復帰を支えた“父の教え”と指揮官の言葉…「任せてもらえるPGに」広島・佐藤涼成が挑むBプレミア元年

◆■大怪我も前向きに「すぐ切り替えられました」
屈強な味方4選手に囲まれても、小柄なポイントガードが大きな存在感を放つ。大怪我を乗り越え、楽しそうにプレーする佐藤涼成がコートに戻ってきた。
約9カ月前の昨年12月24日、佐藤はB1リーグ戦第16節の滋賀レイクス戦で右膝を負傷した。外側半月板損傷と診断され、手術を受けて全治6カ月。初めての大怪我だった。
「こんなに大きな怪我じゃないと思っていたし、病院に行って診断された時は、まさか自分が手術するとも思っていなかったのでショックはめちゃくちゃ大きかったです」
[写真]=B.LEAGUE
強い覚悟で臨んだシーズンの真っ只中だった。2025-26シーズン開幕直前の昨年9月、白鷗大学でキャプテンを務めていた佐藤は4年生の途中で退学を決断。さらなる成長を求めてBリーグ優勝経験のある広島ドラゴンフライズに加入した。
昨シーズンは開幕から25試合に出場して1試合平均6.1得点2.0リバウンド2.7アシストを記録。1年目ながら強度の高いディフェンスや常に闘志を貫く強心臓で存在感を発揮していたが、シーズン途中で無念の長期離脱を余儀なくされた。
ただ、ここで挫ける選手ではない。「次、次ってやっていくタイプなので、すぐ切り替えられました」と話す23歳は、「手術する実感も全然なくて、手術した後もプレーはできるんだろうなとは思っていました」とあっさりした表情で振り返る。その苦境に屈しない強さの源は、父親から受け継いだ信条にある。
[写真]=湊昂大
「お父さんの教えで『どんな時でも下を向かないで、ずっと笑顔で前を向け』みたいな感じで育てられてきて、生きている中で沈みを少なくしたいと思っているので、切り替えられたと思います」
負傷離脱をきっかけに体のケアや食生活を改善し、改めてBリーグの試合や選手のプレーを見て学びを得た。「自分だったらこうするだろうなって考えながら見られたいい機会でした」とチームメートのプレーや特徴も分析して復帰後の自分のイメージを膨らませた。「怪我して良かったわけじゃないけど、こういう経験もできて良かったなとポジティブに捉えてやってきました」と難しい状況すらも前向きな糧としてきた。
◆■朝山HCの言葉を胸に実戦復帰
[写真]=B.LEAGUE
これだけ長い間プレーから離れたのは初めての経験。「見れば見るほどやっぱりプレーはしたくなりますし、接戦だったら接戦なだけ試合に出られたら、怪我していなかったらっていう思いもたくさんありました」と、悔しさやもどかしさを感じることは当然あった。
そんなときには朝山正悟ヘッドコーチからの言葉が響いた。「朝さんから『メインのポイントガードになるためには、休みの期間でしっかり自分と向き合って』という話をされて、そこからモチベーションがどんどん出始めました」と、自分の目標に向かって闘志を燃やしてきた。
9月5日、長いリハビリ期間を乗り越えた佐藤は、高知県で行われたエキシビションゲームの神戸ストークス戦で実戦復帰を果たした。「体を使うところやディフェンスでは前のシーズンみたいな動きができているので、怪我した期間でもしっかり体作りができたと思います」と持ち前のフィジカルに胸を張りつつ、「試合での判断のところは、もっとバスケをやって慣れていかないといけない」と課題を口にした。
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「ポイントガードとして、際どいところでももっといいパスを出せば、いい展開でオフェンスを進められたんじゃないかなと頭によぎることがたくさんありました。なので、判断の部分はもっと自信を持って、シーズン開幕前に仕上げていきたいです」
その約1週間後の9月13日、広島ドラゴンフライズは昨シーズンまでメインアリーナとしていた広島サンプラザホールにKBL(韓国プロバスケットボール)のソウルサムスンサンダースを迎えてプレシーズンマッチを行った。
久々にホームでプレーする佐藤は、「ドラフラブースターのみなさんの前でプレーできるのが本当に久しぶりなのでワクワクしています」と心躍らせていた。特に激しいディフェンスでホームブースターを沸かせてきた背番号88は、「どんな相手でもどんどんバチバチやっていきたいです」と鋭気に満ちていた。
◆■屈強な4人に囲まれても存在感…勝負のシーズンへ
[写真]=湊昂大
ソウル戦のスターターは、ポイントガードの佐藤に、クリストファー・スミス、ドウェイン・エバンス、コフィ・コーバーンの外国籍選手3名と帰化選手のメイヨニックの5名。Bプレミアの新ルール「オンザコートフリー」を意識したメンバーだった。
「新シーズンは外国籍選手(と帰化選手)が4人一緒に出る可能性もあるので、そこで自分がどれだけいいパフォーマンスをして、いいゲームを作れるかを楽しんでプレーしたいです」と意気込んでいた175センチのポイントガードは、立ち上がりから持ち前のディフェンスをはじめ、生き生きとしたプレーを披露。200センチ前後の屈強な体格を誇る他4選手とのプレーでも佐藤らしい存在感を放った。約13分のプレータイムで攻守にチームをけん引して、3ポイントシュート1本を含む5得点2アシストで勝利に貢献した。
朝山HCは試合後の会見で、「不安とかいろんなものを払拭しながら、コートでしっかりとパフォーマンスしてくれている」と評価している。
「彼の1番いいところはディフェンスのエナジーで、今日もしっかりと出してくれました。オフェンスに関しても、コールプレーだったり、押せるところを押すことだったり、いろんなことを整理しながら、いいリズム感を出してくれています。ただ、課題と言えば、もっともっと喋らないといけない。彼が今シーズン目指しているところに行くためには、ポイントガードとしてもっとコミュニケーションを取っていかなければいけないと思います」(朝山HC)
[写真]=湊昂大
Bプレミア初年度がいよいよ開幕する。再起を期す佐藤にとって「メインのポイントガードになる」という目標に向けて勝負のシーズンだ。
「チーム内の競争でプレータイムを勝ち取って、どんどん周りから任せてもらえるポイントガードになりたいです。そのためには年齢関係なく、国籍関係なく、自分が声1つでどれだけチームをまとめられるかが重要になってくると思います」
初の大怪我から復帰を遂げた佐藤がコートで先陣を切って広島を引っ張っていく。「チームを勝たせられる存在にならないといけない」。どんなときも前を向いてきた背番号88の視線は、勝利だけを見据えている。
文=湊昂大
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