琉球ゴールデンキングスの桶谷大ヘッドコーチが若手にチャンスを与え続ける理由「チャレンジをしてエラーをしていかないと伸びない」
ミスをした選手にも挽回のチャンスを積極的に与える
琉球ゴールデンキングスは、週末に行われた群馬クレインサンダーズとの連戦を1勝1敗で終えた。この2試合で琉球の大きな課題として浮き彫りになったのがセカンドユニットの安易なミスだ。ゲーム1、ゲーム2ともに第3クォーター終盤から第4クォーター序盤にかけて、セカンドユニットの出ている時間帯に不用意なターンオーバーから群馬に付け入るスキを与えてしまった。その結果、ゲーム1ではこう着状態から突き放されて敗戦。ゲーム2も最大26点リードの楽勝ムードから猛追を受け、85-81という薄氷の勝利だった。
現在、琉球は昨シーズン大きな飛躍を遂げた脇真大が右第3中手骨骨折で離脱中。さらにケヴェ・アルマが退団とコアメンバーの2人を欠く苦しい台所事情だ。開幕連敗スタートを喫し、思うように勝ち星を増やせていない状況を考慮すれば、経験豊富な中心選手たちをフル稼働させ、少ない人数でのローテーションで勝ちをもぎとりにいってもおかしくない。しかし桶谷大ヘッドコーチは、群馬との連戦であえて同じ選手起用を行い、連敗は何としても避けたいゲーム2においても、ゲーム1で不発だったセカンドユニットに巻き返しのチャンスを与えた。
特に象徴的だったのは、地元沖縄出身の若きポイントカード崎濱秀斗の起用法だ。高校3年時、福岡第一をウインターカップ優勝に導くなど、世代屈指のタレントとして早くから評価されていた崎濱はアメリカ留学を経て昨シーズン終盤に電撃加入。ブレイクが楽しみな20歳だが、ここまでは経験不足を露呈しBリーグの厚い壁に苦しんでいる。
この週末もゲーム1は消極的なプレーからミスを重ね、流れを悪くする要因となってしまった。何としても連敗を阻止したいと考え、ゲーム2で安定感を欠く彼を起用しなかったとしてもそれは妥当な選択肢だ。
しかし、桶谷ヘッドコーチはゲーム2でも、ファウルトラブルに陥った小野寺祥太のバックアップとして第1クォーター中盤に崎濱をコートに送り出す。しかし崎濱は、前日のリベンジを狙った積極的なプレーが裏目に出て、出場わずか40秒で2つのファウルを喫し、すぐにベンチへと戻った。ここでお役御免となってもおかしくなかったが、指揮官は第3クォーター終盤から第4クォーター序盤に再び彼を起用した。
ゲーム2の崎濱は3分46秒の出場で、出場時の得失点がマイナス10と苦しい結果に終わった。だが、指揮官は引き続きチャンスを与える方針を示唆した。「今日は、彼が成長していくための1つの糧になったと思います。現状を見れば、同じポジションの平良(彰吾)をもっと出しても良かったかもしれませんが、ここは秀斗に成長してほしかった。この経験を踏まえてもっとチャレンジしてほしいです」
「持っている才能が他の選手と違う」崎濱秀斗への高い要求
琉球はリーグ随一の常勝チームであり、毎シーズン勝利を求められている。その中でも桶谷ヘッドコーチは、ミスの可能性が高いことを受け入れて若手を積極的に起用していく。この采配があるからこそ、琉球は毎シーズン、ステップアップする選手が出現してチーム力を底上げし、4年連続ファイナル進出を達成できているとも言える。桶谷ヘッドコーチは「過去の成功体験があるから若手を使い続けられているところもあります」と語るが、それ以上に若手育成における強い信念がある。
「結局、チャレンジをしてエラーをしていかないと選手は伸びません。エラーの数が多いほど成功体験も増えていって、良い選手になっていく。いろいろな失敗をするからこそ、何かきっかけをつかめて上達していく。だからこそできる限り、いろいろな選手を使っていきたいです」
『ピンチはチャンス』というように、指揮官は「選手が少ない状況はセカンドユニットにとってチャンス。彼らにはここで成長していってほしいです」と語る。そして、崎濱に大きな期待を寄せているからこそ、メディアに対しても「我慢の時期です」というようなありきたりのセリフでは済ませない。
「彼は持っている才能が他の選手と違います。将来、日本代表に選ばれてもおかしくない能力の持ち主だと思います。だからこそ、もっと貪欲にならないといけない。与えられたものにだけ対応するのでなく、言い方は悪いですが他の人からチャンスを奪い取るくらいにならないといけない。何なら(岸本)隆一から出場機会を奪いとるくらいの気持ちでやってほしいです。やっぱりプロの世界は自分でつかみ取らないといけないことを、もっと理解させていきたいです」
地元出身の逸材である崎濱は、これからのキングスを背負い、岸本に次ぐフランチャイズプレーヤーとしての大きな期待が寄せられている。今の崎濱は厚い壁に直面している。しかし、彼の可能性を信じ長い目で見てくれる指揮官の下、成長に必要なプロセスをしっかりと踏めている。主力離脱で苦しい今、桶谷ヘッドコーチの育成力で琉球は逆境に立ち向かっていく。

