2025/10/28B.HOPE STORY#70

B.LEAGUE選手が見つめる社会の未来図「広島・寺嶋良選手と千葉・大塚裕土選手、それぞれの貢献の形」~Part2~

B.LEAUGEの発展と共に、選手一人一人の影響力は増しています。その力を社会のためにどう使うのか。今回は、9月22日に開催された「りそなグループ B.LAEGUE 2025-26 SEASON TIP OFFカンファレンス」にクラブ代表として参加した、広島ドラゴンフライズの寺嶋良選手、アルティーリ千葉の大塚裕土選手に想いを伺いました。プロアスリートだからこそ届けられるメッセージとは何か。二人のトップランナーの情熱に迫ります。
※Part1(寺嶋選手インタビュー)はこちらよりご覧いただけます。Part2では大塚選手へのインタビューを掲載します。

アルティーリ千葉・大塚裕土選手が語る子どもたちへの思い「諦めを作らないでほしい」

 

プロキャリア16年目、Bリーグ屈指のベテランとしてコート内外で存在感を示すアルティーリ千葉の大塚裕土選手。彼が長年取り組んできた社会貢献活動の中で特に思い入れがあるのが子どもたちへのアプローチです。「自分もできるんだ」—自身の原体験を、子どもたちへの活動の原動力にする大塚選手にお話しを聞きました。

――社会的責任活動に積極的ですが、プロ入り当初と比べると注目度も含めて、現在とは多くの違いがあります。一番の変化をどこに感じますか?

大塚)当時は小学校でバスケットボールのクリニックをしたり、授業で講義をしたり、地域のごみ拾いといった活動を行っていました。その頃も「プロ選手」というだけで、子どもたちはすごく盛り上がってくれていましたね。でも今はB.LEAGUEが色々なメディアで放送されるようになって、影響力がとても強くなりました。プロ選手というだけでなく、個人の名前まで覚えてもらえるようになってきています。どこのクラブ所属の誰々、という形で認知されるようになったのは、当時と比べて大きな変化だと感じています。

バスケットボールクリニックで子どもたちと触れ合う大塚選手

バスケットボールクリニックで子どもたちと触れ合う大塚選手

――これまで7クラブを経験されていますが、地域やクラブごとの特色はありますか?

大塚)やはりありましたね。特に関東圏以外のクラブだと、地元の方との距離感が近いと感じることが多かったです。

――オールスターでの募金活動や選手会での活動に代表されるように、多様な取り組みをされています。その中で印象深いことはありますか?

大塚)B.Hopeでの活動はオールスターの一環として参加させてもらったんですが、その後に出場した選手がクラブに戻って、それぞれの地域でまたいろいろな活動をしているんです。そういった広がりは本当に年々増えているなと感じています。

「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2018」の復興支援活動でクリニックに参加する大塚選手(左)©B.LEAGUE

B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2020 IN HOKKAIDOで多嶋朝飛選手(現B3リーグさいたまブロンコス)と一緒にリモートで子どもたちと交流する大塚選手(右)©B.LEAGUE

――プロになった当初と今とで、大塚選手ご自身の中で、こうした活動に対するモチベーションや考え方は変化していますか?

大塚)それはかなり変化していますね。バスケットボールの世界で戦っていく中で、子どもたちに平等にチャンスを与えてほしいと思うようになりました。家庭環境などによってなかなかスポーツができない子もいます。でも、そういう子たちでもどこかでチャンスを見つけられるような機会があったら良いなと思っています。そういったところで自分に何ができるのか、どう貢献できるのかということを考えるようになりました。

©B.LEAGUE

――ルーキーの頃やプロ1、2年目の頃と違いはありますか?

大塚)やらされていると感じていたわけではないですが、当時は自分のことで精一杯でしたし、B.LEAGUEもまだ今のような大きな組織ではありませんでした。社会的責任活動や地域の課題に目を向ける機会は少なかったですし、気付きの部分は今と比べて圧倒的に少なかったなと感じています。

――SDGsという観点では、子どもたちの問題や環境、高齢化などさまざまな課題がありますが、大塚選手として一番影響を与えたい対象は子どもたちですか?

大塚)はい。子どもたちに影響を与えたいというのは一番ですね。自分は北海道出身で、それも札幌のような大きな都市ではなく名寄市の出身なので、いろいろな関係者にプレーを見てもらえる機会は少なかったんです。でも、そういった地域の子どもたちもプロ選手や関係者に触れることで、「自分もできるんだ」と思ってほしいなと思いますし、また「自分はこうだから」と限界を決めるのではなく「諦めを作らないでほしい」です。そうなれば、もっと多くのポテンシャルを持った子どもたちが発掘されるでしょうし、その周りにいる保護者や地域の人たちにも、いろいろな意味で良い影響が広がっていくと思います。

バスケットボールクリニックに参加する大塚選手

――これまでさまざまな活動をされてきた中で、お礼の手紙をもらったり再会したりと、いろいろな経験があったと思います。一番うれしかったことはどんなシーンでしょうか?

大塚)先ほども少し触れましたけど、16年プロでやってきて、最もうれしいのは、プレータイムに関わらず、また、子ども、大人問わず、「発言や行動、表現の仕方から元気をもらっています」といった声をいただけることです。そういう声を聞いた時、よかったなと思えます。

――プロ選手が社会的責任活動に取り組む意義はどんなところにあると考えていますか?

大塚)やっぱりスポーツ選手でしか与えられない感動というものがあると思っています。例えば先日、世界陸上が日本で開催されましたが、普段触れることのない競技を見ても、日常の仕事やプライベートでは得られない高揚感やワクワク感を味わえたりします。そういう経験を届けられるのがスポーツの良さであって、選手が活動をする意義はそこが一番なのではないかと思います。

©B.LEAGUE

――選手としてはオンコートで活躍し、オフコートでも活動するためには、バランスを取る難しさもありますよね。

大塚)バランスが崩れてパフォーマンスに影響が出る選手もいますし、逆にパフォーマンス重視でそちらを疎かにしてしまう選手もいます。ただ、それだと今後は社会的に認められにくくなっていくのではないでしょうか。だからこそ、バランスは非常に大事だなと感じています。 活動を通じて関わってきた子どもたちや大人の方々が会場に来てくれたりすると、すごく元気をもらいます。その分自分も返していかなければとエネルギーになります。うまく両立することによって結果的にいろいろなものを得られるのではないかなと思います。

――最後に、今後、やってみたいオフコートの活動があったら教えてください。

大塚)まず子ども食堂について、興味を持っています。あとは先ほども触れましたが、大人の都合でチャンスが少なくなっている子どもたちの元を訪れて、直接話をしたり、一緒に体を動かしたりと様々な関わり方ができると思っているので、実現できたらいいなと思います。

©B.LEAGUE