PLAYBACK B.LEAGUE|「ココロ、たぎる。」シーズン…声出し応援解禁で盛り上がり再び【2022-23】

「りそなグループ B.LEAGUE 2025-26 シーズン」、B.LEAGUEは大きな節目となる10シーズン目を迎える。日本のバスケットボール界に新たな歴史を刻んだあの日から、早くも9つのシーズンが過ぎ去った。熱狂のチャンピオンシップ、語り継がれる名勝負、スター選手の誕生、そして地域に根差したクラブが紡いできた数々のドラマ。この連載では、10年目の未来へとつながるBリーグの軌跡を、シーズンごとに紐解いていく。今回は開幕以降初の入場者数300万⼈を突破するなど、盛り上がりを見せた「B.LEAGUE 2022-23シーズン」の激闘を振り返る。
B1レギュラーシーズン:千葉Jが最多連勝&最高勝率…3年ぶりオールスターゲーム開催

バスケットボール観戦の魅力を伝えるきっかけになる言葉としてB.LEAGUEパーパスを策定。「ココロ、たぎる。」を掲げ、シーズンがスタートした。新型コロナウイルス感染症の蔓延によって禁止となっていた収容率100パーセントでの大声が解禁。アリーナにはファンの熱い声援が戻り、B.LEAGUEの日常を取り戻しつつあった。2021年に中止となったオールスターが「ドットエスティ B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2023 IN MITO」として開催。レギュラーシーズンを通して、入場者数はB.LEAGUE開幕以降初めて300万⼈を突破した。
B1歴代最多記録となる24連勝を達成するなど、2位のアルバルク東京を寄せつけなかった千葉ジェッツが東地区を制覇。53勝7敗(勝率0.883)と、2018-19シーズンに記録した52勝8敗(勝率0.867)を上回り、B1最高勝率を打ち立てた。前年王者の宇都宮ブレックスは苦戦を強いられ、「日本生命B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2022-23」出場を逃す結果に終わった。
中地区は12選手全員をキャプテンとして活動した川崎ブレイブサンダースが3年ぶり3度目の優勝を果たした。横浜ビー・コルセアーズはこのシーズンからプロ契約を結んだ河村勇輝が圧巻の活躍。チームを初のチャンピオンシップ出場に導いた。
西地区は1位の琉球ゴールデンキングスから4位の広島ドラゴンフライズまで40勝以上を記録した。琉球は一時地区4位に後退する時期があったものの、ホームの沖縄アリーナでは26勝4敗と無類の強さを発揮。48勝12敗で並んだ島根スサノオマジックとは直接対決の得失点差で上回り、大激戦区で6連覇を成し遂げた。

チャンピオンシップ:琉球が悲願の初優勝…“最強”千葉Jに連勝

群雄割拠の西地区から名古屋ダイヤモンドドルフィンズがワイルドカード上位、広島ドラゴンフライズが同下位を獲得。琉球がファイナルで千葉Jを退け、B.LEAGUEの頂点に初めて立った。
クォーターファイナルは同じ西地区でしのぎを削った名古屋ダイヤモンドドルフィンズに連勝。セミファイナルでは快進撃を見せる横浜BCを下し、ファイナルに進出した。
“最強”千葉JとのファイナルはGAME1からダブルオーバータイムにもつれ込む大激闘。3選手のプレータイムが44分以上だった相手に対し、琉球はタイムシェアしながら試合を進め、96-93で勝利を収めた。GAME2はコー・フリッピンが4Qだけで13得点の活躍。迫る千葉Jを88-73で突き放し、初優勝を飾った。
琉球からアレン・ダーラムが「日本生命チャンピオンシップ最優秀選手賞(MVP)、フリッピンが「日本生命ファイナル賞」に。GAME2で21得点3リバウンド8アシストを記録したフリッピンは「自分たちは沖縄のために、この優勝のために戦ってきたと思っています」と胸を張った。

昇降格:九州2チームがB1昇格…富山は最終戦で残留つかむ
「日本生命 B2 PLAYOFFS 2022-23」のセミファイナル進出はアルティーリ千葉、長崎ヴェルカ、佐賀バルーナーズ、西宮ストークス(現神戸ストークス)の4チーム。A千葉の本拠地に乗り込んだ長崎は、6点ビハインドで迎えたGAME3、4Q残り4分57秒から連続3Pシュートで逆転に成功した。そのまま逃げきり、創設3年、史上最短でB1昇格。ホームに西宮を迎え撃った佐賀は2連勝を飾り、九州に拠点を置く2チームが初のB1昇格を決めた。
ファイナルは佐賀がオーバータイムの末にGAME1をものにすると、89-85と4点差でGAME2に勝利し、創設5年でB2優勝。A千葉に連勝した西宮が3位でシーズンを終えた。
シーズン終了後はB1からB2、B2からB3へ2チームが自動降格。B1は最終節を前に滋賀レイクス、富山グラウジーズ、新潟アルビレックスBBの3チームが13勝45敗で並んだ。GAME1の結果をもって新潟の降格が決まると、GAME2では一足先に試合を終えた滋賀が敗戦。勝利した富山が降格圏から抜け出した。また、香川ファイブアローズ、アースフレンズ東京ZがB2からB3へ降格することになった。
B3ではセミファイナルでレギュラーシーズン3位のベルテックス静岡が同2位のさいたまブロンコスを撃破し、B2昇格の切符を獲得。同1位の岩手ビッグブルズがB3優勝とB2昇格を果たした。
個人賞:河村勇輝が驚異の個人6冠…NBA入りへの礎を築く

河村がレギュラーシーズン最優秀選手賞(MVP)、レギュラーシーズンベストファイブ、新人賞、アシスト王、ココロ、たぎる。賞、レギュラーシーズン最優秀インプレッシブ選手(MIP)と個人賞6冠。当時22歳のポイントガードは1試合平均19.5得点3.4リバウンド8.5アシスト1.5スティールを挙げた。MVP受賞に際し「『実力が一番だった』ということではなく、これからのバスケットボール界を盛り上げていってほしいというメッセージだったり、使命を僕に与えてくださったのではないかと自分なりに解釈しています」とコメント。シーズン終了後に行われた「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」では日本代表の司令塔としてチームを引っ張り、のちに日本人4人目のNBA選手として世界最高峰の舞台に登り詰めた。
ベストファイブは河村のほか、富樫勇樹、原修太、クリストファー・スミス、ぺリン・ビュフォードの4名。富樫は7年連続7回目の受賞で、スミスはベスト6thマンにも輝いた。
驚異的なパフォーマンスを披露し続けたビュフォードが得点王を初受賞した。インサイドで強さを発揮したジャック・クーリーが2年ぶり3回目のリバウンド王、ゴール下に君臨したジョーダン・ヒースが3年ぶり2回目のブロック王に。ビッグマンながらアウトサイドでもプレーできるニック・ケイがベスト3P成功率賞に輝き、攻守に定評があるジェレミー・ジョーンズがスティール王、2位のトレイ・ジョーンズを0.3パーセント上回った平尾充庸がベストFT成功率賞を初めて受賞した。

文=酒井伸
構成=バスケットボールキング編集部