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2025.11.14

三遠ネオフェニックスの児玉ジュニアが高校時代の同級生、崎濱秀斗に抱く熱き思い「彼が意識せざるを得ないくらいの選手になりたい」

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児玉ジュニア

「同じ舞台でプレーできているのは夢みたい」

今シーズンの開幕前、複数の大学生が在籍していたバスケットボール部を退部してプロ転向を果たした。彼らの大半は高校時代から世代屈指の選手として活躍し、大学でも最もレベルの高い関東大学リーグ1部でプレーしていた。その中で三遠ネオフェニックスに加入した児玉ジュニアは異質な存在だ。

児玉は高校バスケの名門・福岡第一出身だが、主力としてのプレー経験はない。3年生時にウインターカップ優勝を果たしているが、児玉が決勝のコートに立つことはなかった。しかし、日本経済大に進学すると大きな飛躍を遂げ、2年生で迎えた今年8月の『全日本大学バスケットボール新人戦』では関東の強豪を撃破して優勝する原動力となり、大会MVPを受賞した。

シーズン開幕直前に三遠に加入した児玉は、ここまで14試合出場で平均955秒のプレータイムを得ている。開幕4試合目となるサンロッカーズ渋谷戦で12得点4アシストを記録するなど早々にインパクトを与えたが、11月に入ると相手に対策されるようになり、スタッツが伸びずにいる。

この現状について、児玉は次のようにとらえている。「シーズン当初は『当たって砕けろ』でうまく行った部分もありますが、今はいろいろと考える部分が増えてきてうまくいっていないです。ただ、この状況に慣れてくれば、うまくアジャストすることができる。そしてコーチ陣が改善のためのメニューを組んでくださったり、大野さん(大野篤史ヘッドコーチ)が自分の強みを生かせるように助言をしてくださるのでヘッドダウンしていないです」

三遠は118日、9日とホームで琉球ゴールデンキングスと激突。児玉にとって琉球戦は、福岡第一の同級生である崎濱秀斗との対戦でもある。崎濱は福岡第一を絶対的なエースとして日本一に導いた選手で、高校時代の2人には大きな差があった。だが、今は同じB1の舞台で対戦するまでに至っている。

このことへの感慨を児玉は語る。「秀斗は1年生から試合に出ていて、自分はずっとBチームでした。こういう差があったのに、ちょっとの間を経て同じ舞台でプレーできているのは夢みたいです。自分にとって彼は『うまい』というイメージしかなかったのに、あれだけの選手でもプロになって壁に当たって乗り越えようとしている。彼の姿は良い刺激となっています」

児玉ジュニア

「自分にしかできない形で流れを持ってこられる選手に」

児玉にとって崎濱は高校時代から意識する存在だった。「1年生の頃は雲の上の存在でした。3年生になって一緒に練習をするようになって、自分の世代で一番うまい選手なので目標としてやってきていました」。だからこそ、今回の対決には特別な想いを持っていた。

「三遠に加入を決める前、彼に何回も電話をしていて『こんなチャンスはない。一緒に活躍することで(福岡)第一や俺たちの代を盛り上げていこう』と言われました。目標としていた存在から『一緒にやり合おう』と言われた時、『自分はここまで来たんだ。だったら行こう』と思ったところもあったので、この琉球戦はシーズン前からずっと意識をしていました」

楽しみにしていた琉球戦の試合終盤は、崎濱とマッチアップしてやり合う場面もあった。ただ、児玉はそのことに満足していない。「本当はもっとやり合いたかったですけど、お互いに長い間プレーできる実力が足りていなかったです。これから1年、2年と経ってもっとやれるように高めたいです」と振り返り、崎濱に対する熱い思いを語る。

「秀斗は、自分が大学にいた時から頑張っているのを知ってくれて、メッセージのやりとりをしていました。これからも食らいついて、彼が意識せざるを得ないくらいの選手になりたいと思っています」

全国屈指の強豪出身とはいえ、そこで出番のなかった選手が高校卒業から2年も経たないうちにB1屈指の強豪の一員としてプレータイムを得ているのは驚異的なステップアップだ。現在は出番が減りつつあるものの、児玉にあせりはない。「第一にいた時は試合に出ても5分くらい。越えられない壁がありました。そこから日本経済大で片桐章光コーチに出会えて、壁を1つ越えられました。今はもっと大きな壁と向き合っていますが、着実に登っている実感はあります」

そして、これからのシーズン中盤戦に向けてこう意気込みを語る。「自分は人見知りで、心の中ではめちゃくちゃ熱い気持ちでプレーしていてもそれを表現するのが少し苦手で、高校、大学と苦労してきました。そこも壁で、気持ちをもっと出していきたいです。どこのチームもガードがプレーを作るので、そこをディフェンスで潰す。オフェンスではペースをもっと上げて、自分にしかできない形でチームに流れを持ってこられる選手になりたいです」

故障者続出もあり、三遠は現在79敗と苦しんでいる。ここからの巻き返しへ向け、児玉の攻守に渡るエナジー満点なプレーは貴重な戦力となる。