2026.05.05
飛躍の仙台89ERS、築き上げた「勝つ文化」を次は継承へ──渡辺翔太「今季はすごく楽しかった。本当にこのチームはすばらしい」
5月3日の第36節をもって、B1の2025-26シーズンが終了。仙台は前季の11勝49敗から24もの白星を積み上げる35勝25敗でシーズンを終えた。
B1での過去3シーズンと初年度16-17シーズンを合わせた4シーズンでは一度も勝率5割を超えられなかったクラブが、勝率6割を目前(.593)にするところまでの大飛躍。ここまでのジャンプアップはB1の歴史においても非常に稀だ。
最終節も、アウェーで群馬クレインサンダーズに連勝しても何ら不思議ではない大激戦。2戦ともに1点差(82-83と86-87)の決着で、特にゲーム2は4Qに一時14点差を付けられながらもオーバータイムに持ち込む粘りを見せた。
最後は中村拓人のブザービーターレイアップを食らって敗れたものの、見事なカムバックと、ネイサン・ブース、ブーバカー・トゥーレの2人の外国籍ビッグマンを欠く中での奮闘は、ファンの心を熱くさせた。
「CSの可能性が途絶えてしまいましたが、モチベーションの心配は自分は全くなくて、本当にいいチームを作り上げてきたので、最後しっかりと勝って終わるというところで、もちろん勝ちにいきました。今季ずっとやり続けてきた細かいところをこの試合でも全力で出して、ナイナーズらしく戦うことを考えていました。今季はすごく楽しかったでし、本当にこのチームはすばらしくて。ダン(タシュニーHC)の作るチームで自分がこうやってプレーできたはうれしいなと思います」
プロ入りから仙台一筋7シーズン目の渡辺翔太は、かみ締めるようにこう振り返った。

渡辺は仙台一筋のフランチャイズプレーヤー
仙台が当時B2だった2019-20シーズンからチームに加わった渡辺は、B1復帰に至るまで、そしてそれ以降の今日に至るまでには大きな苦労を自身のキャリアと仙台の歩みを照らし合わせ、こう振り返っている。
「B2時代から戦ってB1に上がって、去年みたいに苦しいシーズン(11勝49敗)もありました。でも、そういう一つ一つの年がなかったら、自分たちは今にここに立てないと思っていますし、スポンサーの皆さんやファンの皆さん、チームのメンバー、スタッフがいたから今こうやって自分たちがこの場所に立てています。そういった方々が残してくれた功績があったからこそ、自分たちは強く戦えている。今年こうやって飛躍できたで、来年新しいチームになっても、『GRIND』の精神とか、そういうナイナーズが大事にしてきたものを引き継いでいくのがすごく大切かなと思います」
大改革による飛躍的な進歩をしたわけではない。文字どおり一歩ずつ階段を登り、今に至る。だからこそ、過去がなければ今はないと渡辺は考えているのだ。
そして今季はタシュニーHCが着任し、元NBA選手のジャレット・カルバー、レバノン代表のセルジオ・エルダーウィッチをクラブに迎え入れた。ウィングにストロングポイントを見いだしたこの人事が功を奏し、チーム力は大幅に向上。タシュニーHCはディフェンスのマインドとシステムをチームに浸透させ、カルバーとエルダーウィッチが仙台に不足していた得点力を補った。
カルバーが記録した平均26.5得点は、17-18、18-19シーズンのダバンテ・ガードナー(当時新潟・現三河/順に28.7得点、27.6得点)以来の高水準だ。

カルバーの活躍は飛躍の原動力となった
今季の仙台は、クラブのアイデンティティーである「GRIND」(粘り強く、コツコツとハードワークを体現するといった意味)に加え、ダン・タシュニーHCの名を取り、「ダンダンよくなる」というスローガンを掲げた。
タシュニーHCに「ダンダンよくなった部分はどこか?」と尋ねると、同氏は丁寧にこう回答してくれた。
「全てが良くなってきたんじゃないかと思います。特に何かをピックアップしろと言われれば、ディフェンスの部分。数字的に言うと、1回目のバイウィーク(11月)以降の42試合のディフェンスは、レーティングでもリーグで3位ぐらいに入っていたと思います。序盤は新しいスタッフ、そして選手も半分以上が変わった中でシステムを学ぶのに18試合かかりました。そこをしっかりと理解できてからはインテンシティーを上げることができましたし、連動性を持ったディフェンスができるようになってきました。そこからの42試合は数字的にも勝敗的にもリーグの中でベストなチームの1つになれたと思います。
加えて、ディフェンスだけではなく、最初の18試合の時間を一緒に費やす中で、お互いの良さの引き出し方が分かってきたんだと思います。エルダーウィッチがどうプレーすれば、カルバーを生かせるのか、逆にカルバーがどうエルダーウィッチを生かすのか。そういった、お互いの良さをどうやったら引き出し合えるのかが分かるようになってきたと思います」
Bリーグ10年目の節目に大きな飛躍を遂げた。しかし、彼らが目指すのはチャンピオンシップ進出であり、最高到達点は言わずもがなリーグ優勝だ。

チームを率いたタシュニーHC
だからこそ、タシュニーHCは「それがナイナーズの未来につながる部分だと思います。自分たちが掲げてきた『ダンダンよくなる』というスローガンは、今季で終わるわけではありません。お互いがお互いの背中を押し合って今のベストよりも明日のベストが良くなる。その姿勢を続ける。それがチームの成長につながります。そういった文化を作り上げたいと思ってやり続けてきましたし、それは引き続きやり続けていきたいです」と、今後の継続的な成長が重要だと説く。
Bプレミアに挑む来季はリーグ構造が変化し、新制度としてサラリーキャップが加わる。仙台も来季誰が残って、誰が退団するのかはまだ分からない。
だが、間違いなく一つ言えることは、彼らが大切にしてきたアイデンティティーと、今季築き上げた「勝つ文化」が継承されていくということだ。
記事提供:月刊バスケットボール