安藤周人の『初めてのハドル』がアルバルク東京に勝利をもたらす「あそこでもう1回チームを固められたのは良かった」

安藤のクラッチプレーで北海道に競り勝つ
12月22日、レバンガ北海道とのゲーム2に臨んだアルバルク東京は84-80で勝利し、連勝を5に伸ばした。
スコアが示すように接戦となったが、終始試合をコントロールしていたのはA東京だった。富永啓生を筆頭に長距離砲を封じ込め、北海道の3ポイントシュート成功率を18.2%に抑えた。オフェンスでは富永とのミスマッチを突きつつ、ピック&ロールからペイントエリアで効果的に得点を重ね、何度も3ポゼッション差をつけた。しかし、指揮官のデイニアス・アドマイティスが「7本ぐらいオープンシュートを外していた。今日は26個のアシストがありましたが、そこで何本か入っていたらおそらく30本のアシストに近い数字になっていたと思う」と語ったように、決めるべきシュートを決め切れず突き放すチャンスを逸していた。
そして、最終クォーター開始1分で、ジャリル・オカフォーにタフな3ポイントシュートをねじ込まれ、ついに逆転を許した。その後、富永にも長距離砲を射抜かれ流れが北海道に傾くと、安藤周人のターンオーバーからワンマン速攻を許し、5点ビハインドでオフィシャルタイムアウトを迎えた。
しかし、「自分がやってしまったからこそ、取り返さないといけないと思って。あそこでもう一段階スイッチが入った」と言うように、このミスが安藤に火をつけた。直後、安藤はハンドラーとなり、セバスチャン・サイズのシュートファウルを引き出すと、残り1分16秒には逆転の3ポイントシュートを沈める。さらに直後のオフェンスでは、ドライブから北海道ディフェンスを収縮させ、小酒部泰暉のコーナースリーを完璧にアシストした。この小酒部の3ポイントシュートが決定打となり、苦しみながらも勝利を手にした。
クラッチタイムで違いを生んだ安藤は「良かったと言えば良かったし、悪かったと言えば悪かった」と試合を総括。接戦を制したことは収穫だが、オフェンスリバウンドの取られ方や離された時にボールをシェアせず、個人プレーに走った点がいくつかあったことを反省点に挙げた。

「今までやり続けてきたことがやっと実を結んだ感じですね」
ラスト約4分半で6得点3アシストを記録と、安藤のプレーが勝利に直結したことは間違いない。しかし、それよりもスタッツには表れない安藤のある行動がA東京に勝利をもたらした。ほとんどの時間帯でリードしていたA東京だったが、最終クォーターに逆転を許し、気持ちが途切れた。その瞬間、「早くこっち来い」と安藤がチームメートを呼び集めた。安藤はその時の様子をこのように振り返る。
「(ハドルを組む時は)ライアン(ロシター)が基本的にはいますけど、今日に関してはライアンもどっかに行っちゃって『ああ……』みたいな感じでした。点数が離れて、5人がバラバラになった瞬間だったので、そこで自分が大声で早くこっち来いって言ったらみんなちゃんと集まってきました。あのままだったら多分今日は勝てていなかったと思うので、あそこでもう1回チームを固められたのは良かったと思います」
ハドルを組む場合、ポイントガードや経験豊富なベテラン選手が声をかけることが多い。A東京ではテーブス海やロシターが担っていただろう。そのため、安藤は自ら進んでチームメートを集める行為をしたことがなかったが、今回は自然に身体が動いたと言う。
「この大事な場面で、自分から早くこっちに来いって言うのは初めてでした。全員の気持ちが切れかけていたので、自分たちが今やるべきこと、次のオフェンスは何をする、ディフェンスは何をするというのを話しました。あの場面で自分がポンって言えたのは、自分としても成長できたかなと。今までやり続けてきたことがやっと実を結んだ感じですね」
ちなみに安藤は試合を決定付ける小酒部の3ポイントシュートが決まった時、この日一番の笑顔を見せた。もともと、アシストよりも得点を決めることを求められるが、アシストの喜びも感じ始めているようだ。「前半は何回かアタックして、決まらなかったですけどノーマークを作れるシーンはたくさんありました。後半も引き続きアタックし続けた結果、セバ(サイズ)やオサ(小酒部)が決めてくれた。自分が犠牲になってチームが得点を得られるんだったら、それはそれで僕の新しい喜びだと思うので。犠牲の心というか、チームのために何ができるかというところで、すごく良い感覚をつかめました」
結果的に、試合に勝ちたい気持ちが安藤を次の領域へと押し上げた。今後は持ち味の3ポイントシュートだけではなく、リーダーシップやアシストでもチームに貢献してくれるはずだ。