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2025.12.30

離脱者続出で苦戦が続く三遠ネオフェニックス、若き司令塔の湧川颯斗が抱く責任感「ここで成長しないとチャンスがない」

  • バスケット・カウント

「ポイントガードとして責任を持ってやっていく」

「この点差とチームの敗戦が現実で、これが今の自分のポイントガードとしての実力です」

12月28日、アウェーの地で群馬クレインサンダーズに連敗を喫した試合後、三遠ネオフェニックスの湧川颯斗は、そう自身を厳しく評価した。

昨シーズンまで2年連続で地区優勝を果たし、チャンピオンシップに進出をした三遠。大きくロスターを変えずに3度目の正直で臨んだ今シーズンだが、ケガ人が続出しており、第17節を終えて11勝17敗と成績を伸ばせていない。

チャンピオンシップ進出のボーダーラインにいる群馬との直接対決は、是が非でも落とせなかったが、ゲーム1は69-96、ゲーム2は71-91と両試合とも大きく点差を離されての敗戦となった。

「昨日はチームとしてディフェンスができなかったので、今日の修正ポイントとして掲げて臨みました。91失点で、3ポイントも決められてしまいましたが、昨日のありえないようなディフェンスに比べると修正ができたと思います」と話す通り、要所では、強度の高いディフェンスはできていた。

しかし、多くの時間でミスから群馬に得点を献上してしまった。「ターンオーバーからの失点とセカンドチャンスを合わせて42点を失ってしまいました。そこはポイントガードとして今後、責任を持ってやっていきます」

3試合連続で先発を担い、この試合では根本大とともにフレッシュなバックコートコンビを組んだ。「試合の入りは、そこまで悪くなかったと思います。3クォーターの入りに連続でやられてしまい、この点差になってしまいました。そういった要所でしっかりと引き締めてプレーをしないといけないです」

湧川の登録ポジションはポイントガードだが、プロ3年目を迎えるキャリアの中では他のメインポイントガードと併用されることが多かった。ポイントガードとしては、まだまだ課題はあるがその分、伸びしろも多い。

この試合では時間帯によって1人でポイントガードを任され、プレーメークやゲームコントロールで力も発揮する場面もあり、得点面でも貢献。第2クォーターの序盤にはプットバックでバスケット・カウントを奪い、点差が広がり出した嫌な時間帯でも3ポイントシュートを沈めるなど、群馬の流れを断ち切るプレーもあった。

その活躍の裏には、欠場中のエースガード佐々木隆成からの助言があったと明かす。「昨日、隆成さんに流れが良くない時やチームとして得点できていない時にどうすれば良いかを聞きました。『同じテンポではなく、アクセントをつけてやった方が良いよ』とアドバイスをもらって、相手の流れを切るプレーに繋がりました」

「チャンピオンシップ進出や優勝は目標として変わらない」

湧川は、この試合で25分2秒コートに立った。前日のゲーム1でも24分36秒の出場で、2試合続けてシーズン最長出場時間を更新した。両日ともチーム内の日本人選手最長の出場時間であることからも、湧川にかかる期待が大きいことが分かる。

三遠の大野篤史ヘッドコーチは湧川を戦力として信頼した上で、さらなるステップアップを望んでいる。「彼は良いところもたくさんありますが、今日はターンオーバーもあり、これを学びにしなければいけません。何が足りないのかコーチ陣が提案するのではなく『まず自分で考えてほしい』と彼には伝えています。よく考えるようになったと思いますし、良くなってきているので、この歩みを止めないでほしいです」

湧川も大野ヘッドコーチの期待に応えられるように前を向いている。「自分ができていないところにフォーカスをして試合を見返すようになり、自分で課題を見つけてステップアップに繋げるように意識をしています。今日できていることもあるので、マイナスに捉えすぎにやっていければと」

三遠は佐々木が再び戦線離脱し、今節では吉井裕鷹が欠場と、なかなか戦力が揃わない状況が続く。だからこそ湧川は今の役割に責任を感じて向き合っている。「隆成さんがケガで出場できない分、自分が出させてもらっているので、ここで成長しないとチャンスがないと思ってやっています」

そして、今後チームが浮上するためには何が必要となるか湧川に聞いた。「コーチ陣がスカウティングしてくれている中で、自分たちがプレーを遂行しきれていないのが勝てていない原因だと思います。一人ひとりが遂行した上で初めて、自分たちの良さが出せます。今はそこが欠けてしまっているので、次に向けて高めていかなくてはいけません」

優勝候補と目されながらも、ここまでは想像しなかった苦境にいる。しかし、21歳でチームを背負っている湧川は決して下を向くことなく、ここからの逆襲を誓う。「シーズンの半分が終わるところですが、チャンピオンシップ進出や優勝は目標として変わらずにチーム全体で戦っていきます。あきらめずに応援に応えられるようなバスケットをやっていきます」

高校卒業と同時にプロの世界に飛び込み、成長を求めて三遠の門を叩いた。チームの状況から重責と向き合う日々は続くが、いま苦しんだ分、報われる日は必ず来る。湧川の歩みが、三遠の未来を切り拓いていく。