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2025.12.03

目標の勝率5割を維持する滋賀レイクス、ルーキー西田陽成が大切にするディフェンスマインド「自分の前で点を取られたくない」

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「自分を表現するには泥臭いプレーをするしかない」

昨シーズン、851敗でリーグ最下位という屈辱を味わった滋賀レイクスは、今シーズンここまで99敗と躍進を見せている。外国籍選手3人は総替えとなったものの、日本人選手の大部分が継続というロスターの中で、昨シーズンに特別指定選手契約を結んだものの故障のため出場がなかったルーキーの西田陽成が躍進の一因となっている。

なかなか勝てずに苦しんだ昨シーズンのチームを、西田はコートの外から見ていた。「プレーすること自体が叶わなかったので、自分が復帰したら、どうチームに貢献できるか、どういうプレーで鼓舞できるかを考えて、自分だったらこうしようと想像していました」

プレーできなかったからこそ冷静にチームを見て、自身の役割を想定して新しいシーズンの開幕に備えていた。しかし、ルーキーがいきなりチームの力になれるほどB1クラブは容易な場所ではなかった。「プレシーズンゲームも開幕節の2試合もあまりプレータイムをもらえず、思うようにいきませんでした」

思い描いたシーズン開幕とはならなかったが、転機は早く訪れる。ホーム開幕戦となった第2節の京都ハンナリーズ戦で信頼を勝ち取るプレーを見せた。「チャンスをもらって少しは結果が出せました」と西田が振り返る通り、コートに立つとすぐに3ポイントシュートを沈めBリーグ初得点を挙げると、ディフェンスやリバウンドでも存在感を示した。

「自分を1番アピールできるのは3ポイントですが、リバウンドやディフェンスは大学からずっとやってきているので強みになっています。自分を表現するには、泥臭いプレーをするしかないと思っていたので、それが上手くできました」

開幕節の2試合は合わせて10分の出場時間だったが、この試合では20.41分にわたってコートに立った。これをきっかけに、その後もコンスタントに10分以上の出場時間を得て、10月末からは7試合で先発を務めた。「試合を重ねるごとに慣れも出てきて、特にオフェンスでは余裕を持ってシュートやドライブで良い選択ができてきています」

「一つひとつのプレーから学んで成長していきたい」

西田は全日本大学選手権で得点王やスリーポイント王に輝いた実績がある、世代を代表する有力選手だ。しかし、学生バスケの対戦相手はあくまで同年代。プロはキャリアも年齢も関係なく対戦するため、ルーキーにとって時には壁を感じる試合もある。

その洗礼を浴びたであろう試合で、西田が何を感じたのかを聞いてみた。111日に行われた秋田ノーザンハピネッツ戦。リードを築きながらも最終クォーターで追い上げを受け、残り12秒で1点リードという場面のことだ。秋田のヤニー・ウェッツェルが逆転を狙って放ったシュートは外れたが、田口成浩がオフェンスリバウンドを獲り、ゴール下でシュートをねじ込み、それが決勝点となって滋賀は敗れた。その田口とオフェンスリバウンドを競っていたのが西田だった。

「試合を通じて自分のパフォーマンスが悪かったと思っていたので、最後のあの場面で自分がボールを取ったり弾いたりしていたら『勝って反省』という試合になっていたと思いますが……」と西田は振り返る。西田は完全に田口をスクリーンアウトし、優位なポジションにいたが、それでも秋田を長年背負ってきた田口の気迫の前に逆転弾を許した。

「気を抜いていたわけではないですが、長くプロをやっている選手は、あそこまで徹底してやってくるんだなと学びになりました。ルーキーなので、そういう一つひとつのプレーから学んで成長していきたいですね。悔しいですけど、良い経験です」と西田が話す通り、苦い経験ではあるが、これを今後のキャリアにどう繋げていくかが重要である。

一方で、ディフェンスではすでに一定の評価を得ている。昨シーズン、ディフェンスに苦しんだチームにとっては、西田のディフェンスマインドは大きな力となっている。「本当に負けたくないですし、自分の前で点を取られたくない気持ちでマッチアップしています。ただただ一生懸命やって、それを評価してもらえています」

それはチーム全体にも良い影響をおよぼしている。昨シーズン勝利した試合の大部分はシュート成功率が良かった試合が多く、ディフェンスで勝ったという試合は少なかった。今シーズンは逆にディフェンスが勝利に繋がっている。「昨シーズンの悔しい思いを全員が持っているので、ディフェンスはみんなで特にフォーカスしてやっています」

「三河戦はめちゃくちゃ気合い入ってます」

「勝率5割を目指し、チャンピオンシップ出場と優勝へ可能性をつなぐ」。滋賀がシーズン前に掲げた目標である。実際、開幕からの18試合は目標通りに来ているが、中断期間明けは上位クラブとの対戦が多く組まれているため、真価が問われることになる。

「ここまで勝っている試合はディフェンスから流れを作っているので、全員が変わらずにそこにフォーカスできるかが大事です」と西田は今後の展望を語る。さらに「9敗のうち、要所でのターンオーバーを減らして、ディフェンスリバウンドをしっかり取り切ることができていれば勝てた試合が何試合かあったと思うので、今後は細かいところを突き詰めていけるようになれば良いかなと」とより細かい部分の精度がカギになると続ける。

中断期間明け最初の対戦相手は、兄の西田優大と公陽が所属するシーホース三河。プロになり初めての対戦に特別な思いを持ち、心待ちにしている。「楽しみです!めちゃくちゃ気合い入ってますし、強みをしっかり表現できたらいいなと思っています」

ここまでは目標を維持できているが、当然このまま終わるつもりはない。「この先のCS(チャンピオンシップ)を目指しているので、5割に留まらず6割、7割の勝率でレギュラーシーズンを終えたいです」。昨シーズン、悔しい思いをしたのは、選手だけでなくファンも一緒だと西田は続ける。

「自分たちが勝っていようが負けていようが、どんな状況でも常に変わらずに熱い声援を送ってくれています。滋賀のブースターさんが1番だと自分は思っていますし、とても心強いです。昨シーズンは勝利をあまり届けられなかった分、今シーズンはもっと届けられるように頑張っていきます」

自らの手で信頼を得て出場時間を勝ち取り、滋賀に不可欠な選手となった。しかし、西田の挑戦は始まったばかり。期待のルーキーは一つひとつのプレーを成長の糧にし続けている。苦しんだ分、より強くなった姿を今後も見せてくれるだろう。