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2025.10.18

中村拓人が群馬ホームデビュー「勝ちたいという気持ちをより一層感じられる」

  • 月刊バスケットボール
2024年10月3日、群馬クレインサンダーズは2024-25シーズン開幕戦でホーム・オープンハウスアリーナ太田に広島ドラゴンフライズを迎えた。

序盤から試合を優勢に進めてハーフタイムで10点のリードを奪うと、後半も強みのディフェンスから次々に得点を重ねて82-53で完勝。2日後のゲーム2にも勝利し、開幕節連勝を飾った。

このとき、中村拓人は広島の選手として、オープンハウスアリーナ太田の熱狂的なファンベースに圧倒されていた。

「ホームの盛り上がりは去年の開幕節で感じていました。今回は群馬の選手としてホームゲームで試合できて(ファンの存在が)とても心強かったですし、皆さんの声援から非常に盛り上がりを感じるというか、とても熱狂しているのをコートで感じました」

10月15日、レバンガ北海道を迎えた第3節を99-72の快勝で終え、中村はこう振り返った。今季の開幕4試合をアウェイで戦った群馬にとって北海道戦はホーム開幕戦、中村にとってはホームデビュー戦でもあった。

持ち味のディフェンスで
北海道のオフェンスを封殺


スターティングPGとして出場した中村は、この試合で19分41秒出場して4得点。目に見えるスタッツはこれ以外になく、アシストやスティールもゼロだった。それでも、彼の安定したゲームコントロールとパスさばき、そしてディフェンスは確実に群馬のペースを生む一助になっていた。





チームとしては、特に富永啓生にほとんどオープンなショットを許さず、3Pシュートを0/6に封じ込めたディフェンスはすばらしかった。ガードからウィング人が代わる代わる彼をフェイスガードし、ハンドオフに対するカバレッジやピック&ロールに対するスイッチは、僅かなスペースさえあれば外から射抜いてくる富永に、その「僅かなスペース」すら与えない精度の高いものだった。

富永にとってそうした厳しいマークは、日常的と言ってもいい。しかし、この試合については「今日は富永選手以外のキーとなる選手たちも波に乗れなかったです。富永選手が一人で打開するのも難しいですし、無理をしてシュートを打っている瞬間もあったので、そこは彼自身ももう少し我慢しなければならない場面でした。それに、オープンショットも今日は入っていませんでした」と、トーステン・ロイブルHCが振り返ったように、前節まで平均14.3得点だったドワイト・ラモスと、同14.5得点だったジャリル・オカフォーがそれぞれ6得点止まり。先発PGの島谷怜も早々に4ファウルとなかなかリズムをつかめなかった。じわじわ点差が開く中、なんとか状況を打開しようと富永のタフショットも増えた印象だった。

富永だけでなく、オカフォーらインサイド陣のフィニッシュを得点につなげさせなかった群馬の強度の高いディフェンスを褒めるべき試合でもあった。


高校時代以来の懐かしい再会

話を中村に戻すと、彼自身のディフェンスも見事だった。特に同い年で、世代別日本代表でチームメイトでもあった富永については、「彼の好きなプレーは分かっているつもりです」と封じ込める場面が何度もあった。

極め付けは4Q残り3分24秒。右ウィングで富永にスイッチした中村は彼の得意ムーブであるステップバック3Pに対して、シュートモーションに入る前にボールをはたき落とした。アウト・オブ・バウンズで惜しくも北海道ボールとなったが、このプレー後に北海道は富永をベンチに下げ、その数ポゼッション後にはオカフォーも交代。実質、中村のディフレクションが勝利を決定付けたと言っていいだろう。

「富永と対戦するのは高校生ぶりだったので、楽しみにしていました。そこで彼の得意の3Pを消せたのはうれしかったです。でも、ディフレクションしてマイボールにできたところで相手ボールになってしまったので、まだまだだなと思います。ただ、久しぶりに彼と試合ができてとても楽しかったです」

中村は充実した表情で、富永との対戦を振り返った。この試合は富永との再会であったと同時に、元師匠のロイブルHCとの再会の試合でもあった。

「ロイブルコーチとも少し話ができて、久しぶりに会えてうれしいということも言ってくださりました。まず、僕のことを覚えていてくれたことがうれしかったです。彼のバスケを高校時代にやっていたこともあって、あのとき言っていたことだなと感じる場面が試合中にもありました」と中村。

ホーム開幕戦での勝利に、懐かしい顔との再会──中村にとってはさまざまな意味で感慨深い夜になったに違いない。

何より、熱狂的なファンが作り出す会場の雰囲気は、彼を奮い立たせる。

「ここは応援してくださるファンのためにも勝ちたいという気持ちを、より一層感じることのできるホーム。ホームである以上負けたくないですし、ホームを守るのもそうです。そういった気持ちがより一層高まるのは、(そういう雰囲気の)アリーナを作ってくださるファンのおかげだと思うので、非常に心強いです」

残るホーム29試合を含めて、中村は群馬のために尽力する。