島根スサノオマジックに欠かせない攻撃の潤滑油、新たな強みを発揮している納見悠仁「今シーズンは今までにないモノが出せている」
敗れたものの第4クォーターの良いバスケットを演出
島根スサノオマジックは11月5日、アウェーでのサンロッカーズ渋谷戦に74-77で競り負け、連勝が7で止まった。
両者ともに序盤からシュートがまったく入らず、第1クォーターは両チーム合計で17本の3ポイントシュートが放たれるも成功は0。この悪い流れは第2クォーターに入っても続き、27-25というロースコアの重たい展開で前半を終える。
第3クォーターに入ると、島根は不用意なターンオーバーからSR渋谷にイージーシュートを許したり、このクォーターだけで9本のフリースローを与えるなど自滅。31失点を喫して11点のビハインドを背負う。第4クォーターはようやく本来の、パスがよく回るチームオフェンスから得点を量産し、残り2分に70-70の同点に追いつくが、ここからジョシュ・ホーキンソン、ジャン・ローレンス・ハーパージュニアにタフショットを決められ、あと一歩届かなかった。
島根のペータル・ボジッチヘッドコーチは、「前半、27得点しかできず得点効率の低さには困ったものがありました。自分たちのターンオーバーからサンロッカーズさんの点数が伸びてしまったので、オフェンスの遂行力をよりよくしないといけないです」と語る。
指揮官が言及したように、この試合の島根は本来のオフェンスを遂行できない時間帯が多かったが、第4クォーターはエースの岡田侑大を起点にしつつ、コートに出た5人がボールにからむ島根らしいチームバスケットボールができていた。そしてこのクォーターで存在感を放っていたのが納見悠仁だった。このクォーターでフル出場した納見はシュートアテンプトは0だったが、3アシストを記録するなど、攻撃の潤滑油として数字に出ない貢献が光っていた。
アシストを量産も「アシストを狙ってパスを出していない」
納見はこの試合トータルで7アシストを記録。開幕戦でいきなり10アシストを挙げ、ここまでの13試合のうち6試合で5アシスト以上と、アシスト力が目立っている。その理由について、納見はアシストに直結するパスを狙っていないところと語る。
「オカ(岡田侑大)が個人でクリエイトして打開できる力を持っているので、自分はそこにうまくからんでいくことを意識しています。そしてビッグマンは去年も一緒にプレーしているので、やりやすいです。アシストを狙ってパスを出しているのではなく、リズムよくチームバスケットボールを展開するためのパスがアシストに繋がっているのが良いところだと思います」
そして、納見はチームで攻めることを大切にする、島根の新たなスタイルと自身のプレーの相性の良さについても言及した。「結構、みんなをしっかり使います。オカはあれだけの能力を持っているので、彼にボールを集めるのは戦術の1つですが、そこから良いフローができている。自分の良さがヘッドコーチの目指すスタイルと噛み合っていると思いますし、これからもっと良いクリエイトができると思います」
ここ数シーズン、納見は故障などが影響し思うようにプレータイムを得られずにいた。しかし、今シーズンはボジッチ新ヘッドコーチのもと、1試合平均21分半の出場時間を獲得。ベンチスタートではあるが、第4クォーター終盤の勝負どころでコートに立つ機会も多い中心選手の1人となっている。
開幕からの約1カ月が好調な要因として、納見はチームスタイルとの相性の良さに加えメンタル面も挙げた。「今シーズンは開幕1週間前に本格的に(昨年3月に負った)故障から復帰できました。『まずは楽しくバスケをやろう』という気持ちが良い方向に向かっていると感じます。楽しんでプレーし、自分の良さを出していく。それを自分の中で掲げてやっていることの1つです」
「勝負どころで信頼してもらえるのはうれしい」
また、指揮官とチームメートの大きな信頼が、ステップアップの大きな支えになっている。11月2日のアルティーリ千葉戦、納見は試合を通してシュートタッチが良くなかったが、3点リードで迎えた残り42秒、岡田のアシストからこの試合初得点となるダメ押しの3ポイントシュートを決めてチームを勝利に導いた。
納見は、信頼されることのやりがいを語る。「こういうふうに任せてもらえるのはありがたいです。前の試合(A千葉戦)はうまくプレーできていなかったのに最後の場面で使ってもらえて、シュートを決め切ることができました。これは自信に繋がっています。今年はより充実しています。勝負どころで信頼してもらえるのはイチ選手としてうれしいですし、その期待に応えていきたいです」
今、大きな飛躍を遂げようとしている納見は、「自分より若い選手と一緒にプレーしていく中、周囲を引っ張っていくことも今年は意識しています。自分から声かけを積極的にやっていくことで、年下の選手も伸び伸びとプレーできると思っています」と、チーム全体の底上げも強く意識している。
現在、納見はキャリアベストの更新が期待できるスタートを切ったが、「数字に出ていない部分も含め、今シーズンは今までにないモノが出せていると思います。ここから今まで持っていた強み、これから改善したいモノを積み重ねてもっとよくしていきたいです」と、さらなるステップアップしか考えていない。
ここまで9勝4敗とスタートダッシュに成功した島根が今の勢いを維持していくには、岡田やニック・ケイといった大黒柱たちの活躍に加え、新指揮官の下、新たな持ち味を見出した納見の存在も欠かせない。


