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2016.07.01

Vol.01「バスケットボール界の新時代に向けて」- 大河正明チェアマン -

  • COLUMN

NBLとbjリーグ、長年に渡って2つに分裂していたリーグが遂に統一。唯一無二の男子トッププロリーグとして2016年9月22日にスタートとするのがB.LEAGUEだ。バスケットボール界を新時代に導くけん引役として大きな期待を集めているB.LEAGUEのトップを務める大河正明チェアマンに、これまでを振り返り来たるべきシーズン開幕へ向けての意気込みを伺った。

文・写真◎鈴木栄一

開幕へ向けリーグ、クラブが協力して更なるPRを

 「昨年(2015年)の3月30日の夜、川淵(三郎)さんからお電話をいただきバスケットボール界の再生に取り組もうと決めました。その時、日本バスケットボール協会の専務理事、B.LEAGUEを作っていくという大きな仕事が2つありました。特にB.LEAGUEについて(話をもらった当時)、新リーグ事務局のスタッフはまだ誰もいませんでした。当然、リーグとして売り上げの目処もなく、TV放映権の話も全くの白紙でした。そこから1年数か月が経過し、今はここまで走りながらよくきたというのが率直な感想です」

このように大河チェアマンは、文字通りゼロの状態からB.LEAGUEを作り上げたここまでの道のりについて語る。そして、9月22日に決まった開幕へ向けてはリーグ、各クラブがそれぞれの分野でPR活動を行っていくことが大切と続ける。

「開幕に向けリーグとして、全国メディアからSNSと様々な媒体を使って露出を増やしていかないといけない。ファンの注目が集まるようなやり方を考えていくことがリーグの仕事です。一方で地道にホームアリーナの周辺地域を中心に開拓しながらお客さんを増やしていただくのがクラブの仕事だと思います。」

これまでNBL、bjリーグと2つのリーグに所属していたクラブが集ってスタートするB.LEAGUEが成功するためには、リーグ本体に加え各チームも更なるステップアップが必要不可欠だ。まず、NBLの中でも企業チームは日本人トップクラスの選手たちが多く所属するなどタレントは申し分なかったが、これまでの運営スタイルから大きな方向転換をしてもらいたいとチェアマンは望んでいる。

「これまで企業クラブは、自分たちの会社の従業員の方に試合に来てもらうことが中心で、そもそも集客をするという考えが一般的ではありませんでした。しかし、プロリーグであるB.LEAGUEでは、これを大きく変えてもらわなければいけません。親会社から給料を貰うのではなく、見に来ていただいているお客さん、パートナーとして支援していただく様々な企業の方からいただいたお金が、自分たちの報酬となっているという考えに抜本的に変えていかないと企業クラブは厳しくなっていきます。真の意味でのB to Cのクラブ運営を求めていきたいです」

また、基本的には全クラブが基本的には独立したプロであったbjリーグ勢については、「bjリーグは若い経営者が一生懸命に活動し、それぞれ地元に根付いてやっている。30代、40代のしっかりとした考えをもった若手がクラブを運営していて、経営者の質といった面では、Jリーグにもひけをとっていないと思う」と評価する。

ただ、一方でこれまで日本代表クラスのトップ選手の大半はNBLのクラブに在籍していたこともあり、「bjリーグは日本のバスケットボール界を強くすること、国際競争力を高めていき、オリンピック、W杯出場を目指していくことに対する思いがもっと強ければよかったと感じました」と、代表強化の部分では課題があったと見ている。

日本代表が多く在籍しレベルの高いバスケを見ることができたNBLとエンターテイメント性が優れているbjリーグが統合したことで、B.LEAGUEは両リーグの良い面を取り込んだ素晴らしい舞台となるだろう。

選手をより売り出してリーグの活性化に

NBL・bjリーグでは、選手の総年俸に上限を決めるサラリーキャップ制度が施行されていたが、B.LEAGUEには同制度はない。そして企業クラブを始め、NBLの上位クラブの方が、資金力ではbjリーグ勢を上回っているのではという見方もある。

この状況についてチェアマンは、「bjリーグのクラブも、もっともっとお客さんを集めることで、企業クラブに対抗、もしくはそれを上回る財政力を誇るクラブが出てきてほしいです」と各クラブにエールを送る。また、資金力で劣る分を様々な工夫でカバーすることも可能であると見ている。

「B.LEAGUEでいえば、秋田や沖縄といった地方のクラブがナンバー1の資金力、事業規模のクラブを作っていくことは実際問題として厳しいかもしれません。しかし、ある程度上位の規模を確保することができれば、秋田や沖縄はバスケットが盛んであり小学生から高校生の年代の地元の選手を育成し、良いスカウティングをすることで戦力を強化できる。これで東京、名古屋、大阪といった大都市のチームと対抗することは可能だと思います」

また、B.LEAGUEが大きく発展していくためには様々な要素が必要となるが、各チームの地域密着と共に、チェアマンが重視しているのが選手の個々のブランドイメージ、知名度の向上だ。

「試合こそがメインコンテンツで、プロバスケのゲームを見に来るという観点はありますが、この選手が見たい、あの選手が好きだから試合を見に行くという面もプロでは大事になってくる。そういう風に思われる選手が増えることが大事だと思います」

「また、日本は代表チームの人気が高いお国柄です。国際試合で活躍した選手たちがリーグ戦において、日本各地でプレーすることはバスケ人気向上に大きく繋がっていくと思います。そして、地元出身の選手たちが戻ってきて地元チームで活躍し、日本代表に選ばれるまでに飛躍していくことも大切です。そういう意味で、ナショナル、ローカルと2つの道でそれぞれ選手が注目されていってもらいたいです」

そして最後に、ファンに向けてB.LEAGUE誕生を受けてよりプロ意識が高くなっている選手たちのプレーを楽しみに会場に来てもらいたいと締めくくっている。

「選手もだんだんと意識が変わってきています。僕は選手にはエゴイストになってもらいたいと思っています。これからは試合で活躍して目立つことで、知名度が上がれば年俸が変わってきます。そういう土台を今まさに作ってきているところです。そして各選手がより多くの人に見られることによってさらに自分を磨いていければ、日本代表も強くなり五輪、W杯に出場することにつながっていく。そんな期待感を持ちながらぜひ会場に足を運んでもらいたいです」

大河正明(おおかわまさあき)
プロフィール

1958年(昭和33年)5月31日生

略歴

1981年3月
京都大学法学部卒業
1981年4月
三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行
1995年5月
(社)日本プロサッカーリーグ出向 総務部長
三菱東京UFJ銀行 理事 鎌倉支店長 町田支店長などを歴任
2010年10月
三菱東京UFJ銀行 退行
2010年11月
社団法人日本プロサッカーリーグ 入社
2012年5月
公益社団法人日本プロサッカーリーグ 理事 管理統括本部長 兼 クラブライセンスマネージャー
2014年1月
公益社団法人日本プロサッカーリーグ 常務理事(2015年5月退任)
2015年5月
公益財団法人日本バスケットボール協会 専務理事事務総長
一般社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ 理事
2016年3月~現在
公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ 理事長
公益社団法人日本プロサッカーリーグ 参与
2016年6月~現在
公益財団法人日本バスケットボール協会 副会長

バスケットボール競技歴

1973年
全日本中学校バスケットボール大会 ベスト4
1975年
近畿高等学校バスケットボール選手権 準優勝