バスケットボールキングで1番読まれたニュースは…”記事"で振り返るB.LEAGUE10周年【ジャンル別】

2016年に開幕したB.LEAGUEは、10シーズン目という大きな節目を迎えた。バスケットボールキングは創設以来、その熱狂を記事として記録し続けてきた。サイトへのアクセスは、ファンが何に心を動かされてきたかを示す、何より正直な記録である。
この10シーズン目を記念し、今回は当サイトの記事を「試合レポート」「移籍・契約ニュース」「コラム・インタビュー」の3つのジャンルに分け、それぞれの「最も多く読まれた記事」を軸に、B.LEAGUEとファンが歩んだ軌跡を振り返る。
試合レポート部門

宇都宮ブレックスがリーグ制覇! 琉球ゴールデンキングスに連勝、初年度以来2回目の栄冠
記事公開日:2022年5月29日コート上のドラマを伝える試合レポート記事。この部門で歴代最も多く読まれたのは、2021-22シーズンの「日本生命 B.LEAGUE FINALS 2021-22」で宇都宮ブレックスが5シーズンぶり2度目の王者に輝いた一戦のレポートだった。
この記事が突出したアクセスを記録した背景には、1年越しの壮大なリベンジストーリーがあった。前年のファイナル、宇都宮は千葉ジェッツの前に涙をのんだ。特に、チームの大黒柱である比江島慎が本来の輝きを放てずに終わったことは、多くのファンの記憶に深く刻まれていた。
その悪夢から1年。比江島はこの年のチャンピオンシップで覚醒する。ポストシーズン6試合を通して1試合平均18.7得点5.2アシストと獅子奮迅の活躍を見せ、エースとして圧倒的な存在感を放ち、チームをけん引。そして運命のファイナルでチームを見事頂点へと導き、自身はチャンピオンシップMVPを受賞した。エースの完全復活と共に掴んだ王座奪還という劇的な物語に、ファンの関心が集中した結果と言える。
もちろん、B.LEAGUE史を彩る他の名勝負も多くのアクセスを集めた。このレポートに次いで多く読まれたのが、前年にその宇都宮を破った千葉ジェッツの「3度目の正直での初優勝」を伝えた記事だ(2021年6月1日公開)。ファイナルという最高の舞台で、チームや個人の「物語」が結実する瞬間が、いかにファンの心を揺さぶるかを、この結果は示していると言えるだろう。
移籍・契約ニュース部門

今季MVPを受賞した金丸晃輔が三河から退団「8年間は一生僕の中で特別な財産」
記事公開日:2021年6月25日全ジャンルの中でも特に熾烈なアクセス数を記録するのが、オフシーズンの移籍・契約ニュースだ。その頂点に君臨するのは、2021年6月にシーホース三河が発表した、金丸晃輔の退団を伝える一本だった。
このニュースが多くの注目を集めた理由は明白だ。金丸は直前の2020-21シーズンにレギュラーシーズンMVPを受賞したばかり。加えて、2013年から8シーズンにわたって在籍し、長年チームを支え続けてきた大黒柱だったからだ。リーグ最高のシューターでもある男の退団は、ファンにあまりに大きな衝撃を与えた。
この年のオフは、金丸の移籍のみならず、リーグの勢力図を塗り替える大型移籍が続発した。川崎ブレイブサンダースの辻直人、宇都宮ブレックスのライアン・ロシター、アルバルク東京の安藤誓哉など、各チームの顔役が次々と新天地を求めた。この「大移籍時代」の幕開けとも言える空気感が、オフシーズン全体の注目度を底上げし、金丸のニュースへの関心をさらに高める相乗効果を生んだとも考えられる。
実際に、この記事に次ぐアクセスを記録したのは、その辻直人が川崎を退団したというニュースだった(2021年5月31日公開)。ロバート・サクレのような元NBAの大物や、渡邊雄太の千葉ジェッツ加入といった話題を抑え、フランチャイズプレーヤーの国内移籍、しかも「移籍先決定」ではなく「退団発表」の記事が上位を占める傾向は、B.LEAGUEファンの関心の在り処を示している。慣れ親しんだエースと、コートを挟んで対峙することになるという物語性、そして自クラブの浮沈に直結する「当事者意識」。海外からのスターや新戦力の加入がもたらす“期待”以上に、長年応援してきた選手との“別れ”がもたらす感情の振れ幅こそが、ファンの心を最も強く揺さぶるのかもしれない。
インタビュー・コラム部門

【インタビュー】五十嵐圭が語る2006世界バスケ…「この試合に勝てば、日本のバスケ界を変えられると思った」
記事公開日:2023年7月26日コート上のパフォーマンスとは別に、選手の人間的な魅力に光を当てるこの部門。ここで歴代1位となったのは、B.LEAGUEのクラブではなく「日本代表」をテーマにした一本だった。意外に思われるかもしれないが、これはB.LEAGUEという存在の本質を突く、象徴的な結果と言える。
そもそもB.LEAGUEは、その創設理念の大きな柱として「日本代表の強化」を掲げてきた。リーグの発展と代表の飛躍は常にコインの裏表の関係にあり、その物語は決して切り離すことができないからだ。
そのことを証明するかのように、最も多く読まれたのは、2023年夏のFIBAワールドカップ“熱狂前夜”に公開された、元日本代表・五十嵐圭の独占インタビューだった。
内容は、同じく日本で開催された2006年の世界選手権(現ワールドカップ)を五十嵐が振り返るというもの。当時、世界の壁に跳ね返された日本代表の中心選手だった五十嵐は、「この試合に勝てば、日本のバスケ界を変えられると思った」と、悲壮なまでの覚悟でコートに立っていた胸中を明かした。
この記事は、大会前に多くの注目を集めただけでなく、大会終了後に再びアクセスを伸ばすという稀有な動きを見せた。五十嵐が果たせなかった「日本のバスケ界を変える」という夢を、トム・ホーバス率いる若き日本代表が現実のものとしたからだろう。過去の世代が流した涙と想いを受け継ぎ、新たな歴史を刻んだ劇的なストーリーがファンの感動を呼び、改めてこの“原点”の記事へと人々を向かわせたことは想像に難くない。
そして、このインタビューに次ぐアクセスを記録したのが、その新時代の象徴である河村勇輝の旅立ちを伝えた記事だ(2024年9月3日公開)。2024年9月、横浜ビー・コルセアーズの選手として最後に参加した「出港式」のレポートは、ワールドカップ、オリンピックを経て、日本人4人目のNBA選手となる男の決意を伝えた。
過去の代表が抱いた悲願を語る五十嵐の記事と、未来への扉を開いた河村の記事。この2本が上位を占めるという事実は、ファンが単なる個人の活躍だけでなく、世代を超えて受け継がれる「日本バスケの物語」にこそ、最も強く心を動かされていることを示しているのかもしれない。
コート上の熱狂、オフシーズンの衝撃、そして世代を超えて紡がれる物語。3つのジャンルで最も読まれた記事は、Bリーグの多様な魅力を象徴していた。そしてそれらは、いずれも一瞬の出来事ではなく、積み重ねられた時間と文脈があってこそ、ファンの心を強く揺さぶった。この「歴史の力」こそが、Bリーグ10シーズンの価値そのものである。これから始まる新たな10年も、バスケットボールキングはファンと共にその熱狂の目撃者であり続けたい。
文=バスケットボールキング編集部