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2026.02.28

ベテランとなった菊地祥平がアルバルク東京でプレーする理由「もう一度優勝を狙えるチームで、若手と一緒にやりたい」

  • バスケット・カウント

準備を怠らないベテランとしての姿勢

「聞こえないんですよ。全く聞こえなくて、今日も」

B1第23節、佐賀バルーナーズと対戦したアルバルク東京の菊地祥平は、ゲーム2の残り1分14秒で放った3ポイントシュートがリングに吸い込まれた瞬間に湧き上がった歓声を、このように振り返った。

観客だけでなくチームメート、さらにスタッフをも興奮の渦に巻き込み、会場の盛り上がりを最高潮にまで導いた。41歳のスモールフォワードは、限られたプレータイムの中で勝負の世界に没入していたが、感謝の気持ちは忘れていない。「ベンチでみんなが喜んでくれているのは本当にありがたいですし、うれしいことです。スタッフも含めて良いチームメートに支えられてるなと感じています」

菊地はケガ人が続出したチームにあっても平均出場時間は1.55分に留まっており、試合に絡むことは少ない。それでも、デイニアス・アドマイティスヘッドコーチは「祥平はコート上で何をすべきか、何が正しいかをすべて理解しているベテランです。彼らがローテーションに入ってくれる数分間は非常に重要です」と、短いプレータイムでチームを正しい方向へ導くベテランとして信頼を置いている。

「コート上で何をすべきか」。ガベージタイムと言われる時間帯であっても高い集中力を持ってコートに入り、簡単ではないファーストシュートの3ポイントシュートをしっかり決めきることもその一つだろう。長年にわたって積み重ねられた準備がそれを可能にしている。

菊地はプレータイムがなかった試合の後にコートに戻り、シューティングを行う。本来であれば試合が続く中で練習の運動量を減らすのがスタンダードだが、菊地は言う。「普段もそんなに試合に出ることがないので、周りの選手よりも運動量が少なくなってしまいます。みんながセーブしてるところで、逆にちょっと追い込んで試合の準備します」。そういった日々の努力が、このシュートを生んだ。だからこそ、コンディション維持をサポートしてくれるスタッフにも感謝の言葉が自然と出てくるのだ。

「『いやらしさ』というものを伝えていけたら」

菊地は東芝ブレイブサンダース(現川崎ブレイブサンダース)でキャリアをスタートさせ、2013-14シーズンにトヨタ自動車アルバルク東京(現A東京)に加入。リーグ連覇を成し遂げた時は主力として活躍した。その後、一度はA東京を離れて越谷アルファーズでプレーしたが、2024-25シーズンに潤沢なロスターを揃え、プレータイムが限られることが想定されるA東京に復帰してプレーを続けている。菊地はその理由を「もう一度優勝を狙えるチームで、若手と一緒にやりたいから」と語った。

「若手と一緒にやりたい」という言葉には、自身の経験を彼らに還元し、さらにレベルを押し上げたいという思いが含まれている。例えば小酒部泰暉は身体能力に恵まれ、どんなエースプレーヤーでもマッチアップが可能な選手で、菊地も「日本トップレベルのディフェンダー」と彼を評しているが、まだまだ伸びしろはある。「僕は僕なりにやってきたものがあるので、ベテランの『いやらしさ』を伝えていきたい」と話す。

菊地は大学時代はスコアラーとしても活躍し、社会人になってからは屈強な肉体を武器にディフェンス面での評価を上げていた。ただ単にディフェンスが上手いだけでなく、本人が話すように相手がストレスを感じる『いやらしさ』がある。審判のジャッジの線引きを見抜く力があり、笛が鳴らないぎりぎりのラインで攻め立てる狡猾さでトップディフェンダーとして相手チームから嫌がられる存在だった。

「具体的に言うと、今の外国籍選手のレベルは高く、日本人選手の得点能力も上がっています。試合の出だしで気持ち良くさせるとその試合は、ずっと気持ちの良いままになってしまうので、試合のスタートや交代で入ってきたタイミングでいかに調子を乗らせないというのが重要です」

ケガ人が続出しているA東京では、ウイングの小酒部がゲームコントロールを担ったり、ザック・バランスキーがインサイドで身体を張ったりといった状況が少なくない。「今はガードで小酒部、ウイングで安藤(周人)というラインナップもあるので、彼らが頭を使って相手をイラつかせることができると、もうちょっと戦いやすさが出てくるのかなと思っています」と菊地は話す。

天皇杯優勝に続き、前回2連敗を喫した佐賀に今回はリベンジを遂げ、チームはバイウィーク突入前に東地区2位へと浮上した。チームの成長についても確かな手応えを感じている。「天皇杯からは本当にチームとしての結束力が上がっていて、自分の仕事をただやるのではなくて、チームに対してプラスになるように自分の仕事を各々が遂行する力が上がったと思います。『こういうチームが優勝するんだな』と実感しています」

試合で多く輝くことは難しいだろうが、我々が見ることのできない練習やロッカールームでの言動は、これから伸び盛りである若手プレーヤーにとっての教科書に違いない。「若手と一緒に」、彼のチャレンジはこれからも続いていく。