PLAYBACK B.LEAGUE|飛躍を誓った「BUILD UP」シーズン、新王者が誕生した激動の2年目【2017-18】

「りそなグループ B.LEAGUE 2025-26 シーズン」、B.LEAGUEは大きな節目となる10シーズン目を迎える。日本のバスケットボール界に新たな歴史を刻んだあの日から、早くも9つのシーズンが過ぎ去った。熱狂のチャンピオンシップ、語り継がれる名勝負、スター選手の誕生、そして地域に根差したクラブが紡いできた数々のドラマ。この連載では、10年目の未来へとつながるB.LEAGUEの軌跡を、シーズンごとに紐解いていく。今回は、さらなる飛躍を期した「B.LEAGUE 2017-18シーズン」の激闘を振り返る。
B1レギュラーシーズン: 激選区と化した東地区、移籍により勢力図にも変化

大成功のうちに幕を閉じた最初のシーズンを経て、2年目のシーズンはさらに強く、より魅力的なリーグになるべく「BUILD UP」をテーマに掲げた。9月にはリーグ初のカップ戦となる「B.LEAGUE EARLY CUP 2018」が全国各地で開催され、レギュラーシーズンの前哨戦として大きな注目を集めた。また、栃木ブレックス(現・宇都宮ブレックス)がマレーシアで、千葉ジェッツと琉球ゴールデンキングスがマカオで国際大会に参加するなど、各クラブのアジアを舞台とした戦いも話題を呼んだ。
そして迎えた開幕、新たな地区分けにより東地区には川崎ブレイブサンダースとサンロッカーズ渋谷が加わり、より激しい上位争いが展開された。そんな激戦区で1位に輝いたのは、富樫勇樹と小野龍猛ら日本人エースに加え、新戦力ギャビン・エドワーズの加入で飛躍を遂げた千葉Jだった。その千葉Jと最後まで競り合った末に2位となったのが、小島元基や安藤誓哉、馬場雄大ら勢いのある若手選手を獲得したアルバルク東京。さらに、前年のファイナリストである川崎と栃木もワイルドカードでB.LEAGUE チャンピオンシップ 2017-18進出を果たした。

一方、中地区では、シーホース三河が当時のB1リーグ記録となる17連勝を果たすなど圧倒的な強さを見せて首位を快走。最後は3月28日に行われた名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの“愛知ダービー”を延長戦の末に制し、2シーズン連続でのリーグ最速地区優勝を果たした。残された地区2位の座はアルビレックス新潟BB、三遠ネオフェニックス、富山グラウジーズとの激しい順位争いの末に、名古屋Dが獲得。張本天傑やルーキーの安藤周人が活躍し、初のチャンピオンシップ進出を果たした。
西地区ではオフに大型補強を敢行し、石崎巧、須田侑太郎、古川孝敏、アイラ・ブラウンといった実力者を迎えた琉球が初優勝。一方で地区2位につけたのは京都ハンナリーズ。ルーキーの伊藤達哉が司令塔を務め、ジュリアン・マブンガやジュシュア・スミスというリーグ屈指の外国籍コンビとベテランの岡田優介がけん引するチームは、3位以下に10ゲーム差以上をつけて、琉球の優勝と同タイミングとなる4月中旬にチャンピオンシップ初出場を決めた。

チャンピオンシップ: 満身創痍のエース・田中大貴がA東京を初優勝に導く
2シーズン目のチャンピオンシップは、千葉J、A東京、川崎、栃木、三河、琉球と2大会連続出場が6チーム。そこに初出場の名古屋Dと京都が加わった8チームで優勝を争い、激戦の末に栄冠を手にしたのは東地区2位のA東京だった。
日本代表でも指揮を執ったルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチ率いるA東京は、クォーターファイナルで京都に2連勝。セミファイナルでは三河と相対し、ともに日本代表選手で学生時代からしのぎを削る田中大貴と比江島慎のエース対決が実現。A東京が2試合連続でオーバータイムまでもつれ込む激戦を制し、ファイナルへと駒を進めた。
ファイナルでは東地区1位で「第93回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会」の王者でもある千葉Jと対戦。A東京はセミファイナルで田中が肉離れを起こし、ファイナル前日にようやくチームに合流するという厳しい状況に。田中本人も「どこまで動けるのか不安だった」と話すなか、試合が始まればその田中を中心としたオフェンスで千葉Jを圧倒。最終スコア85-60で2代目のチャンピオンに輝いた。
チャンピオンシップMVPには5試合で1試合平均14.6得点を挙げ、満身創痍で臨んだファイナルでも15得点5アシストを記録した田中が選出された。
昇降格: 1シーズンで明暗別れる…B2・B3入れ替え戦も初開催
「B2 PLAYOFFS 2017-18」のファイナルは、秋田ノーザンハピネッツとライジングゼファー福岡が対戦し、GAME3までもつれ込む激闘の末に福岡がB2王者に輝いた。前シーズンはB3リーグに所属していた福岡は、2シーズン連続昇格の偉業を達成。また、準優勝の秋田は1シーズンでのB1復帰を果たした。さらに、ファイティングイーグルス名古屋との3位決定戦を制した熊本ヴォルターズはB1・B2 入れ替え戦に回り、FE名古屋はB2残留となった。
一方、B1成績下位4チームによるB1残留プレーオフでは、島根スサノオマジックと西宮ストークスが初戦敗退を喫し、1シーズンでのB2降格が決定。1発勝負の2回戦では川村卓也が22得点を挙げる活躍を見せた横浜ビー・コルセアーズが、富山グラウジーズに勝利してB1残留が決定。敗れた富山はB1・B2 入れ替え戦で熊本と相対する。日本代表候補となっていた富山の宇都直輝と熊本の中西良太がともに20得点以上を記録するハイパフォーマンスを披露するなか、最後は富山が3点差で上回り、紙一重でB1残留を果たした。
初開催となったB2・B3入れ替え戦は、岩手ビッグブルズと東京八王子ビートレインズの対戦し、B2昇格を目指す東京八王子が圧倒する展開に。B3年間MVPに輝いた大金広弥を負傷で欠きながらも、亀崎光博が14得点をマークするなど活躍し、最終スコア83-55で勝利し、念願のB2昇格を決めた。なお、この試合で活躍した亀崎は、「りそなグループ B.LEAGUE 2025-26 SEASON」シーズンから東京八王子のヘッドコーチを務める。
個人賞: 比江島慎がMVPに輝き海外へ、新人賞は人気と実力を兼ね備えた馬場雄大
B.LEAGUE2シーズン目のレギュラーシーズンベストファイブには、川崎のニック・ファジーカス、千葉Jの富樫、A東京の田中、三河の金丸晃輔と比江島という前シーズンと全く同じ5名が選ばれた。一方で最優秀選手賞(MVP)には、比江島が初めて選出されることとなった。
比江島はレギュラーシーズン55試合に出場し、1試合平均12.9得点4.1アシストといずれも高水準のスタッツを記録。リーグ最高勝率を記録した三河をエースとしてけん引した。受賞に際して比江島は「もっともっと成長して、みんなに納得してもらえるような選手になる」とコメント。その言葉通り、オフにはオーストラリアのナショナル・バスケットボール・リーグ(NBL)所属のブリスベン・ブレッツへの移籍を決断するなど、さらなる飛躍への姿勢を示した。
最優秀新人賞に選ばれたのはA東京の馬場雄大。前述の伊藤達哉や安藤周人をはじめ、今村佳太や関野剛平など、チームの主力として活躍するルーキーが多いなか、馬場はほとんどの試合で途中出場でありながらも1試合平均8.5得点をマーク。「B.LEAGUE ALLSTAR GAME 2018」には並いるスター選手を抑えて最多得票で選出されるなど、ファンからの支持も厚かった。
B1スタッツリーダーを見ると、得点はダバンテ・ガードナー(28.7)、アシストは宇都直輝(7.7)、リバウンドはファジーカス(10.9)、スティールはマイケル・パーカー(1.9)、ブロックはハシーム・サビート・マンカ(2.3)、3ポイント成功率は喜多川修平(41.7%)、フリースロー成功率は金丸(93.2 %)が受賞。なかでも得点王のガードナーが記録した1試合平均28.7得点という記録は、2025年時点でも破られていない大記録となっている。
文=バスケットボールキング編集部