北海道・富永啓生「『楽しまないともったいない』から生まれた伝説の平均39.8得点」SoftBank ウインターカップ2025特別企画

3Pシュート30本成功と平均39.8得点――2018年大会に刻んだ衝撃
12月23日から「SoftBank ウインターカップ2025」が開催される。
高校バスケの集大成となるウインターカップはこれまで数々のドラマを生み、多くのスターを輩出してきた。本企画では、ウインターカップで飛躍を見せ、現在Bリーグで活躍するスター選手に直撃し、当時の思いを聞くとともに今大会に出場する選手たちにエールを送ってもらう。第3回はレバンガ北海道の富永啓生選手が登場!
愛知・桜丘高のエースとして富永選手が出場したのが2018年大会。その活躍はあまりにもセンセーショナルだった。大会初戦となる1回戦・広島皆実(広島)戦で36得点を奪って勝利に導くと、2回戦の高知中央(高知)戦でも36得点、3回戦の開志国際(新潟)戦で45得点、準々決勝の実践学園(東京)戦では39得点を記録。ベスト4に勝ち上がると、準決勝の福岡第一(福岡)戦でも37得点を挙げたものの惜敗。それでも帝京長岡(新潟)との3位決定戦では46得点を叩き出し、大会平均39.8得点というモンスタースタッツを残した。

富永選手にとって2018年大会は、単なる活躍にとどまらない意味を持つ。世代別代表活動で得た自信、チームとして積み上げてきた変化、そして「楽しむ」というスタンス、それら全てが重なった末にたどり着いた舞台だった。
聖地で刻まれた時間は、7年が経った今も色あせることはない。ウインターカップを「高校バスケの集大成」と語る富永選手に、当時の記憶と、その経験が今につながっている理由、そして今大会に挑む高校生たちへのメッセージを聞いた。
——富永選手と言えば、多くの方が2018年のウインターカップを思い出すと思います。6試合で平均39.8得点、3Pシュートは合計30本を沈めるという衝撃的な活躍を見せました。当時、江崎悟コーチ(現山梨学院)は、U18の代表活動*の中で自信を付けて戻ってきたことが転機だったと回想していました。
*=2018年のFIBA U18 アジア選手権大会(現FIBA U18アジアカップ)でチームトップの平均19.3得点、3Pシュートは23/67(34.3%)をマークしている。
そうですね。年代別の日本代表として活躍できたことで、自信がつきチームに戻りました。日の丸を付けてプレーしたということで、自分のチームでは、それにふさわしいプレーをしなければいけないというプライド、プレッシャーも感じながらプレーしていました。その結果が、あの大会で出たと思っています。

2018年のFIBA U18 アジア選手権大会より
——2年生、3年生とインターハイ出場を果たしましたが。それぞれ3回戦敗退、2回戦敗退と上位回戦には進めず。そういった中で自信を深めた富永選手を軸とするシステムに変えたということでした。初のウインターカップで3位という結果でしたが、チームの変化をどのように感じていましたか?
あのウインターカップで感じていたのは、チームとして一人一人が自信を持ってプレーできていたということです。試合の大事なところで、自分だけでなくチームメイトが懸命に繋いでくれていましたね。チーム一丸となって、戦えたのは大きな変化だったと思います。
——同じ愛知県ですと、中部大第一に中村拓人(群馬)選手がいましたね。ライバル校に対しては、どんな印象を持っていましたか?
高校3年間、中部大第一に全然勝てなかったということをよく覚えています。その中部大第一がインターハイで準優勝してウインターカップの出場枠を得たことで、県予選には出場しませんでした。あの1枠がなかったら自分たちはウインターカップに出ていなかったかもしれないので、ありがたかったなという思いです。
——もしも中部大第一のインターハイ準優勝がなかったら、富永選手の活躍もなかったかもしれないわけですね。本大会では6試合を戦いましたが、特に記憶に残っているものはありますか?
準決勝の福岡第一戦の前半は思い出深いです(ディープスリーを何本も決め、前半だけで31得点を記録)。ただ、それ以上に自分たちが一番フォーカスしていたのが、3回戦の開志国際戦でした。目標をメインコートでプレーすることに設定していたので、あの試合に勝てた喜びは大きかったと記憶しています。
——開志国際との試合では3Pシュート7本を決めて45得点という活躍でした。
よく覚えています。ただ、あの試合ではフリースローを結構外してしまったので(8/14を記録)、もっと取れたよなという試合でした。それでも、この試合でチームを勝利に導けたので、本当に良かったなと思いました。
——今でもあの大会を思い出すことはありますか?
ありますね。それこそ、毎年ウインターカップの時期になると、あの年のことを思い出します。もう7年も経つんだとも思います。あっという間ですね(笑)

「楽しまないともったいない」──言葉が生まれた原点
——富永選手の自叙伝のタイトルにもなっているフレーズ、「楽しまないともったいない」もこの大会を契機に有名になりました。この言葉が生まれた背景を教えてください。
実はあの言葉は、ウインターカップ後の取材の時に、先生が明かしたことが始まりなんです。言葉自体は自分の中から生まれたものです。素直にバスケを楽しもうということを小さい頃から思っていたので、そのままの気持ちを言っただけなんですよ。
——「楽しむ」ということが、本領を発揮することにつながったわけですね。大舞台で自分の力を出すために、高校生にアドバイスするとしたら、どんな言葉になりますか?
楽しむことが一番成長につながると思っています。プレッシャーをいかにして楽しむかが大切です。ただ、みんながみんな楽しめるわけではないと思うので、バスケが好きという気持ちを持って試合に入ることが大事かなと思います。
——「楽しむ」の前には、「好き」があるわけですね。当時、ウインターカップはどんな舞台でしたか?
高校でバスケをやっている誰しもが目指す場所です。自分は1、2年生の時は出場を逃していて、3年生では最後のチャンスだったので、出場できたことがすごくうれしかったですし、高校バスケ生活の中であの場所でプレーできたことは、すごく光栄なことでした。
——富永選手と同様に大会ベスト5に入った中村選手や福岡第一の松崎裕樹選手(現横浜BC)、河村勇輝選手(元ブルズ)などスターも多い年でした。刺激も多かったのではないでしょうか?
同年代には負けたくないというプライドはありました。彼らとは代表でチームメイトであり、自分のチームに戻れば良きライバルという関係で、その存在がいたからこそ成長できたという部分はあったと思います。
——特に負けたくないという存在はいましたか?
誰というよりも、同世代の選手には誰にも負けたくないという強い気持ちは常に持っていました。

——ウインターカップでの活躍もそうですし、それまでの準備も含めてプラスになったのはどんなところでしょうか?
本当に負けたら終わりの大会ですし、3年生にとっては負けたら引退となる試合です。だからこそ、普段では得られない経験値を得られたというのは思いますね。あとは、あの場で楽しめたということが自分の成長に繋がったなと思います。
——今回のウインターカップでは、残念ながら母校は出られませんが、恩師である江崎コーチの山梨学院(山梨)が出場します。ぜひエールを送ってください。
実は一度学校にお邪魔したので、顔を知っている選手もけっこういます。江崎先生が指導をし始めてから初めての出場です。だからこそ、選手たちは間違いなく緊張すると思います。それでも繰り返しているとおり、緊張を乗り越えるために、楽しんでプレーしてほしいですね。一戦一戦、一つ一つのプレーに集中して楽しむこと。どんどん勝ち進んでほしいです。
——最後に、ウインターカップに出場する全ての高校生に向けて応援の言葉をお願いします。
ウインターカップに出場する選手の皆さん、ぜひその場所に立てるということを楽しんでください。特にやはり3年生にとっては高校バスケの集大成になる大会ですので、悔いが残らないように一つ一つのプレーを一生懸命にプレーしてほしいなと思います。
——ありがとうございました。
写真/©B.LEAGUE、月刊バスケットボール(ウインターカップ写真)
