明るい未来を信じて…川崎ブレイブサンダースの篠山竜青が変革の1年目を総括
クラブ初の外国籍指揮官としてロネン・ギンズブルグヘッドコーチを招へいした川崎ブレイブサンダースは「りそなグループ B.LEAGUE 2024-25 SEASON」を中地区8位の18勝42敗で終了。旧リーグ時代に優勝経験があり、2016年以降もタイトル争いを繰り広げてきた古豪にとって、シーズン負け越しはBリーグ開幕後、初めての出来事である。
一時代を築いたニック・ファジーカス氏が現役を引退し、レギュラーシーズンMVP受賞歴を持つ藤井祐眞(群馬クレインサンダーズ)も退団。指揮官に加え、アリゼ・ジョンソンとサッシャ・キリヤ・ジョーンズもBリーグ初参戦の外国籍選手で、変革のシーズンになることは開幕前から明らかだった。
キャプテンを務めたチーム一筋の篠山竜青は、5月4日に川崎市とどろきアリーナで行われた三遠ネオフェニックスとの最終戦後にポジティブな言葉を並べた。
「開幕時と今を比べれば、絶対に『みんなが成長した』と言えると思います。チームとしても我慢強くなり、そういったところの成長をすごく感じられました。今日もチケット完売。たくさんの人が最後まで声を出して応援してくれました。シーズン終了後の挨拶では、川崎のファミリーはもちろん、三遠ブースターの方にも残っていただいて。改めて応援してくれた人に感謝したいです」
10月の9試合を2勝7敗で終えると、11月下旬から12月にかけて10連敗。それでも、米須玲音、山内ジャヘル琉人の加入という明るい話題もあり、シーズン終盤には琉球ゴールデンキングスやアルバルク東京といった上位陣とも接戦を繰り広げた。篠山はチーム内の変化について明かす。
「一番は日本人選手の積極性。シーズン序盤はどうしても外国籍選手に得点が偏り、起点も、フィニッシュも外国籍選手の形が多かったです。そこから少しずつ日本人選手のアタックが増えて、特に野﨑(零也)や飯田(遼)あたりがペイントに侵入する回数は明らかに増えたと思います。加えてジャヘル、米須が入り、彼らもチャレンジすることによって、チーム全体としてアタックメンタリティーが醸成されてきたと思います」

若い力も台頭 [写真]=B.LEAGUE
“ネノ”の愛称で親しまれる指揮官は、ファジーカス氏や藤井を中心とした昨シーズンまでのオフェンスから一転、アップテンポなバスケットボールをチームに求めた。日々のトレーニングから変化があったようで、「練習内容の中で走る距離が増えたという感じですね。常にオールコートで、走り回るような練習が多く、そのなかで求められる強度やスピードも全然違った」(篠山)。「コンディションがかなり上がった」という36歳のポイントガードにとって、新たな発見があったようだ。
「試合が楽に感じるくらいのところまでもっていけました。この年齢でネノさんのようなHCに出会い、自分の体、練習に対しての向き合い方を考え直すきっかけになり、そこを向上できたのはすごく良かったと思います。外国籍のコーチから学ぶことによって、バスケットに対していろいろな考え方があるんだ、バスケットの世界はまだまだ広いんだなと。自分のバスケット観という意味で視野が広がり、勉強になりました。自分としては充実したシーズンを送れたと思っています」
「しんどい時期はありました。連敗を止められないとか、そのなかで自分の調子が上がらずに貢献できない時もありました」とシーズン中の率直な思いを吐露したキャプテンだが、「みんなに支えられてというか、みんなで助け合ってできたと思うし、それができるメンバーだった」とチームメートを評価し、次のように続けた。
「試合になかなか出られない選手は『勝てなかったけど楽しかった』なんて言えないと思うし、言う必要もないと思うんですけど、そういうメンバーたちは本当に我慢強くチームに尽くしてくれました。そういった意味で、僕としてはすごくポジティブに1試合、1試合を戦うことができたと思います。入団1年目になかなか勝てないシーズン(2011-12シーズンの8勝34敗)を経験したことが今の自分に活きています。苦しかった1年目の経験を活かせると思えたことも良かったし、だからこそ前向きに1年間を戦えたと思います」
選手が大幅に入れ替わっても、負け込んだ状況でもホーム“とどろき”には多くの観客が駆けつけ、試合終了のブザーが鳴るまでチームを鼓舞。選手はもちろん、ファミリー一丸となってシーズンスローガン『BE BRAVE 変化に常に勇敢であれ。』を体現し続け、船出となったシーズンを戦い抜いた。

篠山自身はフリースロー成功率賞を受賞 [写真]=B.LEAGUE
取材・文=酒井伸