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2025.11.07

新天地で輝く船生誠也「人生って面白い」苦い経験も力に…仙台の未来を見据える

  • バスケットボールキング

◆■最初の1本への悔恨

 4ファウルよりも、悔いが残ったのは1本の3ポイントシュートだった。

 11月5日に行われた『りそなグループ B.LEAGUE 2025-26 SEASON』B1リーグ戦第8節、仙台89ERSは敵地でアルバルク東京に80-94で敗戦。船生誠也は第3クォーター序盤で4つ目のファウルを犯し、約15分のプレータイムにとどまった。しかし、「使うべきところのファウルがほとんどだった」と冷静にコメント。主にマッチアップしたのは、気心の知れた間柄でもある安藤周人。試合後、脳裏に焼き付いていたのは安藤との攻防だった。

「あいつは大学時代の1つ下の後輩ですし、今年の夏も青学(青山学院大学)で一緒に練習とかしたんですよ。スリーが入ることはわかっていましたけど、前半の1本目にスカウティングしていたプレーではない形でやられてしまいました。やっぱりシューターは最初の1本目が入るとそのあとも決めてきます。安藤に前半で3本決められたってのは、僕にも責任があると思っています」

[写真]=B.LEAGUE

 第1クォーター序盤、スローインからのセットプレーで安藤に3ポイントを決められた。船生は最も悔やまれる場面だと言及したが、この時はベンチで戦況を見守っていた。それでも自分に矢印を向けたのは、仙台のディフェンスを中心で支えるという自覚があるからにほかならない。

「試合では相手のキープレーヤーにつくことが多いですし、まずはディフェンスのトーンセットをすることが自分の役目です。今日はその仕事ができなかったことに関してすごく後悔があります」

◆■仙台でつかむ主戦の座

 船生は今シーズンから活躍の場を仙台に移した。昨シーズン在籍したサンロッカーズ渋谷では出場機会に恵まれず、コートに立てたのは60試合中28試合。「怪我もしていない、コンディションもいい状態でもあそこまでプレータイムがもらえなかったのはキャリアの中で初めてでした」と振り返るが、苦い経験をポジティブに受け止め、原動力に変えた。

「逆にハングリーになることができましたし、人生って面白いなとも思えたので、結果的に良かったのかなと」

[写真]=B.LEAGUE

 仙台ではダン・タシュニーヘッドコーチからの信頼も厚く、開幕から全試合でスタメン出場を果たしている。「ディフェンスで仕事をすることは大前提で、オフェンスでもどんどんシュートを打てと言われています」。第7節のGAME2では、古巣相手にキャリアハイの17得点の活躍を見せた。

 チームの成績は7勝6敗。まだ序盤戦ではあるが、11勝49敗で終えた昨シーズンに比べると確実な成長を遂げている。「仙台がここまでやるのか、と感じている人の方が多いと思います」。そう話す31歳は7クラブでプレーした経歴を持ち、2023-24シーズンには広島ドラゴンフライズでリーグ制覇を成し遂げた。この経験値は、選手とスタッフが大幅に入れ替わった今シーズンの仙台において、新たな土台を築くための欠かせない要素になっている。

「CS(チャンピオンシップ)に出るのであれば、おそらく35勝はしなきゃいけないです。大事なのは全員が健康体でいること。シーズンは本当にあっという間に過ぎますし、今日の反省もすぐに週末の試合に生かさないといけない。『ダンダンよくなる』という合言葉どおり、60試合が終わった時に一番状態のいいチームが優勝に辿り着けると思うので、これからも日々学び、経験しながらチームとして成長し続けたいです」

◆■発展途上を見据える覚悟

[写真]=B.LEAGUE

 A東京には現状の完成度の違いを突きつけられ、力負けだったかもしれない。しかし、「僕たちは1年目のようなチーム。今日の負けもいい薬というか、ナイナーズの未来につながる負けにしなければいけない」と述べた船生の言葉には、発展途上のクラブを俯瞰し、勝敗の先を見据えるベテランの確かな決意があった。

「スタメンで出させてもらってる以上、本当に期待に応えたいですし、個人的にも全試合でコートに立つことを目指してやっていきたいです」

 経験に裏付けされた船生の安定感が、新生・仙台の強さを支えている。新天地で異彩を放つチームのバランサーは、これからもコートで与えられた責務を全うする。

文=小沼克年

【動画】A東京vs仙台の試合ハイライト映像