得点王に輝いた仙台89ERSのジャレット・カルバー「チームメートと家族のような関係を築けたのが、活躍できた一番の理由」

「アイデンティティを確立できるかが重要だった」
仙台89ERSは昨シーズン、11勝49敗で東地区最下位と苦しいシーズンを経験した。今シーズンはヘッドコーチの交代に加え、ロスターの半分以上を入れ替える抜本的改革を敢行。その結果、35勝25敗で東地区6位でシーズンを終えた。チャンピオンシップ進出には一歩届かなかったものの、Bリーグ発足以降、B1で勝率5割に満たなかったクラブにとって、大きな飛躍のシーズンとなった。
志村雄彦社長が「上位チームとは違うことにチャレンジする」と語ったように、インサイドではないポジションでアドバンテージを生み出すロスター構成が、成功の要因の1つに。
特に存在感を放ったのがジャレット・カルバーだ。2019年のNBAドラフトで1巡目全体6位指名を受け、NBAでは147試合に出場。日本でのプレーは初めてだったが、爆発的な得点力を発揮して、平均26.5得点で得点王に輝いた。カルバーはシーズンを次のように振り返る。
「とても良いシーズンでした。もちろんチャンピオンシップには行きたかったです。ただ私を含めて、初めて日本でプレーする選手も多い中、シーズンを通して良くなっていく姿をコート上で示せ、みんなで前進することができました」
仙台は11月のバイウィークまでの18試合を8勝10敗と負け越した。しかし、その後は上位クラブとも十分に戦える力をつけ、これまで1度も勝利したことのなかった名古屋ダイヤモンドドルフィンズやアルバルク東京から白星を挙げた。カルバーは成長の要因をこう語る。
「自分たちのアイデンティティを確立できるかが重要でした。それはディフェンスからすべてが始まるバスケです。トランジションの強みも生かせました。互いを理解できるようになってきたことで、チームとしての勝ち方が見えてきました」
一方、チャンピオンシップ進出を逃した要因についても言及する。「ケガ人が出たことで、勝てたはずの試合を落としてしまいました。すべての試合をプレーオフのような意識で戦う必要がありましたが、その感覚をつかむには時間が必要でした。ただ、全員にとって良い学び、経験になったシーズンでした」

来日前に交わしたタシュニーヘッドコーチとの会話
圧倒的なスキルとスピードを持つカルバーは3月15日の秋田ノーザンハピネッツ戦で、Bリーグ歴代記録(タイ)となる52得点を挙げた。自身の能力があってこその得点王獲得だが、彼は周りのサポートのおかげと強調する。
「私は本当に恵まれています。これまでのハードワークが得点王に繋がりました。ただ、これは自分一人で成し遂げたものではありません。信頼してプレーを作ってくれるコーチ、そしてスペースを作ったり、スクリーンをしたり、パスを供給してくれるチームメートがいるからこそ、自分が得点できました。本当に感謝しています」
平均得点もさることながら、チームの総得点に占める得点割合は32.0%でリーグトップ。2位の長崎ヴェルカ、スタンリー・ジョンソンが24.2%であることを考えれば、これがいかに圧倒的な数字かが分かる。見方によっては『カルバーのワンマンチーム』とも捉えられかねないが、仙台に対してそのような印象を抱く人は多くないだろう。
「時には自己犠牲を払う必要があった仲間もいたと思います。チームの全員が役割をやり切ってくれた結果なので、私だけのタイトルではありません」と言う通り、カルバーはセルフィッシュなプレーをしていたわけではなく、あくまでスコアラーとしての役割を全うしていただけ。勝利を最優先して、チーム全体を常に意識していた。それは来日前に交わしたダン・タシュニーヘッドコーチとの会話が源だと明かす。
「日本で成功するには、日本人選手との信頼関係を築けるか、日本の文化をいかに受け入れるかが重要だと言われました。今はチームメートと家族のような関係を築けているのが、このチームで活躍できた一番の理由です」
タシュニーヘッドコーチはカルバーに対し「プレーヤーとして優秀なことはもちろんですが、何より人間性が素晴らしい。いつもコーチ陣の考えを受け入れてくれます」と高く評価している。この言葉をカルバーに伝えると、この日一番の笑みを浮かべ「コーチがそう言ってくれるのは私にとっても大きな意味があることです。彼が私に重要なミッションを与えてくれたからこそ、パフォーマンスが発揮できました」と、良好な関係性を明かしてくれた。

「すべての日本の方々に『ありがとう』を伝えたい」
カルバーのキャリアを振り返ると、NBAとGリーグのみでプレーしており、アメリカ以外での経験はなかった。初めて国外でプレーするにあたり「正直、契約するまで日本のバスケに関する知識はなかったです」と語る通り、不安も少なからずあったと言う。
それでも、Bリーグにはポジティブな印象を持っていた。「誰に聞いても、Bリーグは急成長していると言っていましたし、元NBA選手がいることも聞いていました。コーチから素晴らしい日本人選手が多く、外国籍選手のレベルも年々上がっていると聞いていたので、とても楽しみでした」
「非常にフィジカルなリーグだと聞いていたので、少し心配もありましたが、結果的にはアジャストできました」。その言葉通り、十分な結果を残したシーズンとなった。
さらにチームメートの存在が日本での生活では助けになったと続ける。「自分でも東京や大阪、京都など魅力的な都市があることを調べていましたが、日本での経験が長いネイサン・ブースが生活や食事のこと、行くべき場所をたくさん教えてくれました」
日本でのお気に入りも見つけた。「ラーメンが大好物で、いろいろなお店を巡って楽しんでいます(笑)」
最後に応援してくれた人たちへの感謝を口にする。「ナイナーズのファン、そして日本のバスケットを愛している皆さんにあらためてお礼を言いたいです。快適にプレーできたのは応援のおかげです。ナイナーズのファンが日本で1番のファンだと信じています」
さらに感謝を伝えたいのはバスケットボールに関わる人たちだけでない。「どこへ行っても日本の人たちは親切にしてくれました。外国人である私を受け入れてくれて、日本で楽しく生活できていることに感謝しています。本当に、すべての日本の方々に『ありがとう』を伝えたいです」