チケット購入

B.MAGAZINE

並里成、歓喜も悔しさも味わった“ファンタジスタ”のウインターカップ

2023.12.20

選手

“並里”の名前が一躍全国区になったのは、福岡第一1年時のことだった【月刊バスケットボール】

 

 いよいよ12/23から始まるウインターカップ。Bリーグで活躍する選手たちの多くがウインターカップで活躍した。そこで、12月20日~29日まで、連載「Bリーグ選手のウインターカップ」を連日公開。第1回は並里成選手(福岡第一高校/現:群馬クレインサンダーズ)を特集。

 ※ ※ ※

 これほどクリエイテビティあふれる選手はそうはいない。

 ファンタジスタの異名を持つ並里成(群馬)は、独特のリズムのドリブルでディフェンスを困惑させると、変幻自在のパスで得点を演出。自らも得点を重ねていく姿が印象的だ。10月22日の三遠戦では7アシストをマーク。日本のトップリーグで初となる、通算3,000アシストという偉業を成し遂げた。

“並里”の名前が一躍全国区になったのは、1年生ながら福岡第一の先発として出場したウインターカップ2005である。同年のインターハイで4強入りを果たしたチームは、同大会で優勝。輝かしい歴史を持つ福岡第一だが、これが記念すべき同大会初優勝だった。

 沖縄に生まれ、コザ中でプレーしていた並里の元に、井手口孝コーチは何度となく足を運んでアプローチしていた。福岡第一に対して「とにかくチームバスケットで一丸と戦っているという印象」を持っていたという並里は、当時から海外に挑戦したい思いを抱いていた。そこで、留学生とプレーできる機会があることに魅力を感じたこともあり、同校への入学を決める。

“この選手には特別な才能がある”と井手口コーチも理解していたからこそのアプローチだったのだろう。並里は「すごく伸び伸びとプレーさせてもらいました」と後に振り返っている。

「井手口先生も僕のことを、型にはめるタイプの選手のじゃないと分かってくれていたんだと思います(笑)。自分の感覚で自分のバスケットをやらせてもらえたからこそ、今があるのかなと思います」

1年ながらレギュラーとして活躍した並里は、福岡第一のWC初優勝に貢献【月刊バスケットボール】

 スーパールーキーといえ、入部当初からすべてが通用するわけではない。高校生との体格の違いに戸惑い、試合経験の少ないチームなのもあり、うまく機能しない時期もあった。しかし、徐々にチームとしての形が出来てくると、インターハイではベスト4に進出。並里のシュート力、ゲームコントロール力も磨きがかかった。

 ウインターカップ予選では福岡大附大濠に粘り勝ち。そうして臨んだウインターカップ本戦では、初戦となる2回戦で岡山学芸館に87-67、3回戦では初芝橋本に95-76と快勝。準々決勝で能代工(現・能代科学技術、105-78)、準決勝で洛南(95-91)を下す。そして、日本一を争う決勝では九州のライバル、延岡学園との勝負になった。

 試合は接戦になった。試合序盤から1対1を仕掛けて得点につなげた並里だったが、1Q終了時で14-10、ハーフタイムで26-29、3Q終了時で51-52と拮抗した展開は続く。しかし福岡第一は4Q残り5分から流れを掴み10点のリードを作ると、最終的には76-64で勝利。初優勝を味わうことになった。1年生で唯一の大会ベスト5に選ばれた並里はチームでただ一人40分間出場し、14得点、3リバウンド、6アシストというスタッツを残している。しかし、その数字以上にこの大舞台でクロスオーバーやスクープショット、ビハインド・ザ・バック・パスのフェイクを入れてのレイアップといったプレーで盛り上げたことは印象深い。試合後の取材では「最後には3年生にうれしい思いをしてほしいから、3年生のために頑張りました」と初々しく喜びを言葉にしている。

 高2の夏はベスト8、冬は予選で敗れて出られず。高3の夏は準優勝だった。そして高校最後のウインターカップでは決勝に進出。現在のチームメイトである辻直人がいた洛南と対戦した。

3年時に再び決勝進出を果たすも、洛南に敗れる【月刊バスケットボール】

 この試合、並里のシュートタッチがなかなか良くならなかった。それもあって洛南ペースで進んでいく。それでも58−60で4Qを迎えると、福岡第一はチームメイトの活躍で追いつく。そして残り5分を切ったところで並里が3Pシュートを沈めて70-66に。ところが、ここから洛南のゾーン・ディフェンスに苦しんで約4分間無得点になってしまう。試合終盤、並里が放った2本の3Pシュートも決まらず。73-78で敗れて頂点には届かなかった。

 並里はこの決勝で井手口コーチから言われた「自由にやってこい」と言われたことが印象的だったと明かしている。

「これまで通りやってもうまくいかないと、井手口先生は思ったのかもしれないです。先生の感覚的に、僕が持っているものを引き出せたら試合に勝てると思っていたかもしれない中で、僕は淡々といつものプレーをしてしまったんです。今、いろいろな経験をして試合を見て言えるのは、良い選手というのは試合をテイクオーバーできるということ。例えば自分が20点取っても勝てないのなら、30、40点と取ってくる。自分のリミットを外すというか、井手口先生のあの言葉もそういう意味だったのかなと思います」

井手口コーチの言葉を胸に、今も並里はプレーを続ける【(C) B.LEAGUE】

 恩師から言われた言葉の真意を並里は聞いていない。それでも卒業後数年考えていたと言い、自分なりの答えを導き出している。

「僕の持っているものをもっと出してほしい。最後は僕の自由なプレースタイルがチームを優勝に導くかもしれない。井手口先生はそう思っていたんだと思うんです」

文=月刊バスケットボール編集部

SoftBank ウインターカップ2023 令和5年度 第76回全国高等学校バスケットボール選手権大会 特設ページ

PICKUP VIDEO

Bリーグ
オリジナル特集