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2024.05.23

あと一歩で決勝進出を逃すも二冠を達成した千葉ジェッツ、富樫勇樹に去来する悔しさと感謝「ここまで来れたのは全員の努力のおかげ」

  • バスケット・カウント

富樫勇樹

「チームとしてしっかり結果を残せたことに胸を張って帰りたいです」

千葉ジェッツはチャンピオンシップ(CS)セミファイナルで琉球ゴールデンキングスと対戦。初戦を持ち味であるアップテンポなオフェンス爆発で圧勝したが、2戦目、3戦目とディフェンスを立て直した琉球に屈して連敗。東アジアスーパーリーグ(EASL)、天皇杯に続くタイトル獲得を惜しくも逃した。

千葉Jの絶対的エースである富樫勇樹は、セミファイナル3試合もオフェンスの要としていつも通りのハイパフォーマンスを披露。富樫を起点に攻めるため、足を削りにくる琉球の徹底した対策や様々な選手による密着マークを受けたが、その中でも傑出したスピード、シュート力で何度も見せ場を作った。

琉球の桶谷大ヘッドコーチは、シリーズ前から「どんなに厳しくいっても富樫君に20点を取られるのは仕方ない」と語っていたが、その評価が正しかったことを証明する活躍ぶりだった。特に第3戦は他の選手でズレを作れない中、積極的なアタックによってオフェンスを牽引した。

今シーズンの千葉Jは前年から複数の経験豊富なメンバーが去り、チームは一気に若返った。その影響もあり開幕当初はなかなか勝ち星が伸びなかったが、若手の成長に加え、シーズン途中に加入したオーストラリア代表ゼイビア・クックス、復帰となったクリストファー・スミスの存在によって徐々にチーム力を高めていった。その結果、3月にEASL、天皇杯を制覇すると、レギュラーシーズン終盤は故障者続出で苦しみながらも、ワイルドカード2位でCS出場を果たした。そしてクォーターファイナルでは、シーズン最高勝率の宇都宮ブレックスを撃破と見事な戦いぶりだった。

富樫は「天皇杯とEASL、2つのチャンピオンシップを獲れました。(セミファイナル)最後の2試合はフィジカル的にかなりやられてしまった感覚ですけど、まずここまで来られたことがすごく大きな成長だと思います。シーズンを通してチームとしてしっかり結果を残せたことに胸を張って帰りたいです」と語る。すべてを出し切るも、あと一歩で頂上決戦に進めなかった悔しさはあるが、シーズンを通しての進化に大きな手応えを得た1年となった。

そして、苦しい時期を乗り越えられたのは周囲のサポート、チームメートのハードワークがあってこそと、悔しさ以上に感謝を強調する。「今はシーズンが終わった直後で、悔しい気持ちの方が勝っている部分はあります。ただ、試合のコート内外での努力というところで、チームの中の人たちしから見られないことはたくさんあります。それを見てきた中でのこの結果で、残念な思いにプラスして、ここまで来られたのは全員の努力のおかげで、感謝したい気持ちの方が強いです」

富樫勇樹

過酷日程でもフル出場「そこに対してはすごくプライドを持ってやっている」

この感謝は、ジェッツブースターに対しても同じだ。「浮き沈みが激しいシーズンでしたが、皆さんがあきらめずにチームと一緒に戦ってくれたことは忘れないです。皆さんがいなかったらCSに出られる可能性はなかった。気持ちが切れそうな時、もう一回引っ張ってくれたのはファンの皆さんなので本当に感謝しています」

富樫個人で言うと、シーズン開幕前にはワールドカップに出場とオフに十分な休養をとる時間がなく、Bリーグのチームで最も過酷なスケジュールの中で、レギュラーシーズン60試合、CS6試合すべてに先発出場とフル稼働だった。コンディション面を考慮すれば、休んだ方が良い時もあったはずだ。それでも富樫は試合に出続けた。そこにはエースとしてチームを背負う覚悟、ホームとアウェーに関わらず富樫のプレーを楽しみにする多くのバスケットボールファンの期待に応えたい真摯な思いがある。

試合に出続けることについて富樫は、「そこに対してはすごくプライドを持ってやっているところはあると思います」と語る。「もしかしたらケガが悪化するかもしれない、そんな時もありました。ただ、(Bリーグ開幕から)この8シーズンやってきて、可能性として少しでも出られるなら常にコートに立つようにしてきました。それがチームにとって良かった時だけでなく、良くなかった時もあるかもしれないです。でも1人のプロ選手として出場し続けることが目標なので、これからもやっていきたいと思います」

全チームが目標としているのはリーグ王者であり、頂点に立てないチームはすべて敗者という見方もある。だが、二冠とCSセミファイナル進出の素晴らしい実績を残した千葉Jを敗者と言うことはできない。今シーズンも富樫は引き続き千葉Jという『勝者』を牽引する絶対的エースとして、見事な輝きを放っていたことに異論を挟む人はいないだろう。