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河村勇輝(横浜BC)が振り返るワールドカップ「『後半絶対に自分たちの流れが来る』…手応えを感じつつプレーした世界の舞台」

2023.10.08

日本代表

今大会で世界デビューを果たした河村勇輝【(c) fiba.basketball】

「アジア1位になってパリ2024オリンピックの出場権を獲得する」

 男子日本代表のトム・ホーバスヘッドコーチ(以下HC)が、日本、フィリピン、インドネシア共催の「FIBAバスケットボールワールドカップ2023(以下ワールドカップ)」の出場にあたり掲げた目標だ。

 日本はワールドカップ、オリンピックを通じて初めてヨーロッパのチーム、フィンランドを破ると、ベネズエラ、カーボベルデにも勝利して、アジア1位の座を獲得。会場となった沖縄アリーナは歓喜に包まれた。

 バスケットボールのファンだけでなく、日本中を熱狂させた男子日本代表。今回はチームの司令塔として、世界デビューを果たした河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)に大会を振り返ってもらった。

ワールドカップデビュー戦は「とにかく緊張していました」

――初戦のドイツ戦、初めてワールドカップのコートに立った瞬間の気持ちを覚えていますか?

「とにかく緊張していましたね。自分の夢だった日本のPGとして世界の舞台に立つ――その夢を達成した瞬間ではあったのですが、実際にはそれをあまり感じることもできず、とにかく試合のことを考えていて、プラスすごく緊張してたというのが一番の思い出です」

――どれくらいで普段の自分に戻れたのですか?

「前半を終えてからやっと緊張が抜けて、自分のこと以外にも気が回せたというか。本当に緊張してしまうと自分のことだけで精一杯になってしまうのですが、やっとゲームの流れなどがわかるようになって、普段の自分に戻ったという感覚が強まりました」

――ドイツには敗れましたが、互角のプレーもありました。

「チームとして手応えはすごく感じていました。ハーフタイムで、『後半は絶対勝とう』と確認して、結果としてスコアで上回ることもできました。とても自信になったし、次のフィンランド戦は『絶対勝てるぞ』と、チームとしての勢いのようなものが出てきたところはありましたね」

ドイツのシュルーダーとマッチアップ【(c) fiba.basketball】

 

――フィンランド戦では1Qでリードできましたが、その後、逆転を許し、追いかける展開でした。

「日本は後半に流れを持ってきて自分たちの強さを発揮できました。それは敗れたドイツ戦でも感じられましたし、『後半絶対に自分たちの流れが来る』と信じてプレーしました。フィンランド戦では富永(啓生)選手の3Pシュートが当たりだして、『これはもう行けるな』というタイミングで僕も交代で出させてもらって。あのときは富永選手のシュートが入り出して、流れがぐっとこっちに傾いたなと感じていました」

――河村選手も1対1の場面でリングにアタックするシーンも増えました。

「ドイツ戦を終えて、僕自身、1対1の場面でペイントアタックがすごい少なかったなあという心残りというか、反省がありました。元々日本はスポットシューターであったり、コーナーで構えている選手が多くいる中で、僕がドライブしないでどうするんだと。だからこそフィンランド戦はかなりペイントアタックを意識して増やそうと思って試合に臨んでいたのです」

――後半に入り、それが顕著だったと思います。

「前半でも自分がシュートを打てるなという状況はありましたが、まず、チームメートを乗らせることを優先することを僕の中で大きな目標として立てていたので、パスを優先しました。後半はそれにアジャストしてきた相手がパスを警戒してきたので、僕がおのずとオープンになっていったところがありますかね」

――フィンランドは富永選手、そして河村選手を止めようと、前がかりとも言えるディフェンスになっていきました。

「あの試合はすごくバランス良く攻められました。富永選手が外で当たるとおのずとスペースが広がっていって。彼は本当に3Pラインよりも遠くからディープスリーを打てるので、どんどんスペースが広がります。そうなると僕もドライブがとてもしやすくなり、日本としてもオフェンスは何でもできるといういう状況になり、それを後半に続けられたと思います」

――4Q残り4分35秒、河村選手がフローターを決めてバスカンを奪い、そしてボーナススローを決めて逆転した場面を解説してください。

「あのときは最初からドライブすることを決めていました。富永選手が当たっていた中で、僕が無理にタフなスリーを打ちにいく選択はいいオフェンスではないなと判断していました。本当にあの試合はドライブで攻めることを意識してました」

深く一礼してコートに入る河村【(c)バスケットボールキング/伊藤大允】

「ファンの皆さんの応援や盛り上がりで助けてもらいました」

――こうして男子日本代表が初めてヨーロッパのチームに勝利しました。ただ皆勝利を喜んでいましたが、まだまだ先があるぞというチームの雰囲気だった気がします。

「はい。手応えはありましたけど、ヨーロッパのチームに勝つことも大事ですが、自分たちの目標はパリ2024オリンピックの出場権を獲得することだったので。実際フィンランドに勝っても、他のアジアのチームが1次リーグで2勝して2次リーグに進めば、何の意味もなくなるというように思ってたので、とにかくオーストラリアに勝って2勝して、2次リーグに進めようと切り替えていました。そのため思ったよりも余韻に浸ったりとかはなかったですね」

――残念ながら次のオーストラリア戦には負けてしまいます。このとき、渡邊選手や富樫選手が『まだまだ次があるよ』というような声掛けを若手にしたりしたのですか?

「もちろんオーストラリア戦やドイツ戦でも『絶対勝ちいく』、『絶対勝てる』という自信を持って試合にはみんな臨んでたので、負けたときはすごく悔しいし、何ができたんだろうと反省の部分はチームとしてありました。でも本当に目標が全く途絶えたわけでもなくて、トムさんもベテランの選手も「これで終わった訳じゃなくて、ラストの2試合をしっかりプレーするために、そのために準備しよう』と声をかけてくださいました。オーストラリア戦も後半は僕たちが勝ってたっていたのもあり、自信は失っていませんでした。ベテラン選手が作ってくれた雰囲気の中、ラスト2試合に臨めたと思います」

――順位決定リーグの初戦、ベネゼエラ戦では、この試合もリードを許す展開になりましたが、その中で日本チームは我慢をしてチャンスを待っているなという印象を受けました。

「あの試合だけではありませんが、何より沖縄開催でファンの皆さんの盛り上がりが、僕たちの本来持っている能力以上のものを引き出してくれたと思っています。

――例えばシュートを入れられた後や劣勢に回ったときに後押ししてくれる声援は選手を後押ししてくれるのですね?

「もう間違いないですね。僕の経験上、この1本を決めて、次の1本を決めたら自分たちに流れがくるなあという状況でも、最初の1本でもう流れが来てしまうような。試合の流れを加速してくれるファンの皆さんからの盛り上がりでした。ファンの皆さんの応援や盛り上がりで助けてもらったと思っています」

 

沖縄アリーナに駆けつけたファンが日本代表を後押し【(c) fiba.basketball】

 

――そして、カーボべルデとの最終戦に臨みます。最後は苦しみましたけど、勝ってパリ2024オリンピック出場を決めましたが、あのときの気持ちを教えてください。

「すごくうれしかったのですが同時に…、やっぱり4Qでかなり悪いバスケットをしてしまい、ポイントガードとしてターンーオーバーをしてしまったり、しっかりとゲームをコントロールできなかった悔しさの方が強かったですね。もちろんうれしくはあったのですが、素直に全力で喜べなかったと言えます」

――うまくできなかったことが頭をチラチラしていた感じですか?

「チラチラしてたというか、もうほとんどそのことで頭がいっぱいでしたよ。『最後はもっとコントロールしないといけなかったよなあ』と、悔しい思いが強かったです」

――代表として、そして個人としてワールドカップの経験をどのように活かしたいと思いますか?

「世界のトップレベルの選手との差を感じた試合もあったし、逆に世界でもやっていける部分が見えた試合もありました。今はBリーグでプレーする外国籍選手のレベルが高くなってきてますし、アジア枠選手にもポイントガードがいて、海外のトップレベルの選手とマッチアップができる環境にあります。その中で自分は何ができるのか。 今シーズン、Bリーグでしっかりとチャレンジして成長して、パリ2024オリンピックのコートに立てるように、僕自身もこの1年間でいい準備をしたいと思います」

昨シーズンのMVP、河村が今シーズンはどんなプレーを見せてくれるだろうか【(c) B.LEAGUE】

 

(取材・文=バスケットボールキング/入江美紀雄)

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