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2025.11.21

開幕から高負荷な7週間を戦い抜いたB1を振り返る、故障者続出のリーグとチームビルディングに明暗が分かれた東西クラブの現状

  • バスケット・カウント

ケガ人が続出したシーズン序盤戦

10月3日からスタートしたB1は11月16日までに11節を消化し、計18試合が行われた。『FIBAバスケットボールワールドカップ2027』の予選ラウンドのスケジュールなどの関係で、近年稀に見るハイペースで試合を消化していった。日数と試合数で表すと44日間で18試合、単純計算で2.4日に1回試合を戦ったことになる。世界の主要リーグでは土日の連戦すら珍しい中で、週末に2試合を戦い、平日にも開催されるタフスケジュールで繰り広げられる試合は、毎試合満員になる会場が出るなどバスケ熱の高さを改めて実感させられた。しかしその反面、チームは多くのものを削りながら戦い抜いた。

今シーズンは特にプレシーズンから各クラブが集客をして高い強度で試合をこなし続けてきた。チームビルディングのためには練習試合も必要で、そこには高い強度で戦うシチュエーションも存在する。しかしクラブとしては集客をしている関係上、質の高いバスケットを見せる必要があるため、レギュラーシーズンの延長線上で戦っているチームには高負荷がかかっていたに違いない。ハイペースなスケジュールも相まって10月には8名、11月には9名がインジュアリーリスト入りをしている。開幕時から選手の入れ替えやインジュアリーリスト入りする選手が出ずにバイウィークを迎えられたのは、26チーム中わずか7チーム。多くのチームが当初の構想とは違った戦いを強いられることとなった。

最高のスタートを切った西地区の2クラブ

その中でも最高のスタートダッシュを切ったのが、昨シーズンはチャンピオンシップに出場できなかった名古屋ダイヤモンドドルフィンズ長崎ヴェルカだ。モーディ・マオールヘッドコーチ体制1年目をチームビルディングに費やした長崎は、今シーズンはアジア特別枠で韓国代表のエースであるイ ヒョンジュンを獲得。ヒョンジュンは平均出場時間28.54分のプレータイムで13.8得点、5.8リバウンド、2.9アシストを記録。3ポイントシュートは平均7.1本のアテンプトで成功率48.4%とチームを牽引している。また、NBA経験豊富なスタンリー・ジョンソンもシックスマンとして平均20.5得点、5.7リバウンド、2.5アシストを記録。新加入選手たちの目覚ましい活躍が光るチームは現在リーグトップの92.6得点を記録しており、超攻撃型チームとして全体首位を走っている。

名古屋Dも圧倒的な強さを示している。ディフェンスレーティング(100ポゼッションでの平均失点)は92.7で、2位長崎の99.8を大きく引き離してリーグトップだ。昨シーズンのB1スティール王のアーロン・ヘンリーは今シーズンもスティールでランキング1位の平均2.4本、そしてブロックショット部門でも2位タイの1.3本を記録している。センターポジションが上位を占めるブロックショットでフォワードの選手が高い数字を叩き出しているのは圧巻だ。司令塔の齋藤拓実は平均12.6得点、5.3アシストという数字が示すように非凡な才能を発揮してチームを牽引している。ここまで勝率5割以上のチーム相手に6勝2敗と実力の高いチームにも好成績を収めている名古屋Dは、リバウンドや高確率のコーナースリーが持ち味の佐藤卓磨が昨シーズンの4月に負った右膝前十字靭帯損傷から順調に回復しており、チームとしてより厚みが増すことが予想される。

ヘッドコーチ解任となった川崎ブレイブサンダース

この序盤で最大のサプライズとなったのが川崎ブレイブサンダースネノ・ギンズブルグヘッドコーチ解任だろう。ギンズブルグも長崎と同様に昨シーズンがチームを指揮する1年目となった。川崎は2023-24シーズンのニック・ファジーカス引退から浮上のきっかけをつかみきれず、主力選手の退団も相次いだ。クラブは育成を主体としたチーム方針を掲げているためチームの成熟がカギとなっていたが、不運なことにもエースガード候補の呼び声が高かったルーキーの米須玲音がシーズンを前に戦線離脱。思い描いたプランを実行することはできなかった。クラブ初の外国籍ヘッドコーチとして期待もかかっていたが、道半ばでの解任となった。

新たにヘッドコーチに就任したのはアシスタントコーチを務めていた勝久ジェフリーだ。これまで長きにわたって川崎のアシスタントコーチとして従事し、サンロッカーズ渋谷でもヘッドコーチ経験を持っている。勝久新ヘッドコーチが指揮を取ってからチームはタイムシェアが進み、若手の活躍も台頭し始めており、山内ジャヘル琉人は恵まれた身体能力を武器に、直近3試合ではスタメンに抜擢されると平均12.0得点を記録している。このバイウィーク期間中に日本代表のアシスタントコーチの職を辞退した勝久が、長年チームを支えている篠山竜青らとともに再建することに期待したい。

バイウィーク明けには戦力が戻るチームも多いはずだ。昨シーズンの中地区王者でここまで7勝11敗と苦戦を強いられている三遠ネオフェニックスは短期契約をしていたスティーブ・ザックジョーダン・ダラスとの契約を解除しており、ヤンテ・メイテンダリアス・デイズの復帰が期待される。琉球ゴールデンキングスも短期契約をしていたアンドリュー・ランダルとの契約解除を発表しており新戦力への期待がかかる。バイウィーク期間中の各チームの動向にも注目だ。