PLAYBACK B.LEAGUE|コロナ禍にありながらシーズン完遂…通常開催へ明るい兆しも 【2021-22】

「りそなグループ B.LEAGUE 2025-26 シーズン」、B.LEAGUEは大きな節目となる10シーズン目を迎える。日本のバスケットボール界に新たな歴史を刻んだあの日から、早くも9つのシーズンが過ぎ去った。熱狂のチャンピオンシップ、語り継がれる名勝負、スター選手の誕生、そして地域に根差したクラブが紡いできた数々のドラマ。この連載では、10年目の未来へとつながるBリーグの軌跡を、シーズンごとに紐解いていく。今回は新型コロナウイルス感染症に振り回された 「B.LEAGUE 2021-22シーズン」の激闘を振り返る。
B1レギュラーシーズン:中止試合が相次ぐ一方で収容率100パーセント開催回復
開幕前、1年延期の末に開催された「東京2020オリンピック」にはオーストラリア代表のニック・ケイやチェコ代表のパトリック・アウダといった外国籍選手を含め、B.LEAGUEから多くの選手が出場し、5年連続5回目で最優秀審判賞に輝いた加藤誉樹レフェリーも参戦。自国で開催されたビッグイベントの勢いを持続させたかったものの、B.LEAGUEは新型コロナウイルス感染症の影響を最も受けたシーズンになった。選手やスタッフの陽性者が440名に増加し、前シーズンの倍以上となる198試合が中止。結果的に115試合が不開催となった。予定されていた「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2022 IN OKINAWA」は延期。一方、イベント開催制限が徐々に緩和され、2021年末に収容率100パーセントでの開催へと回復した。
B1は過去最多22チームが参戦し、レギュラーシーズンは2シーズン連続で東、西の2地区制。チームによって開催試合数が異なるなか、最終節の結果を受けて千葉ジェッツが35勝10敗(勝率0.778)で3シーズンぶり3回目の東地区優勝を飾った。7連勝でシーズンを締めくくり、東地区では最多42勝を挙げた川崎ブレイブサンダースが勝率(0.764)で2位につけた。4位の宇都宮ブレックスは川崎に次ぐ40勝。3位のアルバルク東京も勝率7割超えを果たした。
西地区は当時のB1最多20連勝と最高勝率をマークした琉球ゴールデンキングスが49勝7敗(勝率0.875)で優勝。第33節GAME1で島根スサノオマジックとの直接対決を制し、5年連続で西地区の頂点に立った。3位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズまでが「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2021-22」へ進出。信州ブレイブウォリアーズが28勝26敗(勝率0.519)、広島ドラゴンフライズが29勝28敗(勝率0.509)と、B1昇格2シーズン目の2チームが前シーズンを大きく上回る好成績を残した。

チャンピオンシップ:東西チームによる頂上決戦…宇都宮が無傷の6連勝で王者に

チャンピオンシップはワイルドカード上位の宇都宮が千葉J、川崎、琉球と、いずれも出場順位の上位チームを相手に連勝。初年度以来となる5シーズンぶり2度目のリーグ制覇を飾った。
クォーターファイナルは敵地での千葉J戦。GAME1、GAME2ともに試合の大半でリードを奪い、東地区のライバルを退けた。アウェーで行われた川崎とのセミファイナルは先勝。GAME2は同点で迎えた4Q残り46秒から比江島慎が連続6得点を挙げ、勝利を手繰り寄せた。
B.LEAGUE初の東西地区チームによる頂上決戦となった「日本生命 B.LEAGUE FINALS 2021-22」の舞台は、“高校バスケットボール界の聖地”とも呼ばれる東京体育館。GAME1は3Q終盤から4Q序盤にかけて12-0のランを見せると、最後の10分間をわずか5得点に抑え、80-61で逆転勝利を収めた。GAME2は3Qに一度リードを許したのみ。82-75で琉球を下し、頂点に返り咲いた。
比江島がチャンピオンシップ最優秀選手賞(MVP)を受賞。6試合で1試合平均18.7得点5.2アシスト1.8スティールと躍動し、自身初のB.LEAGUE優勝を手に入れた。日本生命ファイナル賞は鵤誠司。GAME2では比江島に次ぐ15得点に7リバウンド5アシストを記録した。
昇降格:FE名古屋が悲願のB1昇格…新規参入2チームがB2の舞台へ
B2からB1に2チーム、B3からB2に2チームが自動昇格。降格は行われないことになった。「B2 PLAYOFFS 2021-22」のセミファイナルはファイティングイーグルス名古屋vs熊本ヴォルターズ、仙台89ERSvs香川ファイブアローズの組み合わせ。前カードはFE名古屋が初戦を100点ゲームで制すと、GAME2でも15点の快勝。プレーオフ開幕前の2022年4月にB1ライセンスが付与されたことにより、悲願のB1昇格を果たした。仙台vs香川はGAME2を終えて1勝1敗。仙台がGAME3をものにし、6シーズンのB1復帰を決めた。
ファイナルは仙台がGAME2の勝利でタイに持ち込んだものの、GAME3でFE名古屋が75-44と31点差の圧勝。3位決定戦は熊本の選手1名が新型コロナウイルス感染症の陽性判定を受け、その他選手3名が濃厚接触者と判断されたことから、試合エントリー要件を充足できずに中止となった。
B3では新規参入の2チームが最短昇格。45勝3敗(勝率0.938)と圧倒的な強さを誇った長崎ヴェルカはB3優勝とB2昇格を同時に達成し、アルティーリ千葉はトライフープ岡山との「B2昇格決定戦 2021-22」を制した。
個人賞:藤井祐眞が自身初のMVP受賞…狩野祐介は歴代最高記録でベスト3P成功率賞に

2019-20シーズンから3年連続でベスト5に名を連ねた藤井祐眞がレギュラーシーズン最優秀選手賞(MVP)に。これまでベンチからの出場が多く、2度のベスト6thマン受賞歴を持つ司令塔は、51試合で先発を務め、1試合平均14.1得点2.4リバウンド5.5アシスト1.2スティールを記録した。
富樫勇樹が6年連続6回目の受賞を果たしたほか、藤井とともに川崎を引っ張ったニック・ファジーカスが2年連続4回目の受賞。初受賞を果たした安藤誓哉とドウェイン・エバンスは、その後もリーグを代表する選手として活躍を続ける。
東海大学在学時からB.LEAGUEの舞台を経験した西田優大が新人賞を初受賞。名古屋D、新潟アルビレックスBBを経て三河に加入した西田は、53試合の先発出場で同11.6得点の活躍を見せた。ベンドラメ礼生や馬場雄大、テーブス海といった歴代新人賞受賞選手に続くように、今では日本代表に欠かせない選手へと成長を遂げた。
ショーン・ロングが得点王(25.0)、セバスチャン・サイズがリバウンド王(12.4)、パブロ・アギラールがスティール王(1.6)、橋本竜馬がベストFT成功率賞(92.0%)をそれぞれ初受賞。富樫が2年ぶり2回目のアシスト王(6.4)に輝き、アレックス・デイビスがブロック王(1.5)の称号を獲得した。特筆すべきは2年連続2回目のベスト3P成功率賞となった狩野祐介。前シーズンに松井啓十郎が記録した47.2パーセントを大きく上回り、歴代最高の52.9パーセントを残した。

文=酒井伸
構成=バスケットボールキング