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2025.09.30

Bリーグの新理事にクラブオーナー2名が参画 “オーナー視点”の意見が追い風となるか 島田慎二チェアマンは集大成の4期目へ

  • 月刊バスケットボール

9月26日、都内にて「B.LEAGUEチェアマン、および新理事・新監事発表記者会見」が実施された。同日に開催された定時会員総会で可決され、チェアマンは現任の島田慎二氏が再任、4期目を担ってくことが決まった。島田チェアマンを含む17名の理事のうち、6名が新任となった。

JBA会長兼任の島田チェアマンに
「Bリーグにメリットがあると判断」

役員候補者選考委員会の野宮拓委員長は「委員会は昨年9月の理事会で発足し、以来12回にわたり審議を重ねてまいりました。 前半の9回でチェアマンと業務執行理事の選定を行い、後半3回でその他の理事、幹事について検討してまいりました」と説明。

同委員会は野宮氏以外にBリーグの執行役員やJBAの職員、B1、B2の実行委員、社外理事、社外幹事などで構成され、BリーグとJBA関係者以外のメンバーが過半数を占める。よって、より公平性を保った上で審議を重ねたと強調した。

その中で島田氏を含めた11名がチェアマン候補として選抜され、これまでの実績やB.革新を控えた継続性の観点から島田氏が再任という形になったという。

一方で、同氏が「JBAの会長候補者として名前が挙がっていることが分かり、委員会としてはBリーグチェアマンとJBA会長を兼務することの是非についてかなりの時間を割いて審議をした」と野宮氏。その上で、「当委員会はBリーグが設置した委員会ですので、判断基準はあくまでもBリーグにメリットがあるのか、Bリーグに不利益がないのかというところ」と前置きし、兼任を認めた上でのチェアマン再任の理由をこう語った。「やはり一番気になったのは(チェアマンとJBA会長を)兼務することによって、Bリーグに割くべき時間、リソースが割けなくなるのではないか、それがBリーグの成長を阻害するのではないかというところでした。ただ、島田氏は現在もJBA の副会長であり、バスケットボール界の内情に精通しています。協会の業務内容についても十分に把握しているので、ALLバスケの視点で一体的な取り組みが可能であると考えました。日本代表とBリーグは日本バスケ界の両輪であって、JBA と B リーグのトップが兼任となることによって、両組織に対して真にシームレスかつ機動的なトップマネジメントが期待でき、バスケ界のさらなる一体感の醸成、各種施策の協働によるバスケ界全体の価値向上が期待できると考えました。 そして、島田さんが得意とする営業力、発信力が JBA においても強化されることによって相乗効果が期待でき、その恩恵がBリーグ、クラブ運営にもたらされるとも考えております」

他方で権力の一極化や業務量過多が最大の懸念であるが、その点については「サポート体制を拡充することによって、補完することは可能ではないかと考えています。各執行役員はじめ、Bリーグの中では島田さんがどう考えて業務執行するのかよく分かっている状況です。Bリーグと JBA との利益相反の可能性についても、理事会や監事の監査を通じて、両組織においてその管理体制を強化することにより対処可能であると考え、総合的に判断した場合に兼務をしていただいた方がBリーグにもメリットがあると考えて、兼任を認めることとしました」と話した。

今回、新たに理事に就任したメンバーの中には、実績ある経営者が多く名を連ねている。理事メンバーの選出には島田チェアマンは関与していないとのことで、選任されたメンバーがリソースを補い、万が一の場合の抑止力にもなるとしている。



島田チェアマンは再任、そして集大成の4期目について「ここまで多くの方々のお力添えのおかげでBリーグは成長をさせていただいています。引き続きその成長を止めずに、日本代表の強化に資する競技力強化の観点と地方創生ということで、地域から日本社会に貢献していくビジョンをしっかり遂行すべく努めてまいりたいと思います」と決意を込めた。

新任理事に2名のクラブオーナー

理事メンバーを見たときに、一つ特筆すべき点はクラブオーナーが2名、新任で加わったこと。B1レバンガ北海道の小川嶺氏とB3徳島ガンバロウズの藤田恭嗣氏だ。

島田チェアマンもその点を強調し、理事メンバー紹介にあたって「今まではクラブ経営者が中心だったのですが、これだけ M&A が多く、(リーグやクラブの)成長にチャンスを感じて投資をしていただけるオーナーが増えている中で、そのオーナーの観点も理事会に入れていく必要があるなと思いました」と話した。

具体的には、投資家として見たときのBリーグの立ち位置について、アドバイスを求めたいと話す。「過去にはオーナーと社長が一緒のパターンが多かったのですが、今はすばらしい企業が参画して、経営と執行が分離されている状況が増えてきています。経営者の皆様がBリーグの実行委員としてルール決めの中心的な役割を果たしていて、現場としても最重要であることは言うに及ばないことです。ですが、その社長を決める権限を持っているのがオーナーです。 オーナーの方々がどのようにBリーグを見ているのか、現場に対してどんな感覚をお持ちなのか、Bリーグの成長戦略に対してこう進めていけば、ほかの投資家ももっと資金投資がしやすくなるといったアドバイスをいただける。それによって、リーグの発展に資すると考えています」。加えて、経営者でもある藤田氏と小川氏の知識や経験も価値の高いものだとした。

小川氏はスキマバイトアプリ「タイミー」の代表取締役で、北海道のオーナーになったのは今季から。それ以前からスポーツ投資をする中で、次はバスケットボールと考えていたそうだ。「沖縄で行われたワールドカップに協賛をさせていただいたりと、バスケ業界に少しずつ興味を持って、依頼と調べた結果、今後10年で最も伸びるスポーツはバスケなんじゃないかという確信に変わりました」と、競技の未来に可能性を感じた。

一方の藤田氏は徳島ガンバロウズの創設時からのオーナー。自身も徳島県出身であり、株式会社メディアドゥの代表取締役社長CEOを務めている。経営者としては30年以上のキャリアを持つ人物だ。藤田氏がガンバロウズのオーナーとなった最大の理由は、地元・徳島県の地域活性のため。「生まれは徳島の、現在では人口が千人を切ってしまったような村です。地方とスポーツ、経営の3つを組み合わせていくことによって、地方がものすごく活気にあふれていくことを実感をした」と、オーナーとなって地域活性の実体験が確実にあるという。


左から小川氏、島田チェアマン、藤田氏

質疑応答の時間に、小川氏にオーナー目線でBリーグに加えていきたい点を聞いた。小川氏は、北海道のオーナー就任は今季からなため、「まだリーグ全体がつかめていない」と前置きした上で、まずはレバンガでの取り組みを実証して、それをBリーグに展開していきたいと話した.

「クラブスポンサーの方々にご挨拶をしながら、バスケの力を用いてどう社会貢献できるのかと会話をしています。具体的には、子ども食堂の開始や北海道のほかのスポーツ団体とのコラボなど、バスケ界だけではなく、この力を使ってどう地域に貢献し、それを掛け算していくのか。そのためにもBリーグを見に行きたいという環境を作っていく必要性があると思っています。
 クラブとして、十勝帯広エリアの19市町村の全てにバスケットボールコートを設置することを発表させていただきました。自治体ならびに地場の企業と組んで、いつでもどこでもバスケができる環境を作る。それによってバスケ人口が増え、Bリーグが盛り上がっていくと考えています。少しバスケをしたいなというカジュアルな方々が楽しめるような環境をどうやってBリーグとして作っていくのかは、非常に重要なテーマなんじゃないかなと思っています。なので、まずはそれをレバンガで実証して、リーグにも話ができるようにと思っています」

組織内で多角的な視点が増えることはプラスになる。両オーナーや昨季まで現役選手だった岡田優介氏の理事参画は、Bリーグを組織として新たなフェーズに導く一助になるはずだ。まずはB.革新前の最後の1年をどのような形で締めくくるのか、注目していきたい。