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2025.11.03

破竹の11連勝を続ける長崎ヴェルカの起爆剤、イ ヒョンジュンの信念「チームファーストであることをとても大切にしている」

  • バスケット・カウント

イヒョンジュン

マオールヘッドコーチ「ディフェンスをしっかりと見て、相手の弱みを狙えている」

長崎ヴェルカは11月2日、アウェーで川崎ブレイブサンダースと対戦。持ち味とする爆発力あるオフェンスによって、前日のゲーム1に続き90点オーバーの99-79で圧勝した。長崎は開幕戦のアルティーリ千葉戦に敗れたのを除き、破竹の11連勝となっている。

試合の出だしから長崎は、イ ヒョンジュンが3本連続となる3ポイントシュートを成功させて流れを引き寄せる。第2クォーターに入ると、岡田大河を筆頭とした川崎のセカンドユニットの奮闘で反撃をくらうが、タフな守備から川崎のミスを誘発。チームで3ポイントシュートを8本中5本成功させて川崎を突き放し、前半を2桁のリードで終える。

後半に入っても長崎は得点を着実に積み重ねてリードを広げていくが、第3クォーターの終盤にはファウルトラブルから川崎にフリースローを続けて与えて11-0のランを許し、嫌な形でこのクォーターを終える。しかし、第4クォーター開始早々からプレー強度で川崎を上回り、立て直しに成功。その後も攻守の素早い切り替えからイージーシュートを次々と作り出し、高確率で得点を決め、残り4分半で15点リードと突き放し勝利を決定づけた。

これで長崎は6試合連続で90得点以上をマーク。水物と言われるシュートをここまで安定して決められている理由を、モーディ・マオールヘッドコーチは次のように語った「タレントが第一ですが、チームファーストの選手ばかりです。今シーズンのオフェンスはペースが早く、いろいろなことができています」

指揮官はさらにアジャスト力の高さに自信を見せる。「相手もスカウティングはしてきて毎試合、いろいろなカバーをされています。その中で、どんな状況であろうと、正しい判断をしようとしてくれているところが素晴らしいです。しっかりとボールが回っていて2ポイントシュートが多い試合もあれば、3ポイントシュートが多い試合もある。場合によってフリースローが多い試合だってある。ディフェンスをしっかりと見て、相手の弱みを狙えていると思います」

イヒョンジュン

「みんなが良いプレーをして勝利の喜びを分ちあえることが楽しい」

長崎のハイパワーオフェンスに欠かせない1人が、今シーズンから加入した韓国代表のエース、ヒョンジュンだ。この試合でも3ポイントシュート8本中5本成功を含む19得点7リバウンド5アシスト2スティールと、持ち味のオールラウンダーぶりを発揮した。

「チームでつかんだ素晴らしい勝利でした。相手がよりアグレッシブにきた中、前半は苦戦したところがありましたが、後半は解決法を見つけることができました。みんな良いプレーができたと思います」

このようにヒョンジュンは試合を振り返り、11連勝については「連勝という事実とは関係なく自分たちに自信を持っています。連勝については気にしていないですし、目の前の試合を勝つことに集中するだけです」と続ける。

この試合に限らず、ヒョンジュンはここまでレギュラーシーズン全12試合に出場し、平均17.4得点、6.0リバウンド、2.6アシスト。3ポイントシュートは1試合平均7.2本とリーグ有数の試投数ながら成功率48.8%と大暴れをしている。だが、本人は「僕はチームファーストであることをとても大切にしている選手です」と、個人の数字に関心はない。

「バスケットボールはチームスポーツであり、自分がどんなスタッツであっても試合に勝てればハッピーです。個人の数字についてはまったく気にしてないです。みんなが良いプレーをして勝利の喜びを分ちあえることが楽しい。ただ、試合が次々とあるので楽しめるのは短い時間で、すぐに次の試合に向けて切り替えないといけないです」

イヒョンジュン

「僕たちは互いを良くわかっています」

過去2年間、ヒョンジュンはオーストラリアNBLのイラワラ・ホークスに在籍。昨シーズンは、主力の1人としてチームのリーグ優勝に貢献している。NBLと比べ全体的に選手のサイズが小さいBリーグにおいて、201cmのウイングプレーヤーである彼は、大半のマッチアップで高さのアドバンテージを得ている。それでも「Bリーグはとてもフィジカルなリーグですし、世界の中で過小評価されていると思います」と慢心はない。そして「試合が多いのは好きですが、NBLではレギュラーシーズンは29試合で、次の試合に向けてリカバリーする十分な時間がありました。ただ、Bリーグは週末に連戦をプレーした後、水曜日にアウェーゲームも行うタフなスケジュールです。いかにヘルシーでいるかは、とても重要なカギになります」とスケジュールの違いに適応する必要があると考えている。

今夏、ヒョンジュンは故障者続出の韓国代表において、アジアカップで大黒柱としてフル稼働した。フィジカル面での激しい消耗を考えれば1カ月ほどのリフレッシュを経て、長崎に合流してもおかしくなかった。しかし、彼は8月14日、韓国がベスト8で中国に敗れた約1週間後にはチームに合流した。この早期合流は、チームファーストを何よりも重要視する彼らしいこだわりによるものだ。

「1週間の休みがあったので。それで十分です。中国に負けた後、『僕たちは勝たないといけなかったのに……』とメンタル的にはとても傷つきました。だけど、長崎の他の選手たちはすでにトレーニングを始めていました。バスケットボールはチームスポーツです。みんなと一緒に練習をすることで、チームとしてのリズムをつかむことができます。もっと遅くに来ることもできましたが、できるだけ早く来たかったです」

また、韓国代表では抜群のリーダーシップを発揮しているが、「僕たちには馬場(雄大)、スタンリー(ジョンソン)、JB(ジャレル・ブラントリー)と素晴らしいリーダーがいて、自分が引っ張っていく必要はないです」と謙虚な姿勢を貫き、Bリーグの先輩たちへの敬意を語る。

「そして、このチームにずっと在籍しているマサ(狩俣昌也)の存在は大きいです。僕よりもBリーグの経験豊富な選手たちが揃っています。それに何か問題があったら、みんなが意見を出していますし、僕も気になったことがあったら発言します」

これまでの実績、アジアカップでの圧倒的なパフォーマンスを見れば今のヒョンジュンの活躍ぶりも良い意味で驚くことではない。そして「僕たちは互いを良くわかっています。速いペースで、みんなが得点を狙っていくスタイルはプレーしていて楽しいです。相手チームはアジャストするのが大変だと思います」と、長崎のスタイルと相性抜群で伸び伸びとプレーしている。この彼のハイパフォーマンスが続いていく限り、長崎の勢いは止まりそうにない。