2025.10.02
「バスケから離れた」リフレッシュのオフを経て、比江島慎と宇都宮ブレックスのシーズンがいよいよ明日開幕
「初戦から新しいアリーナで試合ができるのは光栄なことだと思いますし、単純に自分自身にとっても楽しみなゲームになると思っています。ただ、向こうのモチベーションはすごく高いだろうし、アルバルクはディフェンスがすごく堅いフィジカルなチームでもあるので、そこはチーム全員で連動して崩していかないと崩せないと思います。最初に自分からアタックして、少しでもズレを作った状況で相手のディフェンスを崩していければいいなと思っているので。一人では無理かもしれないですけど、チームで連動すればチャンスは生まれると思うので、そこを意識して戦いたい」
こう語ったのは比江島慎だ。
昨季のA東京とのシリーズは1勝1敗の引き分け。比江島の言葉どおり、互いにフィジカルなディフェンスの応酬となり、1戦目が63-61でA東京の勝利。2戦目はさらにロースコアな61-55の熱戦を宇都宮が制している。
宇都宮は昨季からの継続路線を選び、ハイペースで3Pシュートを積極的に狙う戦術も大きくは変わらない。ディフェンスでも、昨季のチャンピオンシップで採用したバックコートからのプレッシャーディフェンスをシーズンを通して継続していく旨を、ジーコ・コロネルHCが明かしている。一方でA東京は明確にオフェンスのペースアップをコンセプトに掲げ、それに対応する新たなメンバーをそろえた。つまり、昨季の対戦とは違った点の取り合いが展開される可能性も少なからずあるわけだ。先出しの開幕戦とあって注目度も高く、どんな試合展開になるのかは今季の両クラブを占う意味でも非常に興味深い。


初めての代表活動がない夏を経て
比江島個人に目を向けると、今季はBリーグの前身のNBL時代を含めて初めて、「日本代表活動がない夏」だった。Bリーグの昨季終了後にはドバイで開催されたBCL asiaに出場し、9月にもシンガポールでFIBAインターコンチネンタルカップに臨むなど、長いオフを過ごしたかと言われればそうではない。ただ、自身の体と宇都宮のことのみに集中できた束の間の休息は、比江島に新たな気付きを与えた。「代表がないオフは初めての経験だったので、バスケから離れて一切何もしない状況を作りました。しっかりと体の痛いところやケガがあったところも治せました。でも、バスケの体に戻す、バスケの感覚を取り戻すのは結構難しかったなと思います。もう少しバスケをやりながら体作りができていければ良かったなとも思っているので、そこはまた調整しながらやっていかないといけません。代表があると体はキツいですが、その分、(次のシーズンに)スムーズに入っていけるというメリットもあったので、そこを今後どうやっていくのかは課題かなと思います」
この夏で35歳になった比江島は常々、代表活動の引き際に関するコメントを残してきた。まだそれが決まったわけではないが、遠くない未来に日本代表を退いたとき、「日本代表活動がない夏」を過ごせた経験が彼のキャリアにプラスに働くことになるかもしれない。


話題をシーズン開幕に戻すと、彼のモチベーションはBリーグ制覇のほかに2つある。一つが天皇杯を取ること、そしてもう一つが東アジアスーパーリーグ(EASL)で優勝することだ。この2つのタイトルは、リーグ制覇2回にシーズンMVP受賞などの数々の功績を残してきた比江島をもってしても、成し得たことのないものだ。
比江島は「今季はBリーグ10年目の節目で、ブレックスとしても連覇はしたことがないです。それにEASLと天皇杯も取ったことありません。そういったタイトルを取っていければ、また新しい歴史を作れると思っているので、そこにチャレンジしていきたい」と意気込んだ。特に、海外勢との対戦が続くEASLについては、若手の成長機会にもなるとモチベーションは高い。「優勝したいのは当たり前ですけど、若手にとっては世界につながっていく大事な経験を得られる大会になるだろうと思っているので、その手助けもできればいいなと思います」
ロスターがほぼ変わらない宇都宮にとっては、昨季の高島紳司や小川敦也がそうだったように、今季も若手の成長が何よりの補強となるだろう。特に、インターコンチネンタルカップで随所に可能性を示した星川開聖と石川裕大のユース上がりの2人は、高島や小川と共に次のブレックスを担っていくことが期待される。
個人の実力は誰が見ても明らかなところまで証明してきた比江島。その経歴をさらに華やかにすべく、そしてブレックスというチームに財産を残すべく、明日からの新シーズンも変わらぬ奮闘を続けていくはずだ。

記事提供:月刊バスケットボール