B.LEAGUE選手が贈る”夢のシート”――子どもたちへ特別な体験を――[北海道・島谷怜選手/三河・角野亮伍選手編]
選手自らの想いをカタチにし、子どもたちに夢を届ける“招待シート”
B.LEAGUEで近年、広がりを見せている選手主導の取り組みがあります。それが選手自らの名前を冠した観戦シートを用意し、地域の子どもたちを実際に試合へ招待するという企画。自身の幼少期を鑑みて発案する選手やプロ入りから実現したいという志を持っていた選手など、経緯はさまざまだが共通項があります。それは“未来を担う存在に刺激を感じてほしい”というもの。
そんな共通の想いを胸に活動する代表例として、前編となる今回は島谷怜選手(レバンガ北海道)と、角野亮伍選手(シーホース三河)に話を聞きました。なぜ自分のシートを作ったのか? 子どもたちに何を伝えたいのか? 笑顔あふれる取り組みの舞台裏と、そこに込めた熱い想いを紹介します。
Interview01 レバンガ北海道・島谷怜選手「広い北海道の地で、子どもたちへ特別な体験を」
©︎LEVANGA HOKKAIDO
——「島谷怜シート」をスタートした経緯と、企画に込めた思いを教えてください。
島谷)元々は広い北海道でまだB.LEAGUEの試合を見たことがない子どもたちに体験してほしいという思いで始めました。プロ入りした頃から、自分に何か貢献できることがあればやりたいという思いを持っていたのですが、昨シーズンのオフ期間中にスタッフへ思いを伝えて実現に至りました。
企画設立の想いを動画で見る:こちら
——幼少期を釧路や苫小牧で過ごされ、「札幌での試合は、なかなか見に来られなかった」と読みました。当時はどんな子どもでしたか?
島谷)バスケットボールが好きで、外で遊ぶのが好きな子どもでしたね。トップリーグの存在ももちろん知っていて、折茂武彦(北海道代表取締役社長)さんや桜井良太(北海道 GM)さんはもちろんですし、自分がガードだったので阿部友和(元北海道)選手をよく見ていました。ただ実際に試合を見に行けるのは、釧路に年に1回来てくれた時だけ。それでも、コービー・ブライアント(NBAレイカーズ)のお父さんのジョーさんが、レラカムイ北海道のヘッドコーチをしていたことやチームの雰囲気などは、今でもすごく鮮明に覚えています。
——子ども時代の観戦はそれだけ心に残るわけですね。島谷怜シートでは試合後に写真撮影も行うなど交流がありました。どんな時間になりましたか?
島谷)先ほども言ったとおり、地方の子どもたちは試合を生で見る機会そのものが少ないと思うので、まずは楽しんでもらい、応援してもらうことをメインに考えています。実際に触れ合ってみて感じた一番の思いは、子どもたちがすごく喜んでくれて良かったということですね。ミニバスの団体からお礼と共に「チャンピオンシップ※に行ってほしい」といったメッセージ入りの色紙をいただきましたし、すごく嬉しい反応をもらえました。やはり、やらないよりやる方が直接熱を感じられます。また自分が活躍すれば子どもたちの応援の熱も増すので、「良いプレーを見せたい」と思います。
※りそなグループ B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2025-26
©︎B.LEAGUE
——より一層力が入ったという瞬間はありましたか? また子どもたちに感じてほしいメッセージはありますか?
島谷)実はシート企画がある日は、試合前に会場アナウンスで「どこどこの地域からこういった子ども立ちが来ています」と必ず紹介をしてくれます。その時はより一層力が入っていると思います。子どもたちには、こうした特別な体験が、彼らのこれからの人生にとって、何らかの糧や大切な財産になってくれたらうれしいですね。そして子どもたちが大人になったとき、違う形で還元できればうれしいです。
——地元出身の特別な存在として、今後さらに地域や子どもたちへどんなアクションを起こしていきたいですか?
島谷)試合を見に来てもらうだけでなく、自分が実際にその地域に行って何かできることがあれば、もっとリーグや地域が活性化すると思います。特に自分がお世話になった地域は大事にしたいです。プロ選手として、一番価値のある現役の今のうちに、さまざまな活動を通して地元へ還元していくことが重要だと感じています。
©︎B.LEAGUE
Interview02 シーホース三河・角野亮伍選手「非日常の体験が、何かのきっかけになれば」
©︎SeaHorses MIKAWAco.,LTD.
——三河に加入された2021-22シーズンから実施されています。どのような経緯で実現に至ったのでしょうか?
角野)元々はB.LEAGUEを少しでも多くの人に届けたいとスタッフに持ちかけたのがきっかけです。その際、できれば普段バスケットボールをしていない子や、児童養護施設に入っている子、家庭や経済の事情などで観戦が難しい子たちを対象にできればと考えました。そこで、クラブ側で近くの児童養護施設や特別支援学校に声をかけてもらい、見たい子を募って招待するという形から始まりました。
——ご自身が学生時代にプロの試合を観戦した際の経験もきっかけと伺いました。
角野)高校時代に「バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ・アジア2014*」というキャンプに参加させてもらった過程で、NBAのオールスターを現地で観戦する機会がありました。その時、たまたま歩いてきた憧れのシャキール・オニール(NBA元レイカーズ)とハイタッチできたんです。「DVDで見ていた選手が目の前にいる」という衝撃は、今でも鮮明に覚えています。だからこそ子どもたちが大人になった時に「あの試合を見に行った」「あの選手とハイタッチした」と思い出せるような、非日常のワンシーンを与えられたらいいなと思っています。また、NBA選手が寄付活動、チャリティー活動をしているのをネットで見たりもしていました。僕もバスケットボールの寄付などを考えていましたが、どうせなら試合を見て楽しんで、今いる三河の地域に還元できる形をと思っていました。
*=2014年に行われた「バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ・アジア2014」で、角野選手はキャンプMVPを獲得している
——3月のホームゲームでも実施されていました。今回においてはどんな感想をお持ちですか?
角野)「角野シート」は数年間やっていますが、毎回少しずつやり方を変えています。当初は試合に招待して手紙をもらうという形でしたが、今は招待した子どもたちと試合後に直接会い、質疑応答などを含めて交流を持っています。直接話すことで、こちらも見に来てくれてよかったという実感が湧きますし、彼らのうれしそうな声を聞くと「やってよかった」という気持ちが強くなります。
©︎SeaHorses MIKAWAco.,LTD.
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——角野選手にとってもエネルギーをもらえる時間なんですね。
角野)「角野シート」はバスケに興味がない子どもたちでも「大きい人を見て衝撃を受ける」とか、なんでもいいので何かのきっかけになればいいなという想いで招待をしています。なので交流会の時も好きな食べ物の話など、たわいも無い話をしているんですが、選手としてというより「人と人との会話の時間」という感じで、僕自身も本当に楽しく感じています。
——クラブの活動「Be With」の一環としても、昨年11月に、特別支援学校の皆さんと実際にバスケットボールをしながら交流されたそうですね。どんなことを感じられましたか?
角野)プロでバスケットボールをしていると楽しいことばかりではなくて、上手くいかない日が続くとネガティブなことばかり考えてしまいがちなんです。でも目を輝かせながらバスケをやったり、質問してきたりする子たちを見ていると、「シュートを決めて喜ぶ」というバスケの原点や楽しさを改めて思い出させられて元気をもらえます。
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——最後に、「角野シート」をどう発展させていきたいなどあれば教えてください。
角野)漠然とですが、可能であれば、試合直後に僕らが試合をしていたコートへ来てもらい、そこでの興奮がある状態で一緒にボールを使った交流ができるような機会を作れたらより良いのかなと考えています。
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それぞれが持つバックグラウンドや想いが、子どもたちにとって特別な体験として届けられているシート。「試合招待」という活動一つとっても、それに込められた選手の考えや想いは特別です。
後編では、長崎ヴェルカ 松本健児リオン選手が企画する「LEONシート」のご紹介です。