『2025年 B.LEAGUE選手研修』実施レポート

田渡凌選手「選手たちも皆、当事者意識を」
B.LEAGUEでは2016年より毎年、シーズン開幕前に選手研修を実施しています。この研修は、社会人、プロバスケットボール選手としての自身を取り巻く環境に対する理解の促進、プロバスケットボール選手としての自覚の醸成を目的として行われており、リーグスタッフおよび外部講師による講義を提供しています。
今年は7月29日にB1、B2、B3リーグの全選手を対象とした全選手研修を実施しました。また29日から8月1日までの4日間で新人選手研修が、8月5日と6日に2年目・3年目選手研修が、すべてオンラインにて行われました。

7月29日、全選手研修の冒頭で登壇したB.LEAGUEの島田慎二チェアマンは、過去9シーズンで総入場者数が約2.4倍、事業規模が約4倍になる成長ぶりを示した上で、「マイナーからメジャーになりつつありますが、本当の意味でのメジャーになる道の途中。車の両輪である競技とビジネスがリスペクトとフォローをしながら力を合わせて頑張っていきましょう」と選手たちに呼びかけました。
その後はB.LEAGUEの現在地と目指す未来を佐野正昭専務理事が語り、法務・コンプライアンスグループマネージャーの冨田英司が選手契約におけるリスク管理を説明するとともに、SNS利用を始めとするコンプライアンスの徹底を求めました。

しながわシティバスケットボールクラブに所属し、バスケットボール選手会の会長を務める田渡凌選手は、研修を終えて次のように感想を語りました。「選手たちも皆、当事者意識を持ってやることが大事だとあらためて共有できました。『B.革新』に向けて選手たちもきちんと理解して取り組むことが重要で、どういった意図でこの革新が行われるのか、逆にコンプライアンスの面では選手一人の過ちがリーグにダメージを与える可能性があるという点を共有する会になりました」
「プロアスリートは社会人、組織の一員」
この7月29日には、全選手研修の後に新人選手がそのまま残る形での新人選手研修が行われました。島田チェアマンからのメッセージの後、佐野専務理事からはB.LEAGUEのビジネスがどのように回っているか、選手たちの目にはなかなか入ってこない試合の運営やクラブのタウン活動にかかわる人たちの仕事ぶりが説明されました。またB.LEAGUEが目指すビジョン『感動立国』があらためて語られ、オンコートでの活躍だけでなく、地域貢献や社会貢献といったオフコート活動に積極的にかかわることが、B.LEAGUEだけでなくプロバスケットボール選手としての自分自身の価値を高め、将来のキャリア形成にも繋がることが強調されました。
外部の専門講師としては、スポーツ人材のキャリア支援に強みを持つ株式会社アーシャルデザインから東俊介さんが登壇。「アスリートに求められる社会常識」をテーマに講義を行いました。東さん自身が元ハンドボール日本代表選手で、実業団選手として9度の日本一に輝いた後、引退後にスポーツビジネスの分野で活躍しています。

その経緯を説明した上で、「皆さんは愛するバスケットボールの価値を高めて、自分自身の価値を高めていきます。逆に価値を損なう言動や行動を知っていれば、やらないですよね。その土台となる知識が必要です」と選手たちに呼びかけ、プロアスリートとして活躍するために必要な価値観と行動を説明しました。
東さんが強調したのは「プロアスリートは社会人」であることと「プロアスリートも組織の一員」であること。現役選手の間はもちろん、引退後も何か不祥事を起こせば「元B.LEAGUE選手」として取り上げられてしまう、その責任を新人選手たちはすでに背負っています。大好きなバスケをプレーする姿を何千人、何万人もの人たちに見てもらい、自分の行動でファンを作ることができるのは素晴らしいことですが、だからこそ責任がある、と東さんは語ります。
「選手の一挙手一投足が、B.LEAGUEブランドを創る」
こうして新人選手たちの注意を引き付けた上で、様々なスポーツでの事例を紹介し、不祥事を起こさないことはもちろん、「選手の一挙手一投足が、B.LEAGUEブランドを創る」と自覚を促しました。

プレーでファンを魅了するのは当然として、他の部分でもプロアスリートとしての影響力をどう生かして自分の価値を高められるか、その重要性を東さんは強調します。東さん自身も現役時代、試合が終わるとチームを応援してくれるスポンサーの集まりに顔を出して挨拶をしていたと言います。「5分だけですし、お酒も飲みません。それでも『5分しかいないのか』と怒られたことはなく、みんな僕のファンになってくれました。試合で応援してもらうだけなら現役が終わればそれまで。しかし、その人たちは僕が引退しても応援し続けてくれています」
「スポンサーと会ったりクリニックで子供たちと接したり。『競技に集中したいから行きたくない』と思い、行ってもつまらなさそうな顔をしている人もいるかもしれません。でも、それで人間力が上がりますか? そんな人を応援したいですか? 競技は競技でやらなければいけませんが、自分の価値を高めるのがどういうことかを考えるべきです。1日は24時間あって、8時間はトレーニングとコンディショニングに使いましょう。それ以外の時間で何をしますか? 現役時代は『スペシャルタイム』です。自分が活躍している姿を見てもらえる機会は現役の時だけです。そこで何ができるか、一挙手一投足で示してほしいです」
米須玲音選手の考える『プロとしてあるべき姿』

川崎ブレイブサンダースの米須玲音選手は、新人選手研修を終えて「プロアスリートとしてもそうですが、やはり一社会人としてどういった行動をすべきか、言動を取るべきかを学ぶことができました」と語ります。
米須選手は昨シーズン途中に川崎とプロ契約を結んだため、今回の新人選手研修に参加しましたが、2020-21シーズンから特別指定選手としてB.LEAGUEでプレーしていることで、これまでも『プロアスリートとしてあるべき姿』を考える機会はありました。
「試合に勝てない時期でも応援されていることをしっかり頭に入れて、試合後にコートを一周する時に落ち込んだ顔を見せるのではなく、『次の試合では皆さんに勝ちを見せたい』という思いで手を振ったり、一人ひとりに目を合わせながら『次は勝てるように頑張ります。また応援よろしくお願いします』という気持ちを表現しています。結構難しいですが、そういったところも含めてアスリートとしてやっていくのが大切です」
「りそなグループ B.LEAGUE 2025-26 SEASON」開幕まであと約2カ月。B.LEAGUEにとっては10年目の節目のシーズンであり、『B.革新』を控えた現行体制最後のシーズンとなります。B.LEAGUEは選手たちの一人ひとりの活躍とキャリア形成を図り、今後も様々な取り組みを行います。