2025.07.28
SR渋谷の選手たちが見た、病と闘う子どもたちの"もう一つの家"
「つぶやきノート」に綴られた言葉に目頭を熱くし、自らの子育て経験と重ね合わせながら——。サンロッカーズ渋谷のベンドラメ礼生と永吉佑也が6月27日、病気と闘う子どもとその家族のための施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス せたがや」(以下、せたがやハウス)を訪れた。選手たちは施設への寄付金を贈呈するだけでなく、利用家族との交流を通じて、支援活動の意義を深く実感する機会となった。
この取り組みは、SR渋谷が2024年に発足させた社会貢献プロジェクト「S-Ring」の一環だ。「社会を一つの輪に。」をコンセプトとするこのプロジェクトは、クラブがファンや地域に支えられているという認識のもと、学校訪問や地域イベント参加などを通じてより良い社会の実現を目指している。
この取り組みは、SR渋谷が2024年に発足させた社会貢献プロジェクト「S-Ring」の一環だ。「社会を一つの輪に。」をコンセプトとするこのプロジェクトは、クラブがファンや地域に支えられているという認識のもと、学校訪問や地域イベント参加などを通じてより良い社会の実現を目指している。
SR渋谷は5月3、4日のアルバルク東京戦にて、選手のユニフォームやシューズ等を出品するサイレントオークションを実施。今回の寄付金は、その落札金額の一部から充当され、せたがやハウスの運営費や改修工事費用として活用される予定だ。

病院内にある施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス せたがや」
思わず目頭が熱くなった「つぶやきノート」に綴られた思い
ベンドラメと永吉は寄付金贈呈後、初めて施設内を見学した。最初に案内されたのは利用家族が滞在するベッドルーム。ボランティアによる手作りのパッチワーク小物で彩られた部屋は、まるで自宅のような温かさに包まれていた。利用家族が部屋にこもって孤立しないよう、あえてテレビを個室ではなく共有スペースに設置するといった工夫もされており、これには選手たちも大いに感心。また、各部屋に設置された「つぶやきノート」が紹介された。
「つぶやきノート」とは、利用者がそれぞれの思いを自由に綴って残していくもの。同じ部屋を使用した家族が子どもの病状への不安や他の家族への励ましを書き記したページを読み、永吉は「これはちょっと…やばいですね…。目頭が熱くなる…」と言葉を詰まらせた。ベンドラメも「前にこのノートに書いた家族のメッセージを読むことで、勇気をもらい、心の支えになっていると思います。同じように子どもの病気と向き合う人がいて、共有できる環境があることで、みんなで前向きに闘えるのではないか」と、その価値を深く感じ取った。

ダイニング&キッチンは周りとの交流を図れる大事な共有スペース
その後、共有スペースを見学した選手たちは、ハウス利用家族3組とボランティアスタッフを交えた座談会に参加した。群馬から来て8か月間ハウスを利用している母親は「4歳の長男が入院中で、先日手術が終わったところです。下の娘と夫は地元にいて、私が一人で来ているので、何でも話せるほかのお母さんがいると心強い」と語る。また、広島から初めてハウスを利用している父親は「地元では難しい大きな手術のために東京の病院を紹介され、親の宿泊先について不安だったところ、このハウスを紹介されました。病院敷地内にあるし、1日1,000円で滞在できる。キッチンも使えて本当に助かっています。ボランティアの方々のおかげで成り立っていることも実感しています」と感謝の気持ちを述べた。

座談会を通して利用者たちとの交流を図った
利用者の声を聞いたベンドラメは「ハウスの環境によって心の支えとなる人が見つかり、みんなで前向きに闘う気持ちになれる。地元の家族と離れて東京で付き添い生活をする中で、ハウスはとても貴重な存在だと思いました」とコメント。永吉は「ハウスの存在は知っていましたが、1日1,000円で滞在できることや、せたがやハウスだけで200名以上のボランティアの支えで成り立っていることは全く知りませんでした。まずは知ってもらうことが大切だと感じます。バスケ界にも広めていきたいですし、それが僕らの役割の一つなのかなと思います」と情報発信の重要性を強調した。
せたがやハウスのハウスマネージャー大野さんは「ハウスのことを知らなかったと、皆さんよくおっしゃいます。マクドナルド店頭の募金箱がこのハウスにつながっていることも、知らない方が多いです(※)。日本でのドナルド・マクドナルド・ハウスの認知率は海外に比べて低く、まだ3割程度。知っていただくこと、このようにハウスに来ていただくことが本当に大きな応援になります」と語った。
※ハウス名に「マクドナルド」が付いているが、マクドナルド社と「公益財団法⼈ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン」は完全に別組織。ミッションパートナーではあるが、ハウスの運営は100%寄付・募金で成り立っている。決してマクドナルド1社のスポンサーで運営されているわけではなく、さまざまな企業・団体・個人の方々の支援で運営されている。
父親としての経験から共感するベンドラメ「あのとき、このハウスを知っていれば…」
ベンドラメの共感の背景には、自身の経験があった。2児の父であるベンドラメは、上の子が3歳のとき約1か月間、入院した経験を持つ。当時はコロナ禍で面会も外出も制限される中、親が1人で病室に付き添う状況。ベンドラメ自身も最初の1~2週間は病院で付き添い、妻と下の子が自宅で待機する中、入院する子どもと二人きりで過ごしたという。
「当時は個室だったので、一日中、部屋で子どもとかくれんぼをして過ごしていました。途中で妻と交代して自宅に戻りましたが、母乳を飲んでいた下の子は急に断乳することになり、本当に大変でした。あのとき、このようなハウスを知っていれば全然違っただろうと思います。病気と向き合う中でつらい時期は必ずありますが、同じ経験をした家族の話を聞いたり、ノートのコメントを読んだりできれば、踏ん張るべきときに力を出せるのではないかと思います」

利用する子どもたちと交流しながら、自身も父親であるベンドラメは過去の経験を回想した
訪問後、隣接する国立成育医療研究センター病院も訪れた2人は、病棟を回って入院中の子どもたちと交流し、笑顔を届けた。SR渋谷ファンの子どもたちもおり、選手たちの訪問に大喜びだったという。この日の体験を通じて、選手たちはハウスの重要性を実感し、個人でも募金を行った。訪問当日の夜、InstagramでこのハウスについてSNS発信すると、「うちの子もお世話になりました」といったコメントが寄せられ、支援の輪はすぐに広がりを見せている。
ハウスへの寄付・募金は下記HPからオンラインでも可能。病気と闘う子どもたちとその家族を、ぜひ応援してほしい。
■公益財団法⼈ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン
公式Instagram https://www.instagram.com/dmhcjapan/
せたがやハウス公式X https://x.com/dmh_setagaya

記事提供:月刊バスケットボール