象者】
・B.LEAGUE専務理事 佐野 正昭
・B.LEAGUE執行役員 櫻井 うらら

(左)櫻井うらら (右)佐野正昭

――プロスポーツのリーグやクラブが社会的責任活動に取り組む意義をどのように考えていますか?

佐野)B.LEAGUEやクラブは各地域に支えられています。リーグやクラブが地域課題の解決に積極的に挑戦して解決の一助となることが1番の意義だと思います。地域の皆さんに元気になってもらうのは、B.LEAGUEをより楽しんでいただくことにつながると思っています。

櫻井)私も同じ思いを持っています。B.Hopeの構想がスタートしたのは2015年くらいからです。当時の事務局長は「地域のニーズに応えられる団体でありたい」という強い思いを持っている方でした。私たちが持つ強みは、拡散力や発信力です。スポーツ界が地域課題や社会課題に向き合い、発信しながら解決の一助になっていく。スポーツ界と社会課題の解決は、実は親和性が高いのではないかと当時から感じていました。

――B.Hopeの立ち上げ当初はどのような部分で苦労しましたか?

櫻井)まず、「世の中にどのような課題があるんだろう」という点からのスタートでした。ですから専門家へのヒアリングも含めて、私自身も勉強しながら作り上げていきました。ただ、学べば学ぶほど解決すべき課題がたくさんあることに気づき、「できることからやっていこう」という形で動き出しました。途中から佐野さんも参加されて、一つの形となったのが2017年1月のB.LEAGUE ALL STAR GAME2017です。難病のお子様とご家族を招待するという企画を初めて実施しました。

©︎B.LEAGUE
B.LEAGUE ALL STAR GAME2017にて難病を抱えた子どもとそのご家族をご招待

©︎B.LEAGUE

――B.Hopeに関わるようになってから、印象に残っている活動はありますか?

佐野)先ほど挙げたB.LEAGUE ALL STAR GAME2017は最初の取り組みということもあって印象に残っています。まず、何を軸として活動するのかを考えた時、「子どもとその家族」ということがテーマとなりました。

B.LEAGUEにとって、ALL-STAR GAMEはエンターテインメント性の高いイベントです。ただ、このエンターテインメントをすべての子どもが実際に会場に来て体験できているわけではない、という気づきがありました。なかなか会場に足を運べない人にも、一度体験してもらい、「あ、安心して楽しめるんだ」と感じてもらい、これからのファンになっていただければという思いで進めたのがこの企画です。
Bリーグのすべての会場には車いす席がございます。それに加えて、彼らを受け入れられる体制を整えていました。ALL-STAR GAMEに招待することで、試合を楽しんでもらうことはもちろん、B.LEAGUEを楽しむ環境があることを知ってもらい、ファンの拡大にもつながる企画だったと思います。

この企画は、B.Hopeの意義や活動がクラブや選手に伝わったという点でも大きかったです。特に印象的だったのは、田臥勇太(宇都宮ブレックス)選手。非常に熱心にこの活動に参加してくださり、彼の行動を見た選手やクラブスタッフへ、B.Hopeの目指す方向性が伝わっていきました。この活動を通じてB.Hopeと、クラブや選手との連携がスムーズになったと思っています。

――ALL-STAR GAMEへの招待企画に参加した子どもやご家族の反応はいかがでしたか?

佐野)来ていただいたある家族は、片方の親御さんが本業だけでなく夜にもアルバイトをして、もう片方の親御さんは常に看病をするという状況で非常に苦労の多い生活を送られていました。また、ある家族は、離婚を考えていたそうです。そういった家族が子どもの笑顔を見て、「やり直すことを決めました」と言ってくださったことがありました。
ほかにも、(難病の弟を持つ)お兄さんが田臥選手との交流を通じて「バスケットボール選手になって病気の弟を喜ばせる」と言って競技を始めたという話もありました。スポーツには人を変えるパワーがあるとすごく感じました。

©︎B.LEAGUE

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――櫻井さんは印象に残っている活動はありますか?

櫻井)参加してみればそこに必ず得るものがあるので、何か一つを決めるのはとても難しいですね。あえて挙げるのであれば、東日本大震災で被災した宮城県名取市での活動です。津波の被害から再建された体育館で、バスケットボールのクリニックを行いました。まずは被災地沿岸の状況、風景を歩いて見て、語り部さんから映像を見ながら話を聞いて、当時の状況をインプットした状態で学校に行きました。

最後に選手会の会長からの挨拶があったのですが、「自分たちがこうやって生きていて、バスケットボールをやれていることが当たり前ではないとわかった」という言葉から始まったんです。選手がこのように感じてくれたことも、B.Hopeが大切にしてきたことの一つです。私たちはここがどういう地で、どのような目的の活動で、どのような意義があることなのかを選手たちに理解してもらうことにもこだわってきました。そういう意味で、選手会とB.Hopeの活動において、名取市での取り組みも印象に残っています。

津波で犠牲になった閖上中14名の慰霊碑に選手全員で参拝

 名取市に寄贈したベンチに、選手と子供たちでペインティングを実施

――B.Hopeはパートナー企業様との連携も進めていますね。

佐野)新型コロナウイルスの影響で、選手が参加する活動からの転換を求められました。我々の力だけでできることがないとなった時に、我々をサポートいただいているパートナー企業と手を組んで、どのようなことができるかを考えるところからスタートしました。改めて地域課題とバスケットボールのコンテンツ、パートナー企業の力を掛け合わせて何ができるのかを模索しました。

櫻井)テクノロジーを使って、距離を超えるという点で、部活動の地域移行における課題の解決をソフトバンク様と取り組んでいます。地方には子どもたちはいるけど指導者がいない、といった課題があります。そこで、スマートフォン一つで本格的な指導を受けられる仕組みを作ろうと。指導者や子どもの数、距離の問題などがある地方において、こういったものを普及させていくことは、社会課題に対してのアプローチになると思っています。
我々のアセットだけではできなかった取り組みも、パートナー企業様と組むことで実現可能となる。これはとても意義深く、今後も希望にあふれた活動をもっと展開できるのではないかと思っています。

タブレットを使い、富樫選手のお手本動画を見て学ぶ部員の様子

――B.Hopeとして、今後の展望を聞かせてください。

佐野)B.LEAGUE主催のプロジェクトは点のものになっているので、より各クラブが活動を展開できるようになっていかなければいけないと思っています。各クラブでの活動が活性化すれば、日本中で社会課題の解決や、「ココロ、たぎる。」地域ができていくと思っています。
これまでに大塚製薬様との「アクティブ チャイルド プログラム」、ソフトバンク様との「リモートコーチング」、スペシャルオリンピックス日本様との「Challenge with ALL」、日本郵便様との「そなえてバスケ」といった事例が生まれています。B.Hopeとしては、クラブが自走できるように手助けすることを目指さなければいけないと思っています。

櫻井)佐野さんがおっしゃったように、B.Hopeの活動を全国に広めていきて、B.LEAGUE全体で拡大していくことが大事だと思います。
B.Hopeは「PEOPLE(人類)」「PEACE(平和)」「PLANET(地球)」の3つの領域で活動を推進していくというフォーマットでこれまで活動してきました。その中でも、「PLANET」はリーグとしてのアクションの数が多くないと感じています。ここの領域について、本質を見極めて推進していきたいと思っています。構想しているのはプラスチックゴミを減らしていく働きかけです。

ゴミ拾い活動など、すでに出てしまったものに対するアクションは様々な取り組みがなされている一方で、先進国の中でも日本は出さないための努力が遅れていると感じています。いくつかのクラブでは既に推進していますが、廃棄することなくリユースできる素材や食器などの活用を、リーグとしても発信していきたいです。すでに京都府亀岡市や、同じスポーツの領域ではサッカーのヴァンフォーレ甲府が積極的に活動されているので、そういったところをベンチマークとしながら、B.Hopeとしても積極的に提案していきたいと考えています。

©︎B.LEAGUE
B.LEAGUE Hope×選手会 復興支援活動in陸前高田

バスケを通して地域課題や社会課題の解決の一助となっていくことを目指すB.LEAGUE Hope。
関わる全ての方々と共に、今後も活動を推進していきます。