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2025.12.05

タレント集団の千葉ジェッツにおいてスタッツに現れない貢献を続ける田代直希(中編)自分のスタイルを見つけることの重要性

  • バスケット・カウント

富樫勇樹、渡邊雄太といったチームの核となる選手が中心となって結成された『リーダーシップグループ』がコーチとのコミュニケーションを活発化し、好成績を呼んでいる。しかし、そのユニットには諸刃の刃の一面も。ベンチから出場してディフェンスのトーンセットを任される存在となっている田代直希が考える不安材料と、チームの現状を鑑みて若手に伝えたいこととは……。

好調を生み出したリーダーシップグループの不安材料

──リーダーシップグループは好調の要因になっていますか?

リーダーシップグループにはチームの核となる選手たちが選ばれていて、その選手たちがやりやすいバスケットを提案しているので、彼らがやりやすいようにはなっています。今は核となる選手が噛み合ってることで成績には繋がっているとは思いますね。ただ、まだまだ完成じゃないし、完全に噛み合っているかというとそうでもないので、今後もその話し合いは必要になってくると思います。やっぱり能力が高い選手が多い分、フォーメーションを最後までやり切れずに途中でアイソレーションが始まってしまったりするので、どうやってアイソレーションをしないようにバスケットができるのかというのが今後、話し合いが必要なテーマだと思います。

──『核でない選手』は核となる選手に合わせていかなくてはいけない、ということでしょうか。

そうなんです。リーダーシップグループというものの欠陥部分と言いますか、民主的ではないと言えば良いのか……『リーダーシップグループの意見=選手全員の意見』というわけでもなくなってきているので、そちら側ではない選手が合わせなくてはいけない状態が実際問題生まれ始めています。それを解消するためにも、選手たちが方向性をしっかりと持たないといけないので、今後もコミュニケーションはかなり重要になってくると思いますね。

──豊富な経験を生かし、リーダーシップグループの選手たちとそうではない選手との架け橋になることは意識されていますか?

「核でない選手としての生き方」みたいな部分は体現しようとしています。どういったところでチームに貢献しなくてはいけないのか、どういう技術を向上させないとコートに立てないのか、というのは僕の経験を存分に表現しているつもりです。若い選手は核になれるようにどんどんスキルアップをしていく必要があると思うのですが、僕みたいに30歳を迎えてくると、ある程度自分の立ち位置だったり、役回りというのは変わっていくので、僕のプレースタイルが一つの生き方であるというのを示して「こういう生き方もあるんだ」というものを体現しているつもりです。

「若手は成功体験をたくさん得ることが重要」

──ディフェンスのトーンセットとオフェンスリバウンドへの執着は田代選手の代名詞になっています。西村文男選手からは「オフェンスのフロアバランスを取る能力が長けている」という話をうかがったことがあります。

そのあたりは意識しています。他のプレーヤーの邪魔をしないというのも一つのスキルだと思っていますし、スペースを与えてプレーしやすくするのもスキルだと思うので、バランスを取ることは考えています。あとは、僕が10点ぐらい取ったところで相手は気にならないはずで、それよりも渡邊や勇樹に10点重ねられたほうが嫌だと思うので、なるべくそういった選手にシュートを打ってもらえるようにパスを出したり、無理に突っ込んで自滅するぐらいなら託すことを考えていますね。ただ、それをやりすぎると僕が脅威にならないし、捨てられすぎちゃうので、そこでいかに効率良くプレーメークして得点を狙うかというのは今後の課題ではあると思います。

──キャリア10年目を迎えた今も最前線で活躍できているのはなぜだと思いますか?

若手がいきなり僕のようなプレーをやるのはなかなか難しいと思うので、どうしても経験は必要になってくると思います。バスケットはあくまで5対5のスポーツで、IQや5対5をする技術的な上手さを向上させないと上のレベルで続けるのは厳しいと常々思っていました。個人のスキルというのが注目されていますが、コートには4人の味方がいるので、どういうプレーが必要なのか、どうすれば貢献できるのか、というのを考える力が重要です。

大きくは『経験』という言葉でくくられると思うのですが、細分化すれば5対5でどうやって貢献するのか、少ないポゼッションの中でどうやってチームに勢いをもたらすことができるのか、という経験の積み重ねと思考の繰り返しが僕のプレースタイルや価値観、思想に繋がっています。

──若手の選手の多くは公式戦で経験を積むチャンスは少ないと思いますが、どうやったらこれを培うことができると思いますか?

少ないプレータイム、少ないポゼッションでいかに成功体験を積み重ねることができるかだと思うんですよね。若手は勢いがあってアグレッシブなので、そういったところで成功体験を小さいながらに積みて重ねていくと、どんどんプレータイムが増えていってプレーの幅も広がっていきます。そうするとさらに大きな成功体験ができて、プレータイムが増える。好循環が生まれると、例えばこれまで任されていなかった役割を担う時間を与えられて「ある程度ミスをしても良いよ」と新たなチャレンジを託されて、さらに成功体験が積み重なっていく。この量が多ければ多いほど成功しやすいと思います。

若手のうちに、数少ないポゼッションの中でいかに表現をするか、短いプレータイムでどれだけ成功体験を積み重ねるかというのが次第に大きな差になっていきます。千葉ジェッツのような選手層の厚いチームで少ないミニッツでプレーをするのと、ある程度ミニッツを与えてくれるチームで活躍するのでは、成功体験の多さは変わってきます。成功体験をたくさん得ることが重要だと思います。