「りそなグループ B.LEAGUE FINALS 2024-25 GAME3試合後会見」比江島の一撃でV掴んだ宇都宮/琉球は4年連続ファイナルに誇り

【(C) B.LEAGUE】
宇都宮ブレックスが語る「信じ合う力」、ケビン・ブラスウェルHCへの思い胸に
5月27日、「りそなグループ B.LEAGUE FINALS 2024-25」GAME3が横浜アリーナで開催され、宇都宮ブレックスが73-71で琉球ゴールデンキングスを下し、3年ぶり3度目のBリーグ王座に輝いた。琉球が先にリードを作った試合、宇都宮はじりじりと差を詰めると4Qに追いつき、比江島慎選手の3Pシュートで逆転。最後まで粘る琉球を退け、亡きケビン・ブラスウェルHCへの思いを胸に頂点へと駆け上がった。一方の琉球も4年連続のファイナル進出という偉業を果たし、若手の成長とチーム力の進化を示した。本記事では、試合後の会見から両チームの声を届ける。
宇都宮ブレックス
比江島「ケビンが築き上げてくれたスタイルで優勝できて本当にうれしかった」

【(C) B.LEAGUE】
――試合の感想をお願いします。
コロネルHC代行「まず琉球の皆さん、4年連続でのファイナル進出、本当におめでとうございます。4年連続で成し遂げるというのは、本当に驚くべきことで、その大変さは私たちもよく分かっています。そんな手強い相手を乗り越えて勝てたことは、私たちにとっても大きな達成だと感じています。今日はなかなか自分たちの流れにならなかったし、いろいろなことがうまくいっていませんでした。でも、粘り強く戦い続けました。いくつかターンオーバーも奪って試合に踏みとどまり、最後にはようやくシュートが決まるようになって、勝利をつかむことができました。」
D.J・ニュービル「素晴らしい試合でした。本当に激しい競り合いのゲームだったと思います。両チームともチャンピオンシップの最終戦に向けて、持てるすべてを出し切ったと思います。そして僕は自分たちのチーム、コーチングスタッフ、そしてこの優勝という目標のためにすべてを注いできた全ての人たちを心から誇りに思っています。ジーコ(ジーコ・コロネルHC代行)も言っていましたが、僕たちの"粘り強さ"や"あきらめない姿勢"が、試合の流れが悪い時間帯でも素晴らしいバスケに繋がりました。僕たちは最後まで団結し、お互いを信じ続けた結果、勝利をつかむことができました。」
比江島「本当に苦しい試合展開でした。前半は我慢して付いていって、後半も正直なかなかいいリズムでいけない時もあったし、自分も迷惑をかけていましたが、最後にチームを助けることができてよかったと思います。僕のために、チームとしてサポートしてくれたことに感謝しています。相手のディフェンスが素晴らしかったんですが、全員で勝ち取った優勝だと思います。」
――コロネルHC代行に質問です。4Qは素晴らしい10分間でした。ターンオーバーについて触れていましたが、戦術的にどんなところが逆転勝利につながったと考えますか?
コロネルHC代行「僕たちが苦しんでいた試合の序盤はターンオーバーが多かったです。でも、(4Qでは)そのターンオーバーが逆に僕たちを試合に踏みとどまらせてくれて、なんとか食らいついていくことができました。だから試合を射程圏内に保てたんです。まだ映像を見返していませんが、4Q、いい戦いができた要因は、ここにいる選手(ニュービル選手、比江島選手)です。2日前に『彼(比江島)がやってくれる』と言いましたよね? 少し焦らされましたけど、彼は4Qだけで14得点、5本すべてのシュートを成功させました。だから僕たちは彼を"コービー(・ブライアント/元レイカーズ)"と呼ぶんです。必要なときに、必ず結果を出してくれるのです。」

【(C) B.LEAGUE】
――ニュービル選手にお伺いします。4Q残り1分15秒の逆転3Pシュートを振り返って下さい。
ニュービル選手「しばらくの間は、点の取り合いが続き、僕たちは相手のリードを少しずつ削っていく展開でした。そんな中で、コーチがボールを僕に託してくれて、チームメイトたちも僕を信じてくれました。これは、今シーズンずっと僕たちがやってきたことです。お互いを信じ合い、特に一番大事な場面で支え合ってきたんです。ジーコも言っていましたが、今シーズンは大きなビハインドから逆転した試合が何度もあります。僕たちは自分たちの努力を信じていたし、ジーコはいつも言っていたんです『去年はその努力が足りなかった』って。だからこそ、この最大の舞台であのシュートを決められたのは、本当に魔法のような瞬間でした。」
――比江島選手に質問です。4Qは5本すべてのシュートを決めました。オンコートインタビューでは「追い込まれないと…」とおっしゃっていましたが、どんな気持ちで4Qに臨んだのでしょうか?
比江島「点差が点差だったので調子悪いとかは考えずに、ただがむしゃらにリングだけを見て踏み切ろうと切り替えました。そのメンタルがGAME1から持てれば、チームを楽に勝たせることができたのかもしれないですが。自分のことを信じて使ってくれたジーコもそうですし、チームメイトも自分のためにスクリーンやスペーシングを頑張ってくれて、チームメイトのためにという思いとケビン(・ケビン・ブラスウェルHC)のためにという想いいをもう一回、4Qに想い返しながらプレーをしました。」
――比江島選手に質問です。ギャビン・エドワーズ選手とは2016-17シーズンに三河で一緒にプレーしています。どんな存在でしょうか?
比江島「当時から彼との相性はいいという感触がありました。多分、彼もその感触があると思います。ピック&ロールをした後、ポップするのかダイブするのかという判断や合わせのタイミングは合っているし信じてプレーできます。しっかりズレを作ってくれるので、アシストや3Pシュートの数字も伸びたというところはあると思います。」
――コロネルHC代行に質問です。ケビン・ブラスウェルHCが入院されて、代行HCとしての初めての試合が琉球戦でした。そして最後の相手も琉球ということをどんな風に思いますか?
コロネルHC代行「最初にケビンが昏睡状態になったと聞いたときは、すぐに回復して戻ってきてくれることを願っていました。その時はチームを"守る者"として、彼が戻ってくるまでの間、物事を前に進め続けることでした。でも、時間が経つにつれて、少なくとも今シーズン中に彼が戻ってくるのは難しいという現実が見えてきました。そして最終的には、彼は"精神的に"僕たちと共にあるんだということを受け入れるようになりました。僕が感じたのは、選手たちに"ケア"と"支え"が必要だということです。もちろん、コーチングも必要だし、『ここを改善しよう』と伝える場面も必要でした。でもこの状況では、チームの"心の健康"を一番に考えるべきだと思いました。そこから少しずつ、『具体的に何を改善すべきか』『もっと良くならなければならない場面』についても話していくようになりましたが、それでも基本は"お互い支え合う集団"であり続けたと思います。これは自分自身にとっても大きな学びでした。どれだけ僕たちがお互いを想いやってきたか、そしてその支え合いがどれほどチームに力を与えてきたか、本当に実感しています。」

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――比江島選手に質問です。逆転3Pシュートを決めた時、竹内公輔選手が松脇(圭志)選手をスクリーンで止めていました。3年前の優勝の際も遠藤(祐亮)選手が同じようにしていました。そのシーンについてコメントをお願いします。
比江島「僕らはカルチャーとして、昔からチームメイトのために犠牲を払い、スクリーンをかけてというのは根付いていますし、ブレックスはそういう選手を育てていると思います。逆にそういう精神がないと優勝はできないと思うし、3度チャンピオンになっているわけなので、非常に重要だと思いますし、それだけバスケIQが高い選手が揃っていると思います。あのシーンは、フォーメーションではなく瞬時の判断だと思いますが、判断したDJも素晴らしかったと思います。」
――比江島選手にお伺いします。今日の試合前、最後までシューティングをされていました。どんな気持ちだったのかと、優勝の瞬間、何度も上を見上げていました。おそらくケビンHCに向けての思いだったと思いますが、どんなことを伝えたかったでしょうか?
比江島「ファンの方がいる状況で、一回シュートを打ちたい気持ちと会場の雰囲気も確かめながら打ちたいという状況でした。優勝が決まった瞬間については、最後、僕の3Pシュートも多分、ケビンが後押ししてくれたと信じています。(ケヴェ・)アルマ選手の最後のフリースローもケビンが少しプレッシャーかけてくれたのかなと思っていました。ケビンが築き上げてくれたスタイルで優勝できて本当にうれしかったので、感謝の気持ちを伝えました。もちろんジーコも、個性豊かなブレックスを守るのは、本当に難しかったと思いますし、敬意を表したい。そういったところも含めて、感謝の気持ちを伝えました。」
琉球ゴールデンキングス
勝ち負けを超え、沖縄にエネルギーを届ける存在でありたい

【(C) B.LEAGUE】
――桶谷大HCにお伺いします。試合全体を振り返っての感想をお願いします。
桶谷HC「前半は自分たちのペースで良いバスケができたし、プランも悪くなかったと思います。3Qになって、点差が開いていた前半から危惧していたターンオーバーで得点が止まって、そこを宇都宮さんに狙われた感じですね。最後はやはり3Pシュート。一番ケアしなければいけない2人に決められました。あの場面で決めた宇都宮の選手を褒めるべきかなと思います。自分たちは色々なことがあった中で、ここまで来てよく戦ったと思います。もちろん、目の前に優勝がちらついたシーンもありました。最後に宇都宮があそこで3Pシュートを決めたというところを褒めたいですね。」
――松脇(圭志)選手、小野寺(祥太)選手に質問です。それぞれお伺いします。前半素晴らしい3Pシュートも決められていましたが、勝負の4Qではどのような思いでプレーしていましたか?
松脇「シュートタッチは比較的良かったんですが、4Qはシュートというよりもディフェンスをやるべきだと考えていました。"たられば"ですが、もう少しあそこで声かけできれば、というところは悔いが残ります。」
小野寺「僕も出だしからシュートタッチが良かったです。けど、試合を通して3Pシュートを許してはいけないという中で、コミュニケーションがうまくいかず、ギャップを作ってシュートを打たれ、ビッグショットを決められてしまいました。松脇さんと同じですけど、どこでやられてはいけないといったコミュニケーション、危機感がチームとして少し足りなかったのかなっていうのは感じています。」
――桶谷HCにお伺いします。ファイナルまでチームの1年間の戦いをどう評価しますか?
桶谷HC「最後に結果を残したかったですけどね。とはいえシーズンを通して大成功だと思います。それぞれが持ち味を出して、役割をしっかり担ってプレーしてくれました。みんながそれぞれ成長するチームになったと感じます。優勝できるのは1チームのみ。悔しさはありますが、みんなが本当によくやってくれたし、ここまで来られたのは、みんなのおかげです。」

【(C) B.LEAGUE】
――小野寺選手に質問です。今季はキャプテンとなり、ディフェンス職人という立ち位置からオフェンスでもけん引していたかと思います。シーズンを振り返っての手応え、達成感を教えてください。
小野寺「今シーズン、ヴィック・ローに代わってキャプテンをやらせてもらいました。自分は言葉で鼓舞して引っ張るタイプではなく、ディフェンスで引っ張るタイプだと考えていて、要所はできていたのかなと思います。うちのチームは脇(真大)選手をはじめ、1人1人がコミュニケーションできるからこそ、いいチームを作れたのかなというのを感じています。」
――桶谷HCにお伺いします。小野寺選手は、高卒で岩手に入った頃からのお知り合いです。10年以上経って、成長ぶりをどう感じますか?
桶谷HC「今はディフェンスのスペシャリストになっていますが、昔は細いイメージでアウトサイドのシュートも打てるようなタイプではなくて、スラッシャータイプだったんです。けど、今は体も大きくなりフットワークも良くなってスリー&ディフェンスの選手になっているということに、大きな成長を感じます。特にいいなと感じるのは、点数を取るだけではなくて、オンコートでもオフコートでも、どうやったら勝てるかを常に考えながらやってくれているところです。そこは成長しているという表現ではなくて、キングスにとって必要不可欠な存在になっていると思います。」
――小野寺選手に質問です。昨季からメンバーが変わった中で、天皇杯を取り、Bリーグでもファイナルに進出とどのチームよりも長く戦ってきました。あと一歩優勝に届かなかったという中で、どんな感情が生まれたでしょうか?
小野寺「率直に、このチームで優勝したかったなと強く感じました。なぜかというと、シーズンを戦う中で僕らは誰かに頼るのではなく、日替わりでヒーローが出るチームだと思っていました。レギュラーシーズンを勝ち進んできて、例えば荒川(颯)選手がXファクターになったりして、チームとして戦ってきました。このチームで優勝したかったなというのが率直な感情です。」
――桶谷HCに質問です。GAME2のあと、ファンに言及されていて、GAME3も大きなエールがあったと思います。優勝には届きませんでしたが、この結果をどのようにファンに報告したいでしょうか?
桶谷HC「やはりファン・ブースターの皆さんの声があってこその今日のゲームだったと思いますので、感謝したいですね。キングスは総合力のチームだと思っているので、これからもまた一緒に一丸となって、沖縄のためにもキングスを、もっともっと強いチームにできたらなと思います。もちろん、僕たちも頑張りますし、ファンの皆さんも一緒に支えていただけたらなと思います。」

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――皆さんに質問です。天皇杯でも連続して決勝に進出し、4年連続でファイナルに進出しました。シーズンの最後までバスケができたということについて、どのようにお考えでしょうか?
桶谷HC「勝ち負けがあるというのは、残念だなと思いますが、僕たちの存在意義は、このシーズン通して僕たちの試合を見てくれたファンの皆様や地域の皆様のエネルギーになったり、子供たちがキングスに入りたいと思ってくれたりなど、沖縄のために何かをしたいと思ってくれることです。僕たちはそれこそが一番必要なことだと思っているので、見えない部分ですが、そういう影響を与えられたら素晴らしいと思っています。勝ち負け以上のもの、地域への力、エネルギーを与えられたならいいですね。」
松脇「シーズン序盤は11人で始まりました。その中で天皇杯もそうですし、レギュラーシーズンでもファイナルに行くというのは、すごいことだと思います。そういう意味でこの舞台にいられることが誇れることですし、チームとしてやってきてよかったと感じます。もちろん優勝したかったというのは本音ですけど、いい方向に進んでいると思います。」
小野寺「先ほどと重なりますが、このメンバーで優勝したかったなという思いですね。その中でも平日にかかわらず、沖縄からもキングスファン・ブースターに来てもらって、優勝して沖縄に元気を与えることができたらいいなというのを考えて戦っていました。今後もその気持ちで頑張っていきたいと思います。」
――桶谷HCにお伺いします。毎年、一人ひとり、そしてチームをステップアップさせて戦っています。今季は特に11人でスタートし、脇(真大)選手や荒川(颯)選手など、若い選手が最終的に活躍しました。その手応えはいかがでしょうか?
桶谷HC「先程、祥太(小野寺選手)も言ってくれたんですけど、ルーキーの脇もそうですし、彰吾(平良選手)らも途中で入ってくれました。今シーズンはケガ人が多くて、脳しんとうになったり、病気もあったり、そういう中で崩れることなく、若い選手が成長したことでビルディングすることができたと思います。今シーズンは特に選手がすごく仲良くて、佐々(宜央AC)のおかげでやることも明確で、みんなが理解していい形でコミュニケーションが取れるようになってきました。それもあって粘り強く最後までバスケできたのかなと思います。個が強くてもチームとしてまとまらなければ力が発揮できないということは感じましたね。どのチームでもこれを目指していて、毎年これができるということではないんだけど、今シーズン、それができるメンバーとバスケができたことに感謝したいですね。」
――脇選手が小野寺選手や岸本隆一選手など先輩方からヘッドダウンするなと言葉をもらっていたと言っていました。小野寺選手は、若手とどんな関わりを持っていましたか?
小野寺「まだ若いので、試合の中で気持ちを顔に出すところがあって、いかに次のプレーに集中するかが大切なので声かけをしました。それに気持ちが顔に出ていたら相手も仕掛けてくるので、メンタル的にしっかりできるよう、声をかけました。」
――桶谷HCにお伺いします。2月、千葉ジェッツ戦で負けた際に「アンダードッグなのに、上位といい試合をしなきゃいけないと思ってないか?」という話をしていました。岸本選手が不在の中、脇選手がハンドラーになったり、荒川選手がXファクターになったり、アンダードッグたる戦いを展開しました。そういった戦い方ができた理由はありますか?
桶谷HC「指導者は偉そうにしたらあかんと思うんです。自分はコーチをしているのではなく、環境を与えて、その後選手やスタッフがどう行動するかということだと思っています。僕が何かをしたとかではなくて、そういう空気を選手やスタッフが感じ取って、アンダードッグ的な戦いができるようになったんだと理解しています。自分たちはもっと泥臭くしなければいけないんじゃないか?プリティじゃなくていいんじゃないか? と考えています。」