14年ぶりにレバンガ北海道に帰還したトーステン・ロイブルヘッドコーチ、描く新シーズンの青写真「チームに完璧は求めていません」

古巣からのオファーに「良い意味でドキドキしました」
レバンガ北海道は6月4日、トーステン・ロイブルヘッドコーチの就任記者会見を実施した。クラブ創設初年度の2011-12シーズンに初代ヘッドコーチを務めた指揮官は、14年ぶりに北海道の地に戻った理由や、先日加入が発表された富永啓生への期待、クラブのビジョンなどについて語った。
記者会見はロイブルの日本語での「皆さん、こんにちは」というあいさつからスタート。まず北海道を選んだ理由について問われると、2012年に初代ヘッドコーチとしてチームを率いた際に味わった、タレントや環境が整っていない中で『勝つチーム』を作り上げたという達成感をもう一度味わいたいという気持ちが強くなったからだと説明した。
「2012年に北海道を去ってから、母国であるドイツ、チェコ、日本国内といろいろなクラブからお話をいただきましたが、どのオファーもしっくりきませんでした。でも、今回レバンガ北海道から話があったときに、良い意味でドキドキして胸が高鳴りました」
続いてチームの展望について言及した。現状の契約選手がいずれも若いことについて触れ、「経験が少ない選手もいるかと思いますが、ハングリーでポジティブな姿勢を持っている選手ばかりですし、トップクオリティの富永選手が加入することもチームにとってプラスだと思います」とコメント。高い強度でプレーし、ディフェンスでプレッシャーを与え、全員で走る、シンプルかつエンターテインメント性の高いバスケットというビジョンを語った。
「ファンダメンタル(基礎)も大事にしていきます。日本代表で指揮をとっている時にも感じたことですが、タレント性のあるチームやサイズの大きなチームに対して苦戦するのは、パスの技術が足りないからで、それは北海道も同じだと思っています。サイズが大きいわけではないですし、タレントは豊富ではないかもしれませんが、ファンダメンタルがしっかりしていれば、タレント性やサイズに勝るチームにも勝てると信じています。オフェンスではボールの動きがカギになってくると思いますので、そこを徹底してチームを作りたいと思います」
教え子・富永は「北海道で成長してほしい」
今オフNo.1のビッグサプライズとなった富永の加入についても質問が寄せられた。U16日本代表ヘッドコーチ時代に自らが見出し、U18日本代表、3×3日本代表でも指導した『教え子』については「ここ数年足踏みをしていると思う」と率直にコメント。「彼がNBAに行くことは現実的だと思っている」「国際的に見てもオフェンスはトップレベル」と評した上で、「そこ(NBA)にたどり着くまでに成長しなければいけない要素がある。チャンスをつかむためにここ北海道で成長して、シューターとしての役割をまっとうしてもらいたい」と語った。
さらにロイブルは、自身がヘッドコーチに就任したから富永が加入したわけではないということを強調した。「チームを選ぶ上で相談を受けましたが、自分にとって一番フィットするチームを選んでほしいと伝えましたし、もしそれがレバンガでないのであれば北海道に来る必要はない、自分がヘッドコーチであろうがなかろうがキャリアにとって最適なチームに行ってほしいと伝えていました」
会見に同席した桜井良太ゼネラルマネージャーは、現役時代に指揮官に求めていたことを体現してくれる存在として、現役時代にコーチングを受け、人柄をよく知るロイブルに白羽の矢を立てたと説明。長期的な視点でクラブを着実に成長させ、2026-27シーズンから始まるBプレミアで上位争いのできる集団を作ることにフォーカスし、「ロイブルコーチと共に困難な道のりを歩んでいければと思います」と決意をあらわにした。
ロイブルも同様の考えを口にした。「ドイツ人なのでよく完璧主義なのではないかと言われるのですが、新シーズン、チームに対して完璧は求めていません。目標は、チームとして向上していくことと、しっかりと将来のために準備をしていくことです。短期の目標は完璧にプレーすることではないので、チームとしてハードワークを貫いて、フラストレーションをためずに全員で全力を尽くして、将来のために準備していくことがお伝えできる目標だと思っています」
強いクラブは一朝一夕では生まれない。長期的なビジョンで同じゴールを見据えているロイブルと桜井が作り上げるこれからの北海道に引き続き注目がかかる。