Bリーグが選手研修を実施――田渡凌選手会長(しながわシティ)、米須玲音(川崎)が語った自分たちの存在意義
Bリーグが7月29日に全選手研修と新人研修を開催。その後日本バスケットボール選手会会長の田渡凌(しながわシティバスケットボールクラブ)と米須玲音(川崎ブレイブサンダース)がメディアの取材に応じた。
全選手研修は島田慎二チェアマンから選手たちへのメッセージに始まり、Bリーグのビジネス的側面の現状のサマリー、コンプライアンスに関する注意喚起などが行われた。入場者数が10年間で約2.4倍、売り上げに至っては3.8倍と劇的に成長したBリーグ。島田チェアマンはその理由として着実に前進しているB.改革の存在を挙げ、「世界のどこにもBリーグのような成長を見せているリーグはない」と胸を張るとともに、その土台となる選手たちに、さらなる発展の力となるよう呼び掛けた。
1時間近い研修を終えて取材に応じた田渡は、「B革新に向けて選手たちもその意図をしっかり理解して取り組むことが大事。コンプライアンスに関しては、選手1人の過ちがリーグ全体にダメージを与えることも共有できてとても良かったと思います」とコメント。島田チェアマンは「選手たちが引退後に活躍できる場がまだまだ足りない」と課題も挙げたが、その点に対しては、以下のように選手会長としてのビジョンを語った。
「(引退後は)ユースのコーチングやスクールの開業など、どうしてもバスケに携わろうと考える選手が多いですが、ビジネスサイドの話を聞くことでビジョンはとても広がると思います。レバンガ北海道の折茂武彦社長や仙台89ERSの志村武彦社長のように、選手あがりで球団の顔となっている人も増えています。バスケットボールで生かされてきた人間として「コートの中の人間」で終わらず、社会でこの道が間違ってないというのを証明していくためにも、バスケットボール以外の部分で活躍できるフィールドがあれば選手としての価値もBリーグの価値も高まるんじゃないかなと思います」
2024-25シーズンに福島ファイヤーボンズで活躍した田渡(©B.LEAGUE)
学生時代にアスリートとして高いレベルで活躍した人材が、現在パートナーシップ・セールスなどビジネス面でBクラブの大きな力となっているケースも実際にある。田渡のビジョンは、単にポジションを用意してほしいというBリーグ側への要求とは違う視点から、ファンの愛情に支えられてキャリアを築き上げていく選手たちが人間力に磨きをかけて、恩返しとBリーグの発展に寄与できるような状態目標を浮かべてのものだろう。
続いて行われた新人研修では、島田チェアマンからのメッセージ、佐野正昭専務理事からのクラブのビジネスに関する説明に続いて、サポーティングカンパニーである株式会社アーシャルデザイン(本社:東京都渋谷区、代表取締役CEO:小園翔太)から元ハンドボール日本代表の東俊介氏を講師として招き、プロのアスリートが持つべき社会常識に関するレクチャーが行われた。
東氏のレクチャーは、多くのファンに活躍を見せられるプロアスリートの価値とはどんなことなのか、その価値を生み出す力は何か、社会人として果たすべき義務は何かなどのテーマで進み、応援してもらえる選手になることの意義を説く内容。アスリートには、一般的な社会人にはない形での「ファンを作る力」があることを意識し、現役のうちに引退後も含め人生を総合的にとらえ、価値を高める言動を徹底することで人間力を身に付けて末永く応援してもらえるようになることの重要性が語られた。
様々な事例を挙げながらのコンプライアンス重視の注意喚起も含め、田渡のコメントにも紐づくような長期ビジョンで人生を見つめようとの呼びかけは、若い世代のアスリートだけではなく一般社会にも通じる概念。研修終了後、米須は、これまでのBリーグにおける経験を振り返って以下のようにコメントした。
©B.LEAGUE
「試合に勝てないときが続いて自分が落ち込むことはあると思うんですけど、応援されていることをしっかり頭に入れて、試合後にコートを1周するときなども落ち込んだ顔ではなく『次は勝つところをお見せして皆さんに喜んでいただけるように』という思いで手を振ったり、1人1人に目を合わせたり、『次こそ勝てるように頑張りますので、引き続き応援よろしくお願いします』という気持ちを表現できればいいと思います」
自分たちもファンも望む結果が残せるようしっかりプレーして、結果に寄らず感謝を表現することは「言うは易し」。また、その瞬間は決して些細なものではなく、個々の選手のファンが増え、バスケットボールに対する愛情が膨らんでいく瞬間だ。米須だけではなくBリーグの選手たちが、人間力を発揮してそんな場面でどのようなコミュニケーションをとっていけるか。代表してコメントした米須の言葉にBリーグの希望が輝く。