【B2プレーオフ】昇格に執念を燃やす熊本ヴォルターズ、山本翔太が誓う下剋上「全力でダイブしてハッスルするところから」

熊本ヴォルターズは『りそなグループ B.LEAGUE 2024-25 B2リーグ戦』を27勝33敗のB2西地区4位で終え、『りそなグループ B2 PLAYOFFS 2024-25』(以下、プレーオフ)のクォーターファイナルでアルティーリ千葉と対戦する。5月3日に迫ったプレーオフに向けて、現在のチーム状況や意気込みを山本翔太に聞いた。
【(C) B.LEAGUE】
「成績が悪くても自分のプレースタイルを忘れない」
──開幕から2カ月間は2勝16敗と苦戦しましたが、最終戦でプレーオフ進出を決めました。激動のレギュラーシーズンを振り返ってください。
山本 B1昇格にはほど遠い成績でスタートして、何をやればいいかを見失い、自信をなくしていた時期がありました。ヘッドコーチが遠山(向人)さんに代わった頃から各々のやるべき仕事が明確になり、まずはプレーオフ出場を目標に掲げて、奇跡的にカムバックできました。レギュラーシーズンで浮き沈みがあった分、プレーオフ出場は満足のいく結果だと思います。
──成績が伴わない時期は、どんなことを考えてプレーしていましたか?
山本 上手くやろうとしすぎて消極的になってしまい、思い切り良くプレーできないこともありました。自分のパフォーマンスが良くても、チームとして上手くいかずに負けてしまうのは、もどかしかったです。チームの成績が悪くても自分のプレースタイルを忘れないことが大切だと考えていました。見に来てくれている子供たちに夢を与えたいので『コートに立っている以上は全力でやろう』と臨んでいました。

【(C) B.LEAGUE】
──主力選手の復帰など巻き返しの要因はいろいろあったと思いますが、勝ち星が増える中で手応えを感じることはありましたか?
山本 日本人選手がアグレッシブにディフェンスするようになりました。自分たちはサイズがあるわけではないので、前から40分間プレスしたりハードワークし続けられるのが強みになっていったと感じています。オフェンスでもシュートの成功率が良くなり、イキイキとアタックできるようになったのも大きな要因だと思います。外国籍選手のリバウンドが安定したのも大きかったです。
──熊本は若い選手が多くて勢いのあるチームです。
山本 勢いに乗れば、そのまま逃げ切る試合もありますが、相手に乗られてしまうと本当に一瞬で崩れてしまうこともあります。流れが悪くなると、一人で打開しようと前しか見えなくなって負ける傾向があります。リーグの中でもアシスト数が少ないので、毎試合25から30くらいアシストを出せるように、お互いを信じてバスケをしないとですね。

【(C) B.LEAGUE】
「たくさん得点できたのはチームのおかげ」
──山本選手はB2日本人選手で最多の平均13.1得点を記録しました。
山本 たくさん得点できたのは、信じてパスをくれたチームメートや起用してくれたスタッフのおかげです。自分だけでは成し遂げられないことなので、チームのみんなに感謝しています。レギュラーシーズンの開幕戦でアルティーリ千葉と試合をして、3ポイントシュートだけではなくドライブからファウルをもらってフリースローを獲得する手応えを感じました。自分の武器が増えた感覚があり、オフェンスの部分で成長できたシーズンでした。
──短い時間で得点を量産する爆発力も山本選手の魅力ですが、意識していることはありますか?
スタートから出ているので、自分がオフェンスでチームを引っ張っていき、火をつける意識を持ってアグレッシブにアタックしています。それが上手く行く時は、点数が伸びますね。
──エースとしての自覚を感じるシーズンになりましたが、自分の中で変化は感じますか?
山本 熊本に来て3シーズン目で、もっと成長したい気持ちが強かったです。2シーズン続けてオフにチームのエース選手が抜けていったので、今シーズンの前に『自分がエースになる』と皆さんの前で宣言して、口にしたからには結果で示さないといけないと思いました。そこからはチームを引っ張っていける存在になりたいと思って日々頑張ってきました。
【(C) B.LEAGUE】
──ディフェンスについても自身の評価を聞かせてください。
山本 今シーズンは磯野(寛晃)さんが復帰したので、昨シーズンに比べると相手のエースにつくことは少なくなりましたが、負けず嫌いなので自分のマークマンには点数を決められたくないです。まだまだ自分はディフェンスができないと思っています。いろんな選手のディフェンスを参考にしてる段階なので、これからもっと上手くなりたいですね。
──チームを引っ張る存在になりましたが、チーム内のコミュニケーションはどうでしょうか?
山本 レギュラーシーズンでも終盤に向けて、選手同士のコミュニケーションが増えてきました。例えば、相手のフリースローの時にもコート上の5人がすぐにハドルを組んでコミュニケーションを取れているので、常に全員が同じ方向を向いてバスケをやれています。

【(C) B.LEAGUE】
「プレーオフはレギュラーシーズンとは違います」
──クォーターファイナルは、リーグ最高勝率を叩き出したアルティーリ千葉との対戦です。どのような展望がありますか?
山本 Bリーグファンの多くの人が、この対戦カードはアルティーリ千葉さんが勝つと予想していると思いますが、プレーオフはレギュラーシーズンとは違います。自分たちは勢いがあるチームなので、プレーオフの独特な雰囲気の中で下刻上を目指して下から食っていくつもりです。40分間みんなが集中力を切らさずに同じ方向を向いていければ勝てない相手ではないと思っています。
──今シーズン、アルティーリ千葉とは開幕節での2試合で対戦して連敗していますが、山本選手は3ポイントシュートを5本決めてシーズンハイの28得点を記録しています。良いイメージも持っていますか?
山本 あの時と今の自分たちはプレースタイルもガラッと変わっていますし、怖さみたいなものは全くないです。ただアルティーリさんに限らず、どのチームもシューターに対してハードにプレッシャーをかけてくるので、どのように守られるかは警戒しないといけないですね。
──2シーズン連続でクォーターファイナル敗退を味わっています。この経験から生かせることはありますか?
山本 レギュラーシーズンとプレーオフではアリーナの空気感が全然違います。いつも入るシュートが入らなかったり、選手から見ても何があるか分かりません。クォーターファイナルは、まずはディフェンスから勢いを持っていくことが必要だと考えています。リバウンドやルーズボールなど、取れなくてもいいから全力でダイブしてハッスルするところから試合に入れたらチームに勢いをつけられます。
──空気感といえば、熊本のファンは熱狂的で、プレーオフにも多くの方が応援に来てくれるはずです。熊本はBリーグ創成期から何度もB1昇格の壁に阻まれてきた歴史があります。期待の大きさを感じますか?
山本 たくさんのファンの方がどこでも駆けつけてくださり、自分たちの後押しをしてくれるので本当に力になってますね。アウェー戦でも鳥肌が立つくらいの声を出してくれるので、それをプレッシャーに感じるのではなく、自分たちの後ろには応援してくださる方がたくさんいるとポジティブにとらえてB1昇格に向けて戦っていきます。

【(C) B.LEAGUE】
──最後に応援してくださっている方へのメッセージをお願いします。
山本 まずはレギュラーシーズン60試合、応援ありがとうございました。後押ししてくださる方々がいることで『諦めていいシーズンなんかない!』とチーム全員で臨めた結果、プレーオフまで来ることができました。崖っぷちからここまで来れたのは自分たちの力だけでは成し遂げられないことで、本当にファンの皆さんには感謝しています。緊張はしますが、それを楽しんで目の前の一戦一戦を頑張っていきます。あと少し、プレーオフでもお力をお借りできたらうれしいです!