『スタッツで見るBリーグ』チームのディフェンス力を数値化せよ!「裏4Factors」分析
りそなグループ B.LEAGUE 2024-25シーズンも17節が終了し、各チームの特徴が鮮明になってきた。これまでチーム力を分析する手法として、オフェンス指標の「4Factors」を用いてきたが、今回はその視点を変えてみたい。
「オフェンスが客を呼び、ディフェンスが勝利を呼ぶ」
この格言は、現代のバスケットボールにも当てはまるのだろうか。事実、NBAでは過去10年間の優勝チームの70%が、ディフェンスレーティング(守備効率指標)でリーグ上位10位以内に入っている。さらにBリーグでは、歴代の優勝チームすべてがディフェンスレーティング5位以内という驚くべき相関関係を示している。
そこで今回は、各チームのディフェンス力を「裏4Factors」を用いて分析。相手チームのシュート成功率、ターンオーバー獲得率、リバウンド支配率、そしてフリースロー許容率から、真の守備力に迫っていきたい。
裏4Factorsとは?
通常の4Factorsが攻撃力を測る指標であるのに対し、裏4Factorsは対戦相手のスタッツを分析することでチームの守備力を数値化する。具体的には以下の4つの指標で構成される:
1. OPPEFG%(対戦相手の実質シュート決定率) 最も重要な指標とされる。相手の2ポイント、3ポイントシュートの成功率を複合的に評価する。この数値が低ければ低いほど、相手に効率の良いシュートを打たせていないことを示している。
2. OPPTOV%(対戦相手のターンオーバー率) 相手チームのターンオーバーを誘発できている割合。この数値が高いほど、相手の攻撃を効果的に崩せているということになる。スティールやパスカットなど、アグレッシブなディフェンスの成果を表す指標でもある。
3. DRB%(ディフェンスリバウンド獲得率) 相手のミスショット後、リバウンドを確保できている割合。この数値が高ければ、相手の2度目の攻撃機会を制限できており、1ポゼッション1チャンスの理想的なディフェンスができていることを示している。
4. OPPFTR(対戦相手のフリースロー獲得率) 相手チームにフリースローを与えている割合。この数値が低いほど、ファウルに頼らない効果的なディフェンスができているということだ。また、相手のエースに確実な得点機会を与えていないかどうかも、この指標で確認できる。
これら4つの指標を総合的に分析することで、単なる失点数では見えてこない、チームのディフェンスの質が明らかになってくる。
前置きが長くなってしまったが、さっそくランキングを見ていこう。
※ポジティブな結果であるほど上位となっている※
1. OPPEFG%(対戦相手の実質シュート決定率)
順位 | チーム | OppeFG% |
---|---|---|
1位 |
千葉J |
46.47% |
2位 |
琉球 |
47.69% |
3位 |
宇都宮 |
47.96% |
4位 |
三河 |
48.88% |
5位 |
A東京 |
48.95% |
6位 |
秋田 |
49.24% |
7位 |
群馬 |
49.33% |
8位 |
島根 |
49.86% |
9位 |
FE名古屋 |
49.91% |
10位 |
三遠 |
50.28% |
11位 |
長崎 |
50.39% |
12位 |
北海道 |
50.81% |
13位 |
越谷 |
50.93% |
14位 |
SR渋谷 |
51.21% |
15位 |
大阪 |
51.44% |
16位 |
横浜BC |
51.67% |
17位 |
茨城 |
51.68% |
18位 |
名古屋D |
51.82% |
19位 |
佐賀 |
51.84% |
20位 |
仙台 |
53.02% |
21位 |
京都 |
53.45% |
22位 |
川崎 |
54.03% |
23位 |
広島 |
54.36% |
24位 |
滋賀 |
56.24% |
|
平均 |
50.89% |
2. OPPTOV%(対戦相手のターンオーバー率)
順位 | チーム | OPPTOV% |
---|---|---|
1位 |
秋田 |
21.7% |
2位 |
三遠 |
18.8% |
3位 |
SR渋谷 |
18.8% |
4位 |
佐賀 |
18.6% |
5位 |
三河 |
18.5% |
6位 |
長崎 |
18.5% |
7位 |
A東京 |
18.4% |
8位 |
群馬 |
18.1% |
9位 |
広島 |
18.0% |
10位 |
宇都宮 |
17.9% |
11位 |
大阪 |
17.8% |
12位 |
名古屋D |
17.8% |
13位 |
横浜BC |
17.2% |
14位 |
島根 |
17.1% |
15位 |
川崎 |
17.0% |
16位 |
FE名古屋 |
16.8% |
17位 |
滋賀 |
16.4% |
18位 |
茨城 |
16.1% |
19位 |
京都 |
16.0% |
20位 |
越谷 |
15.9% |
21位 |
仙台 |
15.8% |
22位 |
千葉J |
15.5% |
23位 |
琉球 |
琉球/p> |
24位 |
北海道 |
14.2% |
|
平均 |
17.35% |
3. DRB%(ディフェンスリバウンド獲得率)
順位 | チーム | DRB% |
---|---|---|
1位 |
琉球 |
73.53% |
2位 |
SR渋谷 |
73.02% |
3位 |
群馬 |
72.82% |
4位 |
島根 |
72.65% |
5位 |
越谷 |
72.09% |
6位 |
A東京 |
71.95% |
7位 |
北海道 |
71.75% |
8位 |
京都 |
70.94% |
9位 |
三河 |
70.78% |
10位 |
仙台 |
70.77% |
11位 |
長崎 |
70.16% |
12位 |
横浜BC |
69.54% |
13位 |
大阪 |
69.11% |
14位 |
佐賀 |
69.10% |
15位 |
三遠 |
68.58% |
16位 |
宇都宮 |
68.03% |
17位 |
FE名古屋 |
67.83% |
18位 |
名古屋D |
66.71% |
19位 |
千葉J |
66.38% |
20位 |
広島 |
66.22% |
21位 |
川崎 |
66.07% |
22位 |
滋賀 |
65.70% |
23位 |
茨城 |
65.27% |
24位 |
秋田 |
64.32% |
|
平均 |
69.30% |
4 OPPFTR(対戦相手のフリースロー獲得率)
順位 | チーム | OPPFTR |
---|---|---|
1位 |
島根 |
21.58% |
2位 |
名古屋D |
22.53% |
3位 |
三河 |
23.73% |
4位 |
FE名古屋 |
23.76% |
5位 |
千葉J |
24.02% |
6位 |
SR渋谷 |
24.10% |
7位 |
宇都宮 |
24.42% |
8位 |
京都 |
24.47% |
9位 |
秋田 |
25.83% |
10位 |
茨城 |
26.01% |
11位 |
群馬 |
26.45% |
12位 |
琉球 |
26.53% |
13位 |
北海道 |
27.03% |
14位 |
A東京 |
27.15% |
15位 |
佐賀 |
27.39% |
16位 |
広島 |
27.44% |
17位 |
川崎 |
27.52% |
18位 |
三遠 |
28.39% |
19位 |
仙台 |
28.49% |
20位 |
横浜BC |
30.34% |
21位 |
大阪 |
31.99% |
22位 |
長崎 |
32.07% |
23位 |
滋賀 |
32.91% |
24位 |
越谷 |
35.77% |
|
平均 |
27.08% |
注目チーム

■アルバルク東京
アルバルク東京の裏4Factorsは以下のようになっている
OPPEFG%(対戦相手の実質シュート決定率):リーグ5位
OPPTOV%(対戦相手のターンオーバー率):リーグ7位
DRB%(ディフェンスリバウンド獲得率):リーグ6位
OPPFTR(対戦相手のフリースロー獲得率):リーグ14位
【分析】
リーグ1位や2位といった突出した数値はないものの、4つの指標のうち3つがリーグ上位8位以内に位置している。これらの数字から読み取れるのは、インサイドの強固なディフェンス力である。
対戦相手のフリースロー獲得率がリーグ14位というのは、一見すると課題に見えるかもしれない。しかし、これは異なる角度から見る必要がある。アルバルクA東京は相手の攻撃の約54%を2ポイントシュートに誘導している。フリースローの大半は2ポイントシュート時のファウルから生まれることを考えると、この順位は決して悪い数字とは言えない。
むしろ、以下の点で高い評価ができる:
1. 2ポイントシュートを多く打たせながらも、相手の実質シュート決定率を低く抑えている
2. ディフェンスリバウンドを高い確率で確保している
3. インサイドでの守備が安定している
【戦術と選手起用】
具体的な戦術を見てみると、スターティングセンターであるセバスチャン・サイズは、相手チームのピック&ロールに対して、その体躯を生かしたショウディフェンス(前に出てボールマンに体を寄せるディフェンス)を得意としている。
その際にオープンとなった相手センターに対してはライアン・ロシター、レオナルド・メインデルといった選手たちが一瞬にしてローテーションすることで、タフな2ポイントシュートを強制し、さらにベンチには平均1ブロックショットを誇るリムプロテクター、アルトゥーラス・グダイティスが控える鉄壁の布陣である。

■シーホース三河
往年のBリーグファンにとって、オフェンスチームのイメージが強い三河は、昨季からディフェンスチームへと変貌している
OPPEFG%(対戦相手の実質シュート決定率):リーグ4位
OPPTOV%(対戦相手のターンオーバー率):リーグ5位
DRB%(ディフェンスリバウンド獲得率):リーグ9位
OPPFTR(対戦相手のフリースロー獲得率):リーグ3位
【分析】
すべての指標で上位に位置する一方、特にOPPFTR(リーグ3位)とDRB%(リーグ9位)の数値から、アルバルク東京とは異なる「3ポイントシュートを打たせる」戦略を取っていることが見えてくる。
OPPFTRが低い理由は、フリースローの多くが2ポイントシュート時のファウルから生まれるため、3ポイントシュートを多く打たせることで、相対的にフリースローの機会を減らせているからだ。また、DRB%が比較的低いのは、3ポイントシュートの方がリバウンドの予測が難しく、オフェンス側に有利になりやすいためである。
【戦術と選手起用】
ピック&ロールに対しては、ダバンテ・ガードナーがゴールを守るように下がりながら守るドロップDF戦略を採用。弱点とされる外に開くポップアウトに対しては、ウィングやコーナーのDFがローテーションして対応しつつ、再度ピック&ロールを守る際には(マークマンを入れ替える)スイッチDFを展開しダバンテ・ガードナーやザック・オーガスト、ジェイク・レイマンといったビッグマンが高さを生かしてガードの3ポイントシュートを抑えている。

まとめ
現在のリーグ上位8チーム(チャンピオンシップ圏内)が、各指標の上位にどれだけ含まれているかを見てみよう。
● OPPEFG%(対戦相手の実質シュート決定率):上位8チーム中7チーム
● OPPTOV%(対戦相手のターンオーバー率):上位8チーム中5チーム
● OPPORB%(対戦相手のオフェンスリバウンド獲得率):上位8チーム中4チーム
● OPPFTR(対戦相手のフリースロー獲得率):上位8チーム中4チーム
この結果から、上位チームと相関があることがわかり、OPPEFG%については非常に強い相関がある。
参考に昨年チャンピオンシップ決勝を戦った広島ドラゴンフライズと琉球ゴールデンキングスの裏4Factorsを見てみよう。
広島 | 順位 | スタッツ |
---|---|---|
OppeFG% |
6位 |
49.90% |
OppTOV% |
3位 |
18.52% |
DRB% |
16位 |
69.54% |
OppFT獲得率 |
1位 |
21.63% |
琉球 | 順位 | スタッツ |
---|---|---|
OppeFG% |
10位 |
50.68% |
OppTOV% |
17位 |
15.89% |
DRB% |
9位 |
70.81% |
OppFT獲得率 |
7位 |
24.35% |
文=しんたろう 監修=バスケット・カウント