2026.04.21
ベルテックス静岡が目指す「スポーツで、日本一ワクワクする街へ。」 持続可能なビジネスとしての地域共創
新アリーナ構想と多角的な地域貢献活動の現在地
B.LEAGUEが推進する社会的責任活動「B.Hope」にも連動し、独自の地域創生プロジェクトを進めるベルテックス静岡。その根底にあるのは「スポーツで、日本一ワクワクする街へ。」という明確なビジョンです。障がい者アートを社会に繋ぐ「VELTEX ART GALLERY」や、2030年の新アリーナ稼働を見据えた「ネクストリーダー発掘プロジェクト」など、多角的なアクションを展開する株式会社VELTEXスポーツエンタープライズの常務執行役員、下出恒平さんに活動の真意を伺いました。
――ベルテックス静岡にとって、地域課題に関わる活動の意義や重要性をどう考えていますか。
下出)我々の本質的なビジョンは『スポーツで、日本一ワクワクする街へ。』です。地域課題に関わる意義については、極端に言えば、バスケットボールはあくまでそれを達成するための一つの手段にすぎません。日本全体を見渡せば少子化やインフラの担い手不足が進む中、我々スポーツチームもその社会の厳しい現実の中で生きていく必要があります。
だからこそ、私たちの地域貢献は決して綺麗事ではないのです。地域が持続的に発展していくことは、そのまま自分たちのビジネス基盤を確保することと同義です。静岡という街が選ばれ続け、住み暮らす人の生活が豊かであること。それがエンターテインメントビジネスの継続性に直結します。中長期的なマーケティング事業として、地域活動はプロスポーツクラブが当然やるべきことだと考えています。

B.Hopeとクラブの連携プロジェクト「ON the Court!」に登壇する下出さん
――すると、バスケットボール以外のスポーツとの関わりも増えていますか。
下出)はい。例えば静岡市から指定管理者として、スケートボードやBMXなどを楽しめる『アーバンスポーツパーク』の運営を任されていました。また、全国的な社会課題となっている中学校の部活動改革、いわゆる地域移行にも着手しています。現在はテストケースの段階ですが、特定のエリアにおいて卓球、バスケットボール、バレーボールなどの指導を、うちのアカデミーのスタッフが中心となって行っています。競技のジャンルにとらわれず、地域の子どもたちがスポーツに触れる環境を維持していくことも、我々の役割だと認識しています。
――下出さんは日本財団の助成事業である「VELTEX ART GALLERY ワークショップ」の担当もされていますね。どのような経緯で実現したのですか。
下出)元々は外部のビジネス交流会に参加した際、障がい者のアート活動を支援している方と知り合ったのがきっかけでした。障がい者が描いた絵を編集して一つの作品にするという彼らの活動に強く共感し、昨シーズンから共同でワークショップを始めました。我々としても、クラブのプラットフォームを活かして力になりたいと考えたこともあり、その活動を続けていく中で日本財団様からの助成事業のお話があり、今シーズンからさらに規模を拡大して実施に至りました。
――実際にワークショップを行ってみて、どのような気づきがありましたか。
下出)感じたのは、アートには人間が本来持っている表現したいという『強い衝動』を引き出す、とてつもない力があるということです。特に小さな子どもたちは、手に直接絵の具を塗ったりして、夢中になって表現をぶつけていました。家の中では怒られてしまうような行動も、あの場所では完全に自由にできる。そういったことから、非常に活気に溢れていたんだと思います。


知的障がいを持つ方々も同様で、ご自身の体を使ってキャンバスに形を残すことを純粋に楽しんでくれていました。一方で、見えてきた理想と現実の課題もあります。 福祉施設は基本的に税金で運営されており、慢性的に職員が不足している場所も少なくないようです。我々のホームゲームやイベントは土日開催が多いのですが、施設側には土日や祝日に職員を配置する余裕がないということもありました。施設単位での参加は現実的に難しいという壁があり、そこは今後、施設型ではなくご家族単位での参加を促すような仕組みづくりなど、運用面での工夫が必要だと感じています。


――「VELTEX ART GALLERY」には柏倉哲平選手や加納誠也選手も参加されていますが、選手やスタッフの協力体制はいかがですか?
下出)今シーズンこれまでは、アウェーゲームのタイミングでワークショップを行っていたため、選手は取り組みの詳細を把握していませんでした。しかし今2月28日と3月1日はホームゲームの会場でも実施するように変更したため、選手などにも積極的に協力してもらいました。 当クラブの選手たちは、プロとして社会との接点を持つことを非常に大事にしており、チームのビジョンを深く理解したうえで、主体的に参加してくれています。
――もう一つの助成事業である「ネクストリーダー発掘プロジェクト」について教えてください。
下出)これは2030年の新アリーナに向けた、静岡市のまちづくりプロジェクトです。まずは地元・静岡の学生たちに、アリーナを自分事として捉えてもらうことを最大の目的としています。立派なアリーナができれば、自動的に街が盛り上がるわけではありません。「りそなグループ B.LEAGUE ALL-STAR GAME WEEKEND 2026 IN NAGASAKI」開催時には、プロジェクトの学生たちをオールスターの開催される長崎県長崎市へ連れて行き、アリーナがどのように市民の日常に溶け込んでいるかを実際に肌で感じてもらいました。現在はその経験を踏まえて、新アリーナを起点に自分たちがどうあるべきか、何ができるかを考えるワークショップを行っています。

アリーナを見学した学生たち

ワークショップで実施したピッチコンテスト後の様子
新アリーナは駅の目の前という絶好の立地条件を備えています。スポーツやエンターテイメントの発信地としてだけでなく、地域の防災拠点や観光拠点としての重要な役割も期待されています。アリーナを中心に周辺産業が賑わい、シビックプライドが高まるような『次世代のコンテンツ基地』にしたいと考えています。
――今後の活動への思いを聞かせてください。
下出)知的障がいを持つ方は人口の1%ほどいると言われています。それはつまり、スポンサー企業様の中にも、我々の周囲の身近なところにも、当事者やそのご家族は必ず存在しているということです。だからこそアートを通じて、障がいがある人が普通に社会に存在できる環境を示したいのです。
そして将来的には、ただ絵を描いて終わるのではなく、ワークショップで生まれた作品の権利を企業様に買ってもらったり、施設にノベルティ制作を依頼したりして、彼らの『仕事を作る仕組み』も構築したいと考えています。税金や補助金だけに頼りすぎず、フェアトレードに近い形で経済を回す。それはベルテックスの活動に参加することがステータスになるような、持続可能で新しい社会貢献の形に繋がっていくと確信しています。

次回は柏倉哲平選手のインタビューを紹介します。
取材協力:Bリーグ
B.Hope WEBサイトはこちら https://www.bleague.jp/b-hope/
B.Hope公式Xはこちら https://x.com/B_LEAGUE_HOPE
記事提供:月刊バスケットボール