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2026.10.27

「好きではない」から始まったバスケ人生——173cmのスピードスター・大庭圭太郎が描く東京SRメインPGへの道【TOBI»RUSH】

  • バスケットボールキング

 アスリートが歩んできた人生の「キオク」の扉を次々と開き、そこからつながる「ミライ」への誓いや展望をアーカイブする連続インタビュー企画『TOBI»RUSH(トビラッシュ)~キオクとミライをつなぐドア~』。

 今回、その扉を開いたのは、東京サンロッカーズに所属するPG、大庭圭太郎だ。コート上では173cmの小柄な体躯をフルに活かした圧倒的なスピードと、相手に果敢に食らいつくアグレッシブなプレーで魅せる司令塔だ。

 コート外での素顔を尋ねられると、大庭は少し照れくさそうに笑いながら口を開いた。「草食系ではないのは確かですね。ガツガツ系になるんですかね」
一方で、競技を離れたプライベートでは「シャイで静か。目立つことはせず、一人でアニメを見ていることが多い」と飾らない等身大の姿を明かす。コート上の鋭い眼光と、普段の物静かな雰囲気。そのギャップの裏には、実直に自らの道を選び取り、泥臭く進化を重ねてきた一人のバスケットボール選手の歩みがあった。

◆野球への憧れから始まった原点、親の深い愛情と忘れられない歓喜の瞬間

 今でこそプロとしてトップリーグでコートを駆け回る大庭だが、意外にもバスケットボールとの最初の出会いは「好きで始めたものではなかった」という。福岡県で生まれ育った少年時代、大庭の心を惹きつけていたのはプロ野球・福岡ソフトバンクホークスだった。自宅近くに球場があり、目にする格好良さに憧れを抱いていた。

 小学1年生の時に「野球をやりたい」と願ったが、入部できるのは小学3年生から。両親が社会人のクラブチームでバスケットボールを楽しんでいた影響もあり、公園でボールを使って遊んだり、親の練習に着いていったりするうちに、半ば強制的にバスケットボールの体験へと連れて行かれたのがすべての始まりだった。

 「本当にバスケが好きじゃなかったのは事実ですね。練習も試合もあまり好きではなかったです」と当時を振り返る。
そんな大庭に転機が訪れたのは中学校時代だった。年齢を重ねるにつれて「机に座って勉強をするのは自分には無理だ」と感じた大庭は、自ら生きていく道としてのバスケットボールに本気で向き合い始める。

 小中学校時代に大庭が所属していたチームは、決して強豪校ではなかった。周囲には、中村学園三陽中学校や市立西福岡中学校といった名門校が存在し、県大会に出場することは極めて難しかった。
しかし、厳しい予選を勝ち抜き、中学最後の夏に見事県大会出場を決める。「弱いメンバーが集まって努力を重ね、報われたあの瞬間が、バスケをやっていて良かったと思えた最初の成功体験でした」と大庭は語る。

 あの歓喜の記憶こそが、彼の中にバスケットボールの楽しさとやりがいを刻み込んだ原点となった。
高校は地元を離れ、広島県の如水館高校へ進学。遠く離れた地での挑戦となったが、どんな時も彼を支えてくれたのは家族の存在だった。両親は福岡から広島まで、練習試合を除くほぼすべての試合へ応援に駆けつけてくれたという。

 「当時は来るのが当たり前だと思って育ちましたが、大人になって振り返ると、それがどれほど特別なサポートだったかに気づかされました。心から感謝しています」
一度始めたことは途中でやめたくないという持ち前の初志貫徹の性格と、周囲の手厚い支えに応えたいという想いが、彼をプロアスリートの道へと突き動かしていった。

◆泥臭く積み重ねる準備、憧れの背中を追いメインPGとして王座へ

 高校卒業後にプロの道を本格的に志した大庭は、自らの身体やパフォーマンスと徹底的に向き合う重要性を痛感するようになる。
身長173cmの大庭は「自分はスーパーな選手ではない」と客観的に自己を分析。生き残るために着目したのは、コンディショニングと課題解決能力の向上だった。

 特に大きな刺激を受けたのが、オフシーズンのワークアウトで出会った並里成(横浜ビー・コルセアーズ)の存在だった。大庭と近い体格ながら第一線で活躍し続ける先輩の身体へのこだわりやプロ意識を目の当たりにし、食事管理やリカバリーの意識が一変した。ただ食べるだけでなく、野菜やタンパク質の量を増やし、多彩な具材をプラスするなど、日々の地道な工夫を積み重ねるようになった。

 「トップで生き残っている人たちは、そういう取り組みをしている。自分のような平凡な選手がそこについていくためには気を使っていくしかない」
現在、所属する東京サンロッカーズには、同じポジションで長年日本バスケ界を牽引してきたベンドラメ礼生や田中大貴といったレジェンドたちが名を連ねる。かつて画面越しにプレーを見ていた憧れの存在と同じチームで汗を流し、司令塔としての立ち振る舞いやアドバイスを直接吸収できる環境は、大庭にとってかけがえのない財産となっている。
素晴らしい先輩たちの背中を追いかけながらも、大庭が見つめる未来は明確だ。

 「キャリアを通して必ず実現したいのは、メインのポイントガードとして試合に出て、プライドを持ってゲームを作れる選手になることです。勝ち負けは自分のやるべきことを徹底した先についてくるもの。そこはぶれずにやっていきたい」

 そして、遠く福岡の地から応援し続けてくれる家族や、温かい声援を送るファンに見せたい景色がある。自分がメインのPGとしてコートに立ち、東京サンロッカーズをBリーグチャンピオンへと導くことだ。

 未来の自分に向けたメッセージを求められると、大庭は力強い眼差しで一言、こう宣言した。
「これからいろんな大きな壁にぶち当たるとは思うけれど、それに負けず、その壁を楽しんでほしい」
嫌々ボールを追いかけていた少年は、数々の壁を乗り越え、自らの手で未来の扉を押し開けようと前進している。

【動画】東京SR・大庭圭太郎が語る「キオク」と「ミライ」