【B1クラブ展望/三遠】「悲願の頂点へ…エースPG不在を乗り越え挑む新シーズン」
人生に「たられば」はない。だが、どうしても考えてしまう。「昨シーズンのチャンピオンシップセミファイナルGAME2でエースポイントガードの佐々木隆成が怪我をしていなかったら」と。
琉球ゴールデンキングスとのCSセミファイナル、三遠ネオフェニックスはGAME1に勝利するも、GAME2はオーバータイムの末に98-100、GAME3は69-77と激闘の末に2連敗。1勝2敗でファイナル進出を逃した。
大野篤史ヘッドコーチのもとで積み上げてきた土台に、日本代表の吉井裕鷹、元NBA選手のデイビッド・ヌワバら実力者が加わった昨シーズン。フィジカルなディフェンスからのアップテンポなオフェンスを展開し、クラブ新記録となる22連勝を達成するなど、激戦の中地区で頭一つ、二つ抜け出していた。
スタッツを見ても、平均90.8得点22.6アシスト3.9ブロック3ポイントシュート成功率35.7パーセントと4部門でリーグトップ。加えてリバウンドはリーグ2位の40.4本、スティールは同5位の7.1本と、その強さは際立っていた。だからこそ、CS敗退のショックは大きかった。
「『三遠ネオフェニックスで優勝したい。』その強い決意を持って、サインしました。」
今シーズンの契約更新時に佐々木がそうコメントしているが、他の選手も同じ気持ちなのだろう。9選手が契約を継続した。
プレシーズンに行われた『AICHI CENTRAL CUP 2025』は、佐々木を欠きながらも別格の戦い方を披露して2連覇を達成した。高確率な3ポイントシュートと献身的なプレーでチームを支えたデイビッド・ダジンスキーが退団した穴は、フィジカルとシュート力を兼備した新加入のダリアス・デイズがしっかりと埋め、さらにヤンテ・メイテンが3ポイントシュートを高確率に沈めるという“サプライズ”も。若手選手も強度の高いディフェンスで貢献し、戦力として計算が立つ存在だと示した。
プレシーズンから完成度の高さを見せつけたが、先発PGを務めた大浦颯太は「チームルールが徹底できていない、遂行力がまだまだ低い」と一切の緩みを見せない。圧倒的な強さを見せつけて、今度こそ頂点への階段を駆け上る。
◆■KEY PLAYER/PG #5 大浦颯太

昨季はベスト6thマンに輝いた大浦[写真]=B.LEAGUE
昨シーズンは59試合すべてに途中出場。代名詞であるディープスリーと広い視野を活かしたパスでキャリアハイとなる平均9.8得点、4.6アシストをマークして中地区連覇に貢献。ベスト6thマンを受賞した。
今シーズンの序盤は、正PGであり、キャプテンを務める佐々木の不在が濃厚な中で、大浦にかかる負担は増える。「(根本)大や(湧川)颯斗が隆成の代わりにPGをする時間帯が多くなるのでいろんなことを伝えていかないといけない」と話す一方で、「僕自身は特にやることは変わらない。自分ができる100パーセントを出していきたい」と、気負いのない姿に揺るぎのない自信を感じた。
文=山田智子