2026/01/06B.HOPE STORY#75

長崎ヴェルカの使命、クラブスタッフが語る「VELCARES」

 

地域創生のために生まれた長崎ヴェルカ、その使命としての「VELCARES」

「離島に生まれてよかった」——「B-RAVE ONE」の現場で、子どもが口にした一言がある。長崎県内に広がる地域差や機会格差に向き合い、バスケットボールを通じて“体験の入口”をつくろうとしているのが、長崎ヴェルカの社会的責任活動「VELCARES(ヴェルケアーズ)」である。今回、推進役の渡邊怜さん(事業部スタッフ)に、取り組みの原点と狙い、そして2026年1月に開催される「りそなグループ B.LEAGUE ALL-STAR GAME WEEKEND 2026 IN NAGASAKI」に向けた思いを聞いた。

——昨シーズンから「VELCARES」という名を冠し、より一層力を入れて活動されていますね。どのような方針で取り組んでいますか?

渡邊)長崎ヴェルカは地域創生のために作られたクラブです。プロである以上、バスケットボールで結果を出すことは求められますが、加えて地域や県のために何ができるのかを考えて取り組んでいくべきだと考えてきました。クラブとして具体的なアクションを起こしたい。その思いから始まった取り組みが、この「VELCARES」です。

事業部スタッフの渡邊怜さん
©n_velca

——2025年1月に開催された「B-RAVE ONE」ですが、渡邊さんが中心となって実行されたそうですね。

渡邊)はい。きっかけは、弊社の社長兼GMである伊藤拓摩が離島でクリニックを行ったことでした。現地で「人口の問題で、自チームだけでは5対5の練習も難しい」といった声を聞いてきました。厳しい環境を直接知ったことが、この取り組みの出発点です。生まれ育った場所や環境によって、経験できることが限られる子どもたちに、何か機会を提供できないか。その思いから始まったのが「B-RAVE ONE」です。「AIスマートコーチ」(※)を使ったリモートコーチングなど、バスケットボールを主軸に置きながら、前回はアーティストにも来ていただき、フェスのような形で開催しました。バスケットボールやエンターテインメントを体験してもらうことに加え、一つの興行が選手やコーチだけでなく、多くの裏方スタッフに支えられて成り立っていることを知ってもらう。そうした学びの機会も提供したいと考えています。
(※)AIスマートコーチはソフトバンク株式会社が提供する「動画で学ぶ、撮って比較する、記録する」を通じて、運動・スポーツのスキル向上と児童・生徒の主体的・協同的な学びをサポートするサービス。

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©B.LEAGUE

——特に心に残っているシーンはありますか?

渡邊)2回目の開催となった昨年1月はHAPPINESS ARENAで開催し、離島の子どもたちと米軍基地の子どもたち、合計5チームに参加してもらいました。感激したのは、終わった時に「離島に生まれてよかったです」と言ってくれた子がいたことです。離島で生まれ育ったからこそ、アリーナで試合し、選手と触れ合えるという機会を得られたと感じてくれたんだなと思います。すごくいい笑顔で言ってくれたのもうれしかったですね。

——それはうれしいエピソードですね。機会ということでは、2026年1月16日から長崎を舞台に、「りそなグループ B.LEAGUE ALL-STAR GAME WEEKEND 2026 IN NAGASAKI」が開催されますね。

渡邊)「りそなグループ B.LEAGUE ALL-STAR B.Hope ACTION 2026 IN NAGASAKI」の一環として、今回もリモートコーチングを行います。現実的に、選手が直接足を運ぶのは難しい部分がありますが、リモートだからこそ子どもたちは選手やコーチから動画で技術を学び、チャット機能を使って質問をすることができます。普段はなかなかできないような質問を気軽に投げかけて、どんどん吸収してほしいという思いが一番大きいです。何よりバスケットボールを楽しんでほしいという思いがあるので、気持ちが伝わる取り組みになればいいなと思っています。

11月25日長崎県平戸市生月中学校でTIP OFF会が行われた
©B.LEAGUE

今回のB.Hope ACTIONではバスケットボールだけでなく(左)パフォーマンスユニットVELCからダンスを学ぶ(右)
©B.LEAGUE

今回のB.Hope ACTIONではバスケットボールだけでなく(左)パフォーマンスユニットVELCからダンスを学ぶ(右)
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——「B-RAVE ONE」の今後については、どんなイメージをお持ちですか?

渡邊)まだ活動の幅を十分に広げきれていない部分もありますが、最初のコンセプトは、いろいろな経験をする機会が少ない子どもたちに、きちんと機会を提供することです。離島だけでなく、南北に長い長崎県の遠隔地や、ひとり親家庭のお子さんなど、さまざまな体験の機会が限られている子どもたちにも、しっかりとアプローチできる企画にしたいですね。長崎ヴェルカは、地域創生を実現するための会社ですから、地域にきちんと還元していく取り組みの大きな柱の一つとして、「B-RAVE ONE」を育てていきたいと思っています。

——渡邊さんはアメリカに留学されていますね。留学中はスポーツマネジメントを勉強されたそうですが、社会的責任活動も含まれていましたか?

渡邊)はい、勉強しました。私がアメリカにいたのはちょうどコロナ禍の時期でした。現地就職を考えていたのですが、バスケットボールチームに働き口はなく、「エンタメは必ずしも必要とされない存在なんだ」と強く感じた時期でもありました。この世界で生きたいと思っていた自分にとって、それは衝撃的でしたし、バスケットボールやクラブが、なぜ地域に不可欠なのかについても考えるようになりました。ヴェルカで言えば、「長崎になくてはならない存在」と思ってもらえる活動をしなければいけない。それは今CSR活動の責任者として取り組む中で、根底にある部分だと思います。

——ヴェルカはフロントスタッフとチームの距離感が近いと伺います。「VELCARES」を展開するうえで、それが生きる部分は大きいのではないでしょうか?

渡邊)間違いないですね。大きな要因は伊藤の存在で、フロントとチームのつなぎ役を担ってくれています。何か企画をやる際には、理由を選手にしっかり説明します。例えばピンクリボン活動では、長崎県のがん検診の受診率が低く、乳がんの罹患率が高いという現状を選手に共有しました。取り組みを強化したからこそ、本気で活動をしてくれる。そうした関係性があるからこそ、振り切った活動ができているのだと思います。

——それは、行政や企業との連係でも同様でしょうか?

渡邊)はい。長崎ヴェルカは「地域創生を実現するための会社だ」ということを、伊藤がずっと伝え続けてきました。その考えは営業の現場にも、しっかり落とし込まれています。パートナーシップについても、「パートナー」として一緒に課題に向き合う姿勢を大切にしています。前述したピンクリボン活動では、T・I クリニック長崎さんと乳がんに関する課題感を共有し、共同で取り組んできました。限定ユニフォームの着用だけでなく、来場者へのグッズ配布やマンモグラフィー検診車をアリーナに設置するなど、徹底した取り組みを行っています。その姿勢に対して、一定の信頼はいただけていると思います。こうした取り組みを通じて、「一緒にやれた」という実感が、少しずつ広がってきていると感じています。

©n_velca

10月15日のホームゲームではマンモグラフィの無料検診(左)や着用ユニフォームによるチャリティーオークション(右)も実施された
©n_velca

10月15日のホームゲームではマンモグラフィの無料検診(左)や着用ユニフォームによるチャリティーオークション(右)も実施された
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——今後、「VELCARES」で実現したいことを教えてください。

渡邊)まだまだ数は少ないと感じていますし、もっと具体的にできることは多いと思っています。例えば、毎試合6,000人近くが来場するアリーナでの環境問題に対する取り組みなどは、こちらがしっかり設定して進めていく余地があると思っています。それに限らず、まずは地域創生にきちんと貢献することが一丁目一番地ですが、活動の幅と数をしっかり増やしていきたいというのが現時点での目標です。

——人口流出の問題も改善傾向にあるという発表も拝見しました。特に子どもたちや若者にとって夢が持て、魅力を感じる場所にするという取り組みは、これからさらに進むわけですね。

渡邊)おっしゃるとおりです。長崎県は人口流出が非常に大きな課題であり、過疎化が進む地域も多くあります。市内にいると、スタジアムシティも含めて街が新しくなっている印象はありますが、先日B.Hope ACTIONの一環で生月島に行った際には、身が引き締まる思いでした。離島では、やはりいろいろなことを経験する機会が少ないという現実を肌で感じましたし、だからこそ子どもたちへのアプローチは、これからも続けていきたいと思っています。もちろん子どもだけに限らず、地域のために取り組むことが一番大切だと考えています。

——オールスターのホストシティーになることは大きな意味がありますし、大きな影響を与える機会だと思います。最後に、意気込みをお聞かせください。

渡邊)多くの方が長崎県外から来てくださる絶好の機会で、それは私たちが目指している地域創生の形でもあります。外から人がやって来て、人流が生まれ、そこでお金を使っていただく。その流れをつくることが大切だと考えています。長崎ヴェルカとしてどれだけ貢献できるか、一生に一度関われるかどうかという機会でもあるので、地域のためにできることを精一杯やっていきたいです。

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