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B.MAGAZINE

日本から世界へ!Jr.NBAショーケースへの参加で仲村匡世コーチが感じた“新しい物差し”

2023.09.08

国際連携

各国の選ばれた選手たちとショーケースに参加した中村選手(写真左)と仲村コーチ(写真右)
 

“大きな刺激を受けた”と振り返った仲村コーチ(琉球U18)

7月中旬、NBAはアメリカ、世界16ヵ国からトップレベルのユース選手40名を集めて「第1回Jr.NBAショーケース」(以下、ショーケース)を開催した。招待を受けて日本から参加したのは中村颯斗選手(四日市メリノール学院中)。また、BリーグはNBAと交渉し、コーチの参加も実現。琉球U18から仲村匡世氏(アシスタントコーチ兼通訳)が参加した。ショーケースでは通訳として選手をサポートするだけでなく、コーチングのアシスタント役もこなした。

 

旅を通じて親交が深まった
 

同じ月、Bリーグが「B.革新」と銘打って2026年に開始する新リーグの名称、新制度を発表したことは記憶に新しい。島田慎二チェアマンは「選手、チーム社員、ファンといったステークホルダー(利害関係者)が喜ぶリーグを目指し、“バスケで日本を元気に”していくためのもの」と紹介。同時に発表された数値目標の一つでは、2030年にはBリーグから5人のNBA選手を輩出すると宣言した。日本バスケの可能性を広げるべく、Bリーグは、さまざまな策を講じていく。今回のコーチ派遣はその一環というわけだ。

ショーケースは基本的なスキル、ゲーム、核となる価値観(チームワーク、リスペクト、決断力、コミュニティ)を教えるユース世代に向けたプログラムである。初開催となった今回のショーケースでは、世界各国からコーチも参加。さらにレイカーズACのフィル・ハンディなど現役NBA、WNBA、Gリーグコーチも指導に加わるなど大規模なものとなった。

学生時代、アポ無しでアメリカに乗り込み、NCAAの名将にコーチングを教わったという稀有な経験をしている仲村コーチにとっても貴重の経験となったようで“大きな刺激を受けた”と振り返っている。

「すごい実績を持っているコーチたちが、強い自信、プライドを持っているアメリカ人選手に対して時間をかけて語りかけ、信頼関係を構築していくという過程を見たことは大きな刺激になりました」。

アメリカ、世界の選手、コーチたちが一堂に会するわけだから、さまざまな違いを学ぶ機会になる。練習の捉え方もその一つだ。

「アメリカでは試合でいかにパフォーマンスを発揮できるかが重要。練習で何かを習得するというよりは、どんどん違う練習をこなして確認していくというイメージなんです」とメニューをしっかりこなす意識が強い日本とは大きな違いがあると説明している。実際に練習に参加した中村選手も「アメリカ人選手はチーム練習でも個人技でプレーする印象でした。それでもバスケは5対5のスポーツ。改めてチームプレーの大切さを考えました」と違いを体感し、改めてバスケを考えるチャンスになったという。

コーチの指示を受ける中村選手と通訳する仲村コーチ

言葉のハンディがありながらも最終的には信頼を勝ち取り、エキシビションゲームではスターターになるなど、活躍を見せた中村選手(帰国後、第53回全国中学校バスケットボール大会で連覇に貢献)。その頑張りについて仲村コーチは、「(ショーケース開催期間の)1週間で、中村選手は大きく成長したなと感じました。言語についてコートの外では助けることができますが、プレー中は自身で解決しないといけません。それでも最終的にはチームメートからの信頼を得ていました」とたたえている。

初の海外で言葉もサイズもプレースタイルも異なる選手たちとプレーする。それがいかに大変かは想像に難くない。仲村コーチは海外でそれを“知ること”こそが、選手にとってもコーチにとっても重要だと主張する。「世界のレベル感を肌身で感じること、違いを感じることにより、“新しい物差し”を手に入れることになります。それは海外だからこそ得られるものですし、確実に知っておいたほうがいいこと。日本の考え方と海外の考え方で必ずギャップはあります。そのギャップを知り、優れているものを取り入れて伸ばしていく。日本で海外の良さを取り入れるというのをミックスさせていくことが大切だと思います。」


エキシビジョンでスターターとして出場するなど世界でも活躍を見せた(写真右端が中村選手)
 

 “個人技のプレー”が悪いという話ではない。仲村コーチが現在考える理想の形として語ったのが「強さにこだわる集団」という表現だ。「最終的には助け合えるチーム。それはすごく大事だと感じています。一方で馴れ合いになる恐れもあります。上手さ以上に強さにこだわる集団であることがいいチームなんだと思います」。

 バスケットボールで重要なことは効率よく得点し、失点を防ぐこと。チームとしてのプレーは、効率がよくなる手法ではあるが、時には1対1での強さがものをいう。

「私は、Bユースのチームは戦術の知識という面で優れていると感じています。一方で部活動のチームは上手さ以上に強さを持ったチーム、選手が多い。チームの連係で局面を解決するのではなくて自分自身で打開する強さ、重要性。それがBユースの課題と感じていたものなので、うまく注入することができるかもしれないと思っています」と今回のコーチ派遣で学んだことをチームに落とし込みたいと仲村コーチは語っている。

Bリーグとしてはコーチが海外で学ぶ場を今後も増やしていきたいと考えている。日本にいては決して知り得ない違いを体感し、日本で形にしていく。「小事が大事を生む」、こういった努力こそが将来、夢を実現することに一歩ずつつながっていくのだろう。

(取材・文:広瀬俊夫/月刊バスケットボール編集部)