チケット購入

B.MAGAZINE

『スタッツで見るBリーグ』前年比大躍進!長崎ヴェルカとレバンガ北海道の強さを徹底分析

2025.12.12

その他

りそなグループ B.LEAGUE 2025-26シーズンが開幕し、18試合を消化。今季のBリーグで最も劇的な変化を遂げたチームはどこか—その答えは明確だ。

執筆時点では、長崎ヴェルカは16勝2敗、勝率88.9%でリーグ首位を快走。レバンガ北海道は14勝4敗、勝率77.8%でリーグ5位に位置し、チャンピオンシップ出場圏内になっている。わずか1年前のりそなグループ B.LEAGUE 2024-25シーズン、北海道は下位グループに沈み、長崎も中位に甘んじていた。それが今季、長崎は優勝候補、北海道は上位チームへと変貌を遂げた。

この2チームは何を変えたのか。オフェンス効率、ディフェンス、シュートセレクション、選手起用—様々な角度から、両チームの快進撃を数字で読み解いていこう。
※:執筆時点(11節18試合終了時点)でのスタッツを計測

レバンガ北海道 - 5位定着の秘密

 
 

注目スタッツの変化

オフェンス リーグ順位 スタッツ
2024-25 2025-26 2024-25 2025-26
3FG% 10位 5位 33.61% 35.14%
FT% 3位 4位 76.02% 77.57%
2FG% 21位 8位 49.23% 54.80%
ペイントエリア得点割合 22位 3位 39.11% 49.84%
セカンドチャンス得点割合 14位 6位 14.4% 17.6%
SCPRtg 18位 1位 0.99 1.31
速攻得点割合 16位 4位 12.77% 19.10%
2pt試投割合 6位 1位 54.93% 59.94%
3pt試投割合 13位 25位 36.83% 29.69%
2pt得点割合 7位 1位 51.82% 57.40%
ペリメタ割合 1位 5位 12.72% 7.56%
3pt得点割合 10位 25位 34.69% 26.62%
FT得点割合 23位 10位 13.48% 15.98%
ORB% 17位 11位 28.00% 33.29%
試合ペース 18位 5位 71.01 74.38
攻撃成功回数 16位 6位 71.69 76.01
OFFRtg 17位 6位 105.97 117.32
※SCPRtg:オフェンスリバウンド1本当たりの得点割合
※OFFRtg:100ポゼッションでの平均得点
※ORB%:オフェンスリバウンド獲得率
 
ディフェンス リーグ順位 スタッツ
2024-25 2025-26 2024-25 2025-26
Opp3FG% 5位 17位 34.33% 33.23%
OppSCPRtg 6位 21位 1.07 0.99
Opp2pt試投割合 1位 11位 56.95% 52.33%
Opp3pt試投割合 24位 22位 32.42% 35.87%
DRB% 5位 6位 72.28% 70.42%
DFFRtg 6位 12位 112.62 112.65
※ディフェンススタッツはランク下位であるほどポジティブな結果になっている(DRB%を除く)
※Opp〇〇:対戦相手の〇〇
※DRB%:ディフェンスリバウンド獲得率
※DFFRtg:100ポゼッションでの平均失点
 

スタッツから見る勝率アップの要因

 

2025-26シーズンの北海道は、なんと言ってもオフェンスに関するスタッツが大きく上昇している。

富永啓生の圧倒的な3Pシュートパフォーマンスを見ると意外に感じられるが、戦略は2Pシュート主体に大きく変化し、その決定率も大きく向上している。その要因は、速攻による得点割合上昇と、オフェンスリバウンドからセカンドチャンス得点による影響が大きい。速攻については、総得点に対して約2割をファストブレイクから稼ぎ出すチームに変貌しており速攻はレイアップによる得点が多くなるため2Pシュートの割合向上に寄与している。

さらには、オフェンスリバウンド獲得率が33%まで向上しており、オフェンスリバウンド1本あたり1.33点を獲得している。これはリーグ1位のスタッツで、レバンガ北海道にオフェンスリバウンドを3本獲得される=4得点を献上することになってしまう。

2024-25シーズンと比較してかなりのペースアップを見せ、攻撃成功回数も4~5回増加しておりこれだけで1試合平均5点以上獲得する機会が増えている。

ディフェンスについては、DFFRtgに変化がないため向上していないように見えるが、リーグ全体のオフェンスパフォーマンスが向上しているため相対的にディフェンス力がアップしている。

オフェンスの特徴

 

レバンガ北海道のオフェンスで最も目を引くのは、ビッグマンがガード並みのスピードで走る速攻だ。味方がリバウンドを獲得した瞬間がスタートの合図。自陣のフリースローラインよりも遠い位置にいて、コーナーへ走るウィングプレイヤーに一度ボールをアウトレット。

通常、ペイントエリアでリング下を守っているはずのビッグマン(ケビン・ジョーンズ、ジャリル・オカフォー、ジョン・ハーラー)が、気づけばハーフコートラインを越えて相手ゴール下に走り込んでいる。この"走るビッグマン"戦術により、以下のような多彩な攻撃オプションが生まれている。

・パスを渡すことでイージー2に繋げる。
・ドライブコースをビッグマンが身を挺して作りレイアップ
・ビッグマンが走ることによってディフェンスがゴール下に収縮することを利用した富永選手の3Pシュート

など選択肢豊富なオフェンスが可能になっている。

オカフォー選手のインサイドスペースを作ると同時に富永選手をフリーにするためのスクリーンプレイ、この布陣をデコイにしたガード陣のドライブなど贅沢なハーフコートオフェンスにも注目である。

ディフェンスの特徴

 

ディフェンス面での特徴は、全員でマークマンを入れ替えるスイッチディフェンスの多用にある。Bリーグでは身長差を利用したミスマッチ攻撃が定石とされる中、あえてこの戦術を採用できるのは、当たり負けしない体を持つ関野 剛平やビッグマンをマークすることができるドワイト・ラモスを擁する北海道だからこそ。通常なら弱点となるはずのサイズ差を、選手個々の身体能力でカバーしている。余談ではあるが、コミュニケーションが何よりも重要な要素であるこのディフェンスを新加入選手が多いにも関わらず、完成させつつあるロイブルHCの手腕は流石の一言だろう。

長崎ヴェルカ - 首位を走る理由

 
 

注目スタッツの変化

オフェンス リーグ順位 スタッツ
2024-25 2025-26 2024-25 2025-26
3FG% 4位 1位 34.96% 39.34%
2FG% 15位 4位 51.78% 57.56%
ペイントエリア得点割合 12位 24位 45.22% 39.97%
速攻得点割合 19位 5位 12.60% 18.07%
2pt試投割合 14位 25位 51.62% 44.50%
3pt試投割合 9位 2位 38.57% 46.23%
2pt得点割合 17位 26位 48.80% 42.29%
3pt得点割合 4位 2位 36.56% 44.81%
FT得点割合 15位 25位 14.64% 12.91%
FTD% 15位 22位 9.81% 9.27%
eFG% 7位 1位 51.85% 58.42%
OFFRtg 19位 1位 104.58 120.29
AST% 24位 7位 47.24% 58.67%
試合ペース 10位 2位 71.75 77.08
※FTD%:フリースロー含む全ショットポゼッションに対するフリースロー獲得割合
※eFG%:3Pシュートに比重(1.5倍)をかけて補正したフィルドゴール成功率
※AST%:得点したポゼッションに対してアシストから得点から生まれた割合
 
ディフェンス リーグ順位 スタッツ
2024-25 2025-26 2024-25 2025-26
Opp2FG% 10位 23位 52.27% 48.33%
Opp3FG% 14位 2位 32.73% 36.59%
ターンオーバーからの失点割合 2位 18位 21.42% 17.39%
セカンドチャンス失点割合 8位 14位 15.48% 15.12%
速攻からの失点割合 9位 20位 14.24% 13.92%
OppeFG% 12位 20位 51.17% 50.81%
DRB% 20位 3位 68.10% 72.19%
DFFRtg 13位 25位 108.42 99.56
OppTOV% 2位 1位 19.43% 22.80%
※OppTOV%:相手からターンオーバーを奪ったポゼッションの割合
 

スタッツから見る勝率アップの要因

 

OFFRtgとDFFRtgの比較からも分かるように、攻守ともに大きくスタッツを伸ばしている。

まずはオフェンスについてだが、2024-25シーズンと比較すると(元々3Pシュートチームであるが)より3Pシュートチームへと大きく舵を切っている。その決定率もリーグ1位39%と驚異的なスタッツである。両コーナーと右のウィングからの決定率は40%を超えている。それを牽引するのはイ ヒョンジュン、馬場 雄大、スタンリー・ジョンソンの3人。この3人は2箇所以上のスポットで40%を超える決定率を記録している。

ペイントエリアからの得点割合や2ポイントによる得点割合、フリースローポゼッションやフリースローによる得点割合が大きく減少しているが、3ポイントチームへの移行が非常に上手くいっていることがわかる。

2024-25シーズンもそこまで遅くはなかった試合のペースだが、2025-26シーズンは速攻の割合増加も伴って平で約6回多く攻撃している。

ディフェンスについても見てみよう。

長崎は相手に打たせるシュートの割合は全くと言って良いほど変わってはおらず(2Pシュートを打たせる方針)、3Pシュートの被決定率が上がっているにも関わらずディフェンシブレーティングが(元々悪いスタッツではないが)大きく向上している。この要因はディフェンスリバウンド獲得率とターンオーバーを奪う割合の向上だろう。

低かったディフェンスリバウンド獲得率はリーグ3位まで向上し相手の攻撃を最低限の回数で抑えている。これは試合ペースが上がっている(相手の攻撃回数も多くなっている)にも関わらず相手の攻撃成功回数がほぼ横ばいであることからもわかる。
ターンオーバーを奪う割合については、昨季から磨きがかかっている。
22.8%という数値は、攻撃の4~5回に1回はターンオーバーを奪っている計算になりその恐ろしさが理解できるだろう。

オフェンスの特徴

 

長崎ヴェルカのオフェンスを一言で表すと、流行最先端のバスケットである。

速攻を主体としたアーリーオフェンスはもちろんのこと、ハーフコートバスケットにおいてもNBAやヨーロッパで使われている戦略を導入している。

長崎の速攻は上で述べた北海道の速攻と逆で、ガードとスモールフォワードの3人がとにかくコーナーとウィングへと全力で走るスタイルだ。
3人いずれかの選手(基本的にはガードの選手)が一度カッティングを行い、ディフェンスを引き付け2ポイントやキックアウトコーナー3を狙う。

そこからはシームレスにハーフコートバスケットへ移行する。

速攻が狙えなかった場合には、コーナーにシューターを2人置いた状態で、ガード1人とビッグマン2人の3人でピック&ロールやカッティング、ハイロープレイでゴールを狙う。ディフェンスにズレが発生したら他のプレイヤーがカッティングし、空いたコーナーへキックアウト、3ポイントシュートを狙っていく。もしズレが発生しなければコーナーの選手が動き出し、ピック&ロールやポストアップを利用する といったオフェンスを恐ろしいスピードと連動性で実行している。このオフェンスを止め切ることは非常に困難だろう。

ディフェンスの特徴

 

長崎ディフェンスの特徴は、ガードの選手たちの自由を奪い続けるディフェンスと言えるだろう。常にボールマンへハードコンタクト、次にボールを受ける

ガードへのディナイ。これを全選手が徹底している。具体的に言うと最初のピック&ロールはハードショーディフェンスを徹底しハンドラーからボールを話させる。逆サイドへ展開した際には、もう一人のビッグマンとガードの選手とのハンドオフを徹底的に防ぐこと(可能であればスティール)を目的としている。出しどころを失ったビッグマンのアタックや苦し紛れのパスをスティールし、速攻へ繋げている。若干のギャンブル性を伴うディフェンスであるため、その他の選手たちのディフェンスローテーションが鍵になってくるがベンチメンバーを含めた全員が驚異的な運動量でカバーしている。

まとめ

 

今シーズン18試合を終えた時点で好調な2チームを紹介した。
チーム戦略は対照的だが、どちらも速攻を得意とする共通点が見られた。

トランジションバスケットやアーリーオフェンスが叫ばれて久しいが、各レーンが連動した美しいトランジションバスケットを志向するチームが上位に入っていることは、それを証明しているのかもしれない。

PICKUP VIDEO

Bリーグ
オリジナル特集