2025.07.08
バスケと笑顔がつないだ能登の一日 復興への思いを未来へつなぐ [88 SMILE in Noto]
被災地を訪ね、見た「現実」と聞いた「覚悟」
6月28日、石川県輪島市にある日本航空高等学校石川を舞台に、「88 SMILE in Noto」が開催された。主催は1988年生まれで日本バスケット界に名を残す篠山竜青(川崎)、橋本竜馬(静岡)、そして元Bリーグの選手で現在は実業家としても活動する湊谷安玲久司朱の3名。今回はECHAKE-NA NOTOの協力を得て、能登半島地震・豪雨の被災地支援を目的に企画された。
イベント前日の27日、88 Basketballの3名は現地入りし、ECHAKE-NA NOTO代表の谷遼典氏および池田智美選手の案内で被災地を視察。輪島朝市跡地では、かつて賑わいを見せていた通りが火災によって焼失し、今は広大な更地が広がっていた。池田選手のスマートフォンに残された震災前の写真と、目の前の光景とのギャップに、言葉を失ったという。

写真提供:88 Basketball

写真提供:88 Basketball
また、奥能登を代表する景勝地・白米千枚田も訪問。復旧が進む区画がある一方で、いまだ手付かずの崩落現場も多く、復旧の難しさを実感。さらに、建物の8~9割が解体を要するとされる南志見地区では、地域の経営者から「人のおらんところを元気にして、人が戻るようにすることが大事」という言葉を聞き、地域再生への小さくも確かな希望を感じた。被災地を直接見て、現地の人と語り合うことで、表面化しにくい課題や前向きな取り組みへの理解が深まったと3人は語っている。
イベント当日は、輪島市に加え珠洲市や志賀町、金沢市などから約50人の子どもたちが集結。午前中に行われたトークショーには、88の3人に加え、池田智美、橋田幸華(いずれもECHAKE-NA NOTO所属)の2選手も。会場から寄せられる数多くの質問に、それぞれが笑顔で応じた。
「試合でミスしたらどう切り替える?」「フリースローで何を考える?」といった実践的な質問から、「バスケ人生で一番いいプレーは?」という少しユニークな問いも飛び出した。
篠山は、2018年のW杯予選オーストラリア戦で、ディフェンスリバウンドから持ち込んで決めたレイアップを挙げ、橋本は思わぬ角度から「けん玉で複数の玉を一気に皿に乗せた」エピソードを披露して、会場の笑いを誘った。また湊谷は、三菱電機(現・名古屋D)時代でのルーキーシーズンを紹介。スタメンとして出場を重ねたのち、調子を落として控えに回った試合で30得点し、再び先発に返り咲いた経験を挙げた。さらに橋田は、秋田銀行で迎えたラストシーズンに国体と実業団大会を制し、「きれいさっぱり引退できた」と笑顔を見せた。中でも印象に残っているのが、山形銀行との最後の試合。残り33秒、守りきれば勝利という場面で、相手のフォーメーションを読みきってパスカットを成功させた瞬間を「最高のプレーと感じた」と語った。

写真提供:88 Basketball

写真提供:88 Basketball
語り、食べ、笑ってつながる──バスケで交わす心のパス
昼食は、地元・輪島市に店を構えるゴーゴーカレーのカツカレー。選手と子どもたちは、カレーを味わいながら笑顔で言葉を交わし、あたたかな交流のひとときを過ごした。その中で似顔絵を描いて手渡す子や、選手のルーティーンを真似てみせる子もおり、それぞれが自由なスタイルで触れ合いを楽しんでいた。
午後のクリニックでは、ECHAKE-NA NOTOの池田、上瀧葵怜々、辰巳緒花の3選手も加わり、6名体制で指導が行われた。池田の主導によるスポーツリズムトレーニングで身体を温めた後は、篠山を中心に緩急を取り入れたボールドリル。最後は子どもチーム対選手チームのゲームが行われ、選手の華麗な3Pシュート、子どもたちのナイスプレーに歓声が沸き起こった。

写真提供:88 Basketball

写真提供:88 Basketball
閉会時には参加者全員で集合写真を撮影。被災地に集った笑顔とバスケットボールが、一つの希望の形を結んだ1日となった。本イベントは、クラウドファンディングを通じて多くの支援に支えられて実現したもの。88 Basketballの3人は、それぞれに次のようにコメントしている。

■篠山竜青
「クラウドファンディングにご協力いただいた皆様のおかげで、能登に伺うことができました。メディアでは知り得ない現実を自分の目で見ることの大切さを実感しました。子どもたちの笑顔に元気をもらい、このご縁を一度きりにせず、継続していきたいと思います」
■橋本竜馬
「現地を訪れたことで、普段の生活の中でまだまだ不自由があることを肌で感じました。今回のイベントは、我々がこれから何をすべきかを考えるきっかけになりました。継続的に活動を続けていきたいと思います」
■湊谷安玲久司朱
「88として初めての復興支援活動でしたが、実際に足を運ぶことで見えたものがたくさんありました。子どもたちの笑顔に触れ、こういった活動を続けていく責任を感じました。微力ながら、88 Basketballとして復興支援を継続していきます」
「88 SMILE in Noto」は、バスケットボールを通じて人と人をつなぎ、笑顔と希望を広げる活動の一つ。一度限りではなく、ここから続いていく支援の輪に注目していきたい。

【88 SMILE in Noto 開催レポート】
<開催概要>日時:2025年6月28日(土) 10:00~15:00(予定)
会場:日本航空高等学校石川(石川県輪島市三井町洲衛9部27番地7)
講師:篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)、橋本竜馬(ベルテックス静岡)、
湊谷安玲久司朱(元横浜ビー・コルセアーズ)
ゲスト選手:池田智美、橋田幸華(※トークショーのみ)、上瀧葵怜々(※クリニックのみ)、
辰巳緒花(※クリニックのみ)(以上、ECHAKE-NA NOTO)
協力:ECHAKE-NA NOTO
記事提供:月刊バスケットボール