2017/02/16B.HOPE ACTION#001

B.LEAGUE All Star Game 2017 難病を抱えた子どもとそのご家族のご招待

 

Project背景

B.LEAGUEは2015年の設立準備時から、「スポーツ団体としての社会的責任を果たさなくては持続的な成長はない」と考え、B.LEAGUEHopeの立ち上げに至りました。立ち上げ中、一番議論を行なったのが「TakeAction」。つまり実際にどのような社会課題を対象に活動を行なうかです。社会課題は多岐に渡りますが、B.LEAGUE Hopeはまだまだ小さな組織。できることは限られており、最初から広範なテーマを取り扱うより、まずは1つテーマを決めてしっかり推進することを初年度の方針としました。B.LEAGUE Hopeでは社会課題を3つのカテゴリー「Peace」「Planet」「People」の領域で定義しています。その中でも、最初のテーマとして、今もこれからもB.LEAGUEはファン、地域の方々に必要とされることが一番重要であると考え、「People」の領域でプロジェクトを組成することとしました。
しかし、「People」の領域においても社会課題は健康、貧困、いじめ、障がい等など多岐に渡ります。そこで「バスケットボールファミリー世代が抱える社会課題」「スポーツの力でできること」「B.LEAGUE同様まだまだ広く知られていない」ことなどを考えて選択したのが「難病を抱える子ども達『小児難病』」です。
「小児難病」は発症理由やその治療法がまだまだ不明な部分が多く、2015年に児童福祉法が改正されるまで十分な整備が行なわれてこなかった分野です。2017年現在難病を抱える児童は約20万人。認定されていない児童やそのご両親・ご兄弟まで含めると約200万人近くがその課題と向き合っていると言われています。また、医療の発展に伴い周産期死亡率の低下が進む一方、小児難病のリスクは上がってきているという現状もあるようです。
難病と闘っているは病気の子どもだけではありません。朝座ってゆっくりコーヒーを飲むことも難しいお母さん、生活のために仕事をがんばり子どもと過ごす時間が限られるお父さん、家族で遊んだり、出かけたりができないご兄弟。その様なご家族に対するレスパイトケアの重要性に注目が集まる中、スポーツの力が活かせるのではないかとB.LEAGUEでは考えました。
また、小児難病に限らず障がいをもつ方々は、生活において「非日常」を楽しむ時間が少ない状況です。それは、外出できるにも関わらず「迷惑になるのでは」「何か起きたときに大変ではないか」という当事者の考えと、実際の受け入れ側の知識や経験が不足していることが重なり、まだまだ「本当のバリアフリー」が進んでいないということが原因です。誰もが非日常を楽しめる「エンターテイメント性の追求」「夢のアリーナ」をビジョンに掲げるB.LEAGUEとしても重要な課題だと思いました。
上記の様な色々な視点からB.LEAGUEでは「小児難病」を取り組むテーマとすることで、より地域や人々が元気になる、そしてスポーツ観戦に来てくださると考え「B.LEAGUE All Star game 2017 難病を抱えた子どもとそのご家族のご招待」プロジェクトを組成いたしました。

B.Hope mate(参加者)

本プロジェクトには下記の方々にご参加いただきました。我々は、本プロジェクトをサポートして下さった参加者、特にイベント当日、終始ご家族と向き合ってくださった「サポートスタッフ」の皆様も「B.Hope mate」として認識し、ボランティア活動としても有意義な1日になるよう、そしてご家族と一緒に楽しめるようプログラムの設計を行いました。

【全体サポート】

  • ・公益財団法人 日本財団

【ご家族とのコミュニケーション】

  • ・公益社団法人 難病の子どもとその家族へ夢を
  • ・認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワーク
  • ・公益社団法人 日本糖尿病協会
  • ・国立成育医療研究センター もみじの家

【ご家族のサポートスタッフ】

  • ・ソフトバンク株式会社
  • ・アルバルク東京
  • ・サンロッカーズ渋谷

Project詳細

本プロジェクトでは下記7つのイベントを実施いたしました。各イベントの詳細を報告いたします。

① ユニバーサルマナー研修

本プロジェクトではご家族をご招待するだけではなく、サポートスタッフの方々に対し当日の午前中を利用してユニバーサルマナー研修を実施いたしました。その理由は「単発のイベントに終わらせたくない」と考えたからです。ソフトバンク株式会社は独自のCSRを推進しており、社員によるボランティア活動に積極的に取り組んでいます。また、B.LEAGUEクラブはより多くの観戦者に来場し満足いただきたいと考えております。それらの活動をより良くするためにも、「小児難病とは」「どのようなご家族なのか」「どのように接するべきか」を正しく理解することが、本プロジェクトが終了しても次につながる知識になると考えました。本研修はNPO法人「難病の子どもとその家族へ夢を」代表の大住様に実施をご依頼しました。大住様は元々オリエンタルランドでジャングルクルーズのクルーや人材育成をご担当されていたこともあり、「小児難病」という大きなテーマに対して、写真や映像を使いながらサポートスタッフの心配を払拭しつつ、貴重な学びをいただきました。
また、昼食をとりながらサポートスタッフそれぞれが担当するご家族を決定し、そのご家族のプロファイルを共有いたしました。ご家族からのメッセージビデオなどもあったり、バスケ好きの子どもがいたりとサポートスタッフの方々もこれから一緒に試合を観戦するイメージが徐々に湧いてきた活動となりました。

大住さんの研修を受けるサポートスタッフの方々

真剣な空気が流れていました

社会課題を目の当たりにし、涙が溢れました

午後から対面するご家族の情報をインプットします

② アリーナ下見

研修後、サポートスタッフ全員でアリーナの下見を行いました。導線や観戦席、ユニバーサルトイレや控え室、疲れた場合の静かな場所などを確認しながら、サポートスタッフ自身がご家族からの質問を想定して色々な疑問を解消していったことが、実際のオペレーションでの支障防止につながりました。

アリーナツアーで導線をしっかり確認

積極的な質問が飛び交いました

③ ご家族迎え入れ

いよいよご家族との対面です。サポートスタッフは皆様車で来場されるため駐車場のスペースにて待機。到着されたご家族から順にサポートスタッフと対面し、まずは、自己紹介やお名前、呼び方(肩をたたいても良いか等)、注意点を確認。その後はお互いの緊張をほぐすため、好きな選手などの話をしました。

「呼び名」で話しかけるサポートスタッフの方

会場入り口の外で皆さんをお出迎えいました

子ども達の目線で話しかけます

サインペンの準備はバッチリ。このあと選手とのふれあいタイムです

④ 選手とのふれあい

最初のイベントはオールスターゲーム出場全選手とのふれあいの時間でした。通路で待っている時から選手やチアリーダーが声を掛けてくれたり、B.BlackのウイスマンHC(栃木ブレックスHC)が握手やサインをしてくれたりと、お子様やご家族のテンションは急上昇。そしていよいよ選手が待っている控え室へと入場です。憧れの選手がいたためか、はたまた選手が思った以上に背が高いためか、ご家族みな言葉が出ない様子。そこで緊張をほぐすために、選手から直接マフラータオルをプレゼントさせていただきました!更にそのマフラータオルやオリジナルTシャツに選手がサインを!!緊張していたお子様、ご家族が一斉に驚きと喜びを表しながら、色々な選手とコミュニケーションをとられていました。また、元々予定していなかったスリーポイントコンテストやダンクコンテスト出場選手までもが来てくれて、試合さながらの熱気が控え室を包みました。

オールスターオリジナルマフラータオルを手渡しする選手の皆さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⑤ 花道キッズ

次のイベントは選手入場の際の花道キッズです。花道キッズの希望者は19名。バギーのお子さんも車椅子のお子さんも松葉づえのお子さんも、たくさんご参加いただきました。花道キッズの19名は、選手がステージに登場しコートに降りてくる途中に花道を作り、選手をハイタッチで送り出しました。また、選手入場を待っている間にはB.LEAGUEならではの演出を間近で観戦し、その迫力と美しさに子どもたちも目を輝かせていました。

 

 

 

 

⑥ 観戦

選手とのふれあい、花道キッズの後は存分に観戦を楽しみました。

 

 

 

 

 

 

⑦ ご家族お見送り

15時からのイベントのため試合開始前には「疲れて途中で帰ってしまうご家族がいるかな」と考えていましたが、ほとんどの家族が第4クウォーターまで試合観戦を楽しんでいただきました。試合終了後会場を出る間際までハイテンションな子どもたち。お母さんが「今日帰って寝てくれるかしら」と笑顔で心配されていたのが印象的でした。

Projectの振り返り

難病を抱えた子どもとそのご家族のご招待」プロジェクトは、お子様だけではなく、そのご兄弟・ご家族にも存分にオールスターゲームを楽しんでいただくことができました。また、サポートスタッフの方々も、ユニバーサルマナー研修や家族とのコミュニケーションを通して日頃の生活では直面しない社会課題と向き合えたことで、このような活動の社会的意義を改めてご実感されたようです。
本プロジェクトを通じて得られた学び・課題は下記の3点です。

① 障害を持つ方は"特別"ではない

本プロジェクトを実施するに当たり、我々やサポートスタッフの方々が最も危惧していた点が、B.LEAGUEの特徴でもある「エンターテイメントの音や光」です。B.LEAGUEは観戦者に「非日常」を楽しんでいただくため、オールスターゲームのみならず通常の試合でも試合前の演出や試合中の雰囲気づくりで音や光を利用しています。しかし、障がいをもつ方にとっては、それらは驚きを与えてしまうものになるのではないか、最後まで試合を楽しんでいただけるだろうかと非常に心配しておりました。
しかし、そんな配は不要でした。むしろ、演出が始まると子ども達は目をキラキラさせたり、笑顔になったり、踊り出したり(!)。思いっきり「非日常」を楽しまれていました。

② ソフト面でのバリアフリーは情報共有が重要(特別な準備は不要)

本プロジェクトにご参加いただいたご家族から一番多かった質問が、「通常の試合でも車椅子席はありますか。車椅子席があれば是非試合を見に行きたい」というものでした。車椅子席さえあれば観戦可能だと。今回我々が準備したのは「控え室」のみでそれ以外は、導線やユニバーサルトイレの位置、演出などに疲れたときに休める場所の確認をした程度です。資格を有するケアスタッフや医療スタッフはおりません。「控え室」は飲食以外ではほぼ利用されること無く観戦されておりました。
B.LEAGUEでは「クラブライセンス制度」を導入しており、その中でB.LEAGUEのクラブが試合を行う会場に必要な最低限の機能を規定しております。規定されている機能として「車椅子席の設置」「ユニバーサルトイレの設置」「医務室の設置」「バリアフリー導線の確保」があり、全クラブが充足しています。これらの情報が障がいをもつ方に正しく伝わること、運営スタッフが理解していること等の情報共有がなされていれば、通常の試合であっても誰もが観戦を楽しめる環境であると再認識いたしまいた。

③ ハード面でのバリアフリーは障がいをもつ方の目線で

本プロジェクトにおいて一番苦労した点が車椅子・バギーの移動です。代々木第一体育館は約60年前に建設されたこともあり、当時「バリアフリー」という概念がない時代だったことを考えると、障がいをもつ方に対して必要最低限が配慮されたアリーナではありますが、それでもまだまだ改善が必要だと実感いたしました。階の移動のためのエレベーターは設置されておらず、車での移動が必要であること、通路では階段の横にスロープは設置されているが急勾配なため利用困難であることなどが挙げられます。今後、B.LEAGUEの発展に伴い、アリーナの改修や新築の計画が増えておりますが、本活動で得られた学びをしっかりと活かしてまいります。

最後に

今回、B.LEAGUE Hopeの第一弾プロジェクトとして取り組んだ「B.LEAGUE All Star game 2017 難病を抱えた子どもとそのご家族のご招待」プロジェクト成功には、多くの方々にご協力いただきました。立ち上げ時から様々なアドバイス、当日の運営を行なっていただいた日本財団様、サポートスタッフとしてご参画いただいたソフトバンク様、アルバルク東京様、サンロッカーズ渋谷様、その他本取り組みを理解し協力してくださった皆様、誠にありがとうございました。今後も、多様化する社会の中で様々な方々がB.LEAGUEを楽しめる環境を広げられるように、B.LEAGUE Hopeの活動を推進してまいります。

B.Hope mate 全員での記念撮影