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【佐々木クリスが聞く】後編 東地区優勝の宇都宮ブレックス、遠藤祐亮「僕たちが一番チャレンジャー精神で」

2024.05.10

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【(C) B.LEAGUE】

宇都宮ブレックス一筋のキャリアを送る遠藤祐亮は、ブレックスメンタリティを体現する選手の一人として活躍し続けてきたが、今シーズンはリーダーシップをより意識したと語る。面白いのは、チームを最優先で考えながらも彼の3Pシュートの数字がチームの勝利に直結していることだ。

佐々ヘッドコーチが断言「優勝するならニュービルと慎じゃない」

──レギュラーシーズンで良い戦いができたことを踏まえて、チャンピオンシップを勝ち抜いて優勝をつかむために、佐々ヘッドコーチが必要だと思うことは何ですか?

やっぱり初戦の入り方が大事になります。去年の千葉ジェッツがファイナルであまり良くなかったのは、あの日だけではないと思っていて、チャンピオンシップの初戦で広島に負けたんですよ。その直前にはウチにも負けています。強いからそれでも勝てるのですが、入り方が良くなかった影響はいずれ出てくる。勢いとか流れを最初からつかみに行くのはすごく大事だと思います。逆に言うと2年前に僕らが優勝できたのは、千葉ジェッツとの1試合目の勝利で勢いに乗ったことが大きかった。今年で言えば、千葉ジェッツがワイルドカードですから、ここがファイナルだと思って来ますよ。そこでウチがつまずくようだと、たとえここは勝ち上がってももう終わりです。今年はどこも強いですから、どこがどうやって初戦で自信と勢いを作れるか。あともう一つずっと言っているのは、優勝するならニュービルと慎じゃないですよ。

──それはどういうことですか?

優勝するならここでもう一人出てくること。ファイナルMVPになるのが遠藤なのか鵤なのか渡邉なのか公輔なのかギャビンなのかアイザックなのか分かりませんが、このあたりの選手が取るような状況が必要だと思います。

──去年のファイナルMVPはコー・フリッピン選手でした。あれはすごかったですね。

フリッピンがMVPを取ると誰が予想できたか。チャンピオンシップって誰かが流れをつかみ取らなきゃならなくて、レギュラーシーズンで(3P成功率が)20%台だった選手がそれをやる世界です。だからこそクォーターファイナルの1試合目からどれだけの勢いでやれるのか。それと同時に相手チームに「お祭り男」みたいな選手を出させないのも大事です。だからスカウティングはもちろんするけど、チャンピオンシップでは当てにはしません。「捨てる選手」は誰も作りません。

「今までよりもリーダーシップを取るようになりました」

【(C) B.LEAGUE】

──東地区優勝、あらためておめでとうございます。去年の悔しさもあったと思いますが、リーグ最高勝率も達成というシーズンを遠藤選手はどう振り返りますか?

昨シーズンはチャンピオンシップに出るような上位チームに全然勝てなかったのですが、今回はそういうチームに勝つことができたし、その中で2連敗しない自分たちの修正力も良かったです。できなかった部分をすぐに修正するのはリーグ戦ですごく大切で、みんなのコミュニケーションが取れてそれを体現できました。

──連敗をしないことは、プロの世界では「勝者のメンタリティ」として語られます。遠藤選手がその部分をどう大事にしているか、プライドにかかわってくる部分なのかを教えてください。

ただ単に同じ相手に負けるのはカッコ良いことではないですよね。みんなが共通してそういう気持ちの強さを持っていたし、コーチ陣が毎試合で良いスカウティングをして、良い部分と悪い部分を見せてくれるんですけど、そこから修正しようとする姿勢が良かったです。ニュービルや比江島がそれをやると、やっぱりチームに良い影響を与えてくれます。チームを引っ張る存在である2人が、コーチ陣の指示をこなそうと謙虚にプレーしてくれました。それに加えて全員の「絶対に勝つ」という気持ちの強さが、この連敗をしないことに繋がったと思います。

──遂行力の高い選手がいるのはもちろんですけど、競争心の強い選手もたくさんいる中で、遠藤選手から見てブレックスで一番のコンペティター、競争心の激しい選手は誰ですか?

ニュービルですね。練習中に僕がディフェンスに付くことが多いんですけど、そこで激しく当たってきます。それが練習でここまで激しくやることがないぐらいの強度で、それをやられると自分も「やるぞ」という気持ちになるし、それが練習の質の高さに繋がりました。プロだから当たり前なんですけど、これまではそこまでのレベルでやる機会がなかったので、僕も若手も良い刺激になったと思います。

──チームが成功を収める中で、遠藤選手が個人として自分の存在意義を出しにいった部分はありますか?

個人的には今までよりもリーダーシップを取るようになりました。スタートで出るメンバーで誰がやるかと考えたら自分だという気持ちもあったし、コーチ陣から求められることも多かったので。今シーズンは特に自分が何点取るか、どれだけ活躍するかより、チームがどういう状況に置かれていて、そこでどんな言葉を掛けるか、どんなプレーが必要かを考えるようになりました。

「自分が良いスペースを取り続けていれば──」

──ニュービル選手と比江島選手、これだけのボールハンドラーがいるブレックスはB.LEAGUE屈指のピック&ロールチームになったと思うんですけど、それはスペーシングなしには達成できなかったとも思います。その中で今シーズンの遠藤選手は、3Pシュートを2本以上決めた試合で34勝4敗、僕がさらに好きなのは3Pシュート5アテンプト以上が37試合あって1敗しかしていないんですよ。遠藤選手が打つことにすごく意義がある、遠藤選手にシュートの機会が回ってくることがチームのダイナミックさを物語っていると感じました。

その数字は初めて聞いたので「ああ、そうなんだ」と思っていますけど(笑)、やっぱりニュービルと比江島の2人がいるからこそ、スペーシングを意識していればキャッチ&シュートの場面が多くなって、それが自分の成功率に繋がっています。それに自分がディフェンスしていると想定すると「絶対そこに目線が行くだろうな」という方向に相手の目線が向くので、自分が良いスペースを取り続けていれば、たとえそこにパスが出てこなくてもピック&ロールのユーザーが楽に得点できたり、ポケットパスでインサイドで得点できたりの場面がシーズンを通して多かったと思います。

──しかも、3Pシュートを決められる遠藤選手がスクリーンを掛けるプレーもチームのダイナミックさに繋がっていたと思います。

そうですね。スクリーンは自分の強みだと思っているし、インサイド陣にスクリーンを掛けることが多かったんですけど、その後に仲間が決めたり自分がノーマークになれたり、自分の強みをより活かせたシーズンだったという感覚があります。

──少し意地悪な質問になるかもしれませんが、チャンピオンシップでは3Pシュートとリバウンドのどちらが大事だと思いますか?

リバウンドだと思います。今、NBAのプレーオフを見ていますけど、どのチームもスター選手がリバウンドに飛び込んでいるイメージですよね。ウチは一番多く勝ったチームですが、チャンピオンシップになればゼロからなので。2年前の優勝は千葉ジェッツが同じような状況で自分たちに負けています。そういう経験があるので相手がどういう気持ちで向かってくるかも分かるし、その気持ちを自分たちこそ出していければ優勝に近付けると分かっています。田臥(勇太)さんはいつもチャレンジャー精神と言うのですが、昨シーズンのチャンピオンシップに出ていない僕たちが一番チャレンジャー精神を出さなきゃいけない。そこさえ出せれば全員が良いパフォーマンスを出せると思っています。

編集協力:鈴木健一郎

佐々木クリスプロフィール

 

ニューヨーク生まれ、東京育ち。青山学院大学在籍時に大学日本一を経験。bjリーグ時代の千葉ジェッツ、東京サンレーヴスでプロ選手として活動したのち、2013年よりNBAアナリストとしてNBAの中継解説をスタートさせる。2017年よりBリーグ公認アナリストとしてNHK、民放各局などでBリーグ中継の解説を務める傍ら子供達を指導する『えいごdeバスケ』を主宰。日本バスケットボール協会C級コーチライセンスを保有。著書に「Bリーグ超解説 リアルバスケ観戦がもっと楽しくなるTIPS50」「NBAバスケ超分析~語りたくなる50の新常識~」がある。

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