6勝12敗と黒星先行のファイティングイーグルス名古屋、それでも保岡龍斗がつかんだ逆襲への手応え「正直、勝てる力はある」

「練習すればするほど良い数字も出ている」
16時30分。保岡龍斗のインタビュー開始時間としてファイティングイーグルス名古屋から指定された時刻だ。
個別インタビューを依頼するとき、多くのチームからは練習が終わる13時など午後の早い時間帯を指定されることが多い。しかし、開幕前の並里成のインタビューで4部練に近い練習量であることを理解していたため、この遅い開始時間にも違和感はなかった。中断期間に入っても、他チームよりも多く練習しているのだと。
そう予想し、保岡に現在の練習について聞いた。「シーズンが始まる前は、朝にワークアウトとトレーニング、その後にビデオセッション。お昼ご飯を食べてから全体練習というスケジュールでしたが、ケガ人が多かったので、前よりも全体練習は減りました」
シーズン前よりも全体の練習時間は短くなっているが、保岡自身は「個人的にはそのスケジュールがすごい好きでしたし、練習すればするほど良い数字も出ているので、今日も早めに行ってシューティングをしていましたね」と話す。この日も全体練習後にトレーニングも行い、個人の練習量は変わっていないと言う。その顔には充実感があふれていた。
ここまでのFE名古屋は、6勝12敗で西地区11位。決して順調とは言えないシーズン序盤となったが、保岡にはあせりや悲壮感は全くない。「昨シーズンも最初のバイウィークまで4勝10敗でしたが、最終的に30勝30敗まで持っていけました。今シーズン、指揮官も選手も入れ替わった中で、この成績はネガティブにとらえなくても良いのかなと」
初めて指揮をとるルーベン・ボイキンスーパーバイザーコーチに加えて、ルーキーが5人とリーグの中でも若い選手が多いFE名古屋だが、善戦している試合も多い。そのようなチーム構成に保岡はこう続ける。「開幕戦、千葉ジェッツさん相手に接戦に持ち込めたり、強豪にも競り合えているのはポジティブです。ただ『競ったから良いよね』ではなく、そこから『勝つために何が必要なのか』という部分に取り組んでいます」

「ディフェンスすることで若手に良い背中を見せたい」
保岡が話す通り、個人のスタッツは好調だ。「これまでのキャリアでは3ポイント成功率は30%前半でしたが、今年は37.3%。ただ、ここで慢心せずに40%まで上げていきたいと思って練習しています」
保岡のプレースタイルをイメージすると、3ポイントシュートよりもドライブが頭に浮かぶ人も少なくないだろう。ただ今シーズンは、ドライブよりも積極的にシュートを狙いに行く姿が多くみられる。
「グッドなショットよりグレートなショットを見つけるのがベースですが、ここまでチームの3ポイント成功率がリーグ2位(35.7%)にもかかわらず、アテンプト数が21位(24.6本)と低いです。(※トップは長崎ヴェルカの39.3%で平均35.2本)だから、ルー(ボイキンスーパーバイザーコーチ)からは『ドライブしないで打て』と言われています(笑)」
チームの事情も影響し、シューターの役割を期待されている。保岡は「それを任されるのはうれしいことです」と話した上で、自身の役割をまっとうすると意気込む。「昨シーズンはどんなシチュエーションでも打ち切るというところから始まり、今年はそれにプラスして『決める』のが仕事です」
さらにディフェンスでは、相手の起点になる選手や得点源とマッチアップする機会が多い。これもチームから求められていることだ。ボイキンスーパーバイザーコーチからは「ヤスのヘルプでチームはすごく助かってるから、例えばノンシューターについてヘルプでみんなを助ける役割が良いか、それともメインの選手とマッチアップするか、どっちが良い?」と聞かれたと言う。
保岡は「自分はチームメートに対していろいろなことを言う立場で『言ってる奴がディフェンスしてないじゃん』と思われたら示しがつかないので、楽ではないですがメインの選手とマッチアップするとルーに伝えました」と、よりやりがいを感じる選択をした。
さらに自身のディフェンスで、チームに良い影響を与えたいと話す。「シュートは入る日もあれば入らない日もあるので、ディフェンスやリーダーシップで貢献できればコートに長くいる意味があります。今の若手は得点に重きを置いているマインドの選手もいるので、ディフェンスすることで良い背中を見せられればと」

「全員が相手の脅威になる選手でいようと話している」
今年で30歳を迎え、中堅と呼ばれるキャリアになってきた。特に若い選手が多いチームで、保岡がリーダーシップを取る必要があり、心境の変化もあると言う。「メンタルの浮き沈みをなくすようにしています。これまではチームでやろうとしているプレーができないとイライラが露骨に出てしまうこともありました」
自身のメンタルに対して客観的に言及できている背景には、秋田ノーザンハピネッツ時代に共闘したベテラン選手の影響があると明かす。「どんなにチームが悪くても、古川さん(古川孝敏、現京都)がフラストレーションを露骨に出すのは見たことがなかったです。ずっとポジティブな言葉をかけ続けていて、それがリーダーシップだなと。イライラしそうになると、古川さんを思い出すことがあって、上手く切り替えるようになりました。特にネガティブな表現をすると、若手も付いてきてくれませんし、自分の発言にも説得力がなくなります」
メンタルが整い、チーム内で発言をすることも多くなった。若いチームにとって、選手からの発言は重要だと保岡は続ける。「ルーが考えるスカウティングと、選手がコートで感じることにギャップがあることがありました。例えば、滋賀レイクス戦は(並里)成さんが『後半にこうしたほうが良い』とコーチ陣に強く言って、それがプラスに働いて逆転することができました」
「選手の声を聞いてコーチ陣が戦い方を変えることもあり、段々と噛み合ってきています。ケミストリーがもっと構築できれば、勝率を伸ばしていけます」と全員で積み重ねていく重要性を感じている。「チームで大事にしている『All in』という言葉が段々と体現できていますし、正直、勝てる力はあると思っていて、チーム全員が同じように感じていますね」
スタートダッシュが切れなくても昨シーズンは巻き返せたから、今年も巻き返せるだろうという慢心ではない。この後の躍進に手応えを感じているからこそ、保岡の言葉は明るい。
「昨シーズンは大エースのアーロン(・ヘンリー、現名古屋D)がいたので、困った時になんとかしてくれましたが、今年は全員で得点して、全員が相手の脅威になる選手でいようと話しています。まずは目の前の試合をチームバスケットでしっかりと戦います。残りのシーズンで7割くらい勝たないとCS(チャンピオンシップ)がないので、 本当に一戦一戦が大事です」